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シオドア・スタージョン「不思議のひと触れ」



シオドア・スタージョン「不思議のひと触れ」
河出書房新社

本書は、大森望氏の編んだスタージョンの短編集です。
既訳、未訳の作ともに、新訳で納められています。

「高額保険」は、スタージョンの作家歴第一号の作品なのだとか。
この、わずか4ページの短い掌編の切れ味のよさは魅力的。
「もうひとりのシーリア」は、過去数度邦訳された作品です。
他人の机の引き出しや冷蔵庫を覗かずにはおれない性癖をもつ大男スリム。
秘密を暴くとかそういう含みは何もなく、
ただその行為が好きで日々技術に磨きをかけているのです。
そのスリムのアパートに新しい住人がやってきます。
シーリアというその住人の部屋をさっそく覗くスリムですが予想外の展開に…。
ラスト二行のドライさがしびれます。
「影よ、影よ、影の国」は、幼い少年と継母を描いた、
怖いようなほっとするようなむずがゆさがたまらない作品。
月の光と影の織りなす描写の美しさと、少年のこの邪鬼の無さ。
「裏庭の神様」はどうしても小さな嘘をついてしまう男の物語。
その嘘で妻の不興を買った男が自宅裏庭で掘り出したのは、
自らを神だと名乗る奇妙な偶像だった……という物語です。
ユーモアの効いた大人のファンタジーというところでしょうか。

「不思議のひと触れ」はとにかくイメージの美しい短編でした。
「ぶわん・ばっ!」は一人のドラムマンの語る物語。
「一流バンドでタイコを叩くにはどうすればいいかだって?」
語り口調にリズムがあって、ほれぼれするようなかっこよさ。
でもひらがなの擬音ってどうも間が抜けてるなぁ…。

「タンディの物語」、これは本書で私が一番好きな作品です。
四人きょうだい、といっても一番下は数に入らない。
タンディは5歳にして、自分の置かれている状況を自覚していた。
タンディより2歳上の兄ロビンは
兄として彼女を好きなように小突き回すことが出来る。
3歳下の妹ノエルは家族の「かわいいベビー」の座に居座っている。
だからタンディが出来ることは、
声を限りに助けを求めることなのだ。
まさに中間子症候群。
度を越したエキセントリックさと、知的な天賦を持つタンディは、
幼稚園でも、他人の注目を集めるために独特の手を使い、
両親をなやませていた。
ある頃からタンディは
ブラウニーという雨ざらしになっていたくまのぬいぐるみを偏愛するようになる。
そして……。
じわっと背中が冷たくなるような怖いSF短編です。
ブラッドベリの地下室にも似たようなのがいたよなぁと思いながら、
いや、こっちの方が後味が怖いなと。

「閉所愛好症」も印象的なSF短編でした。
下宿を営む母親と二人暮しのクリスは
内向的なコンピュータ技師の青年。
明るくて何事も積極的な大男の弟ビリーは宇宙士官候補生で、
休暇に帰省してきたばかり。
クリスはビリーに対して微妙な感情を抱きつつも
それを認めたくない感じ。
今また、帰って来るなりクリスの彼女(候補?)のテスを
あっさりデートに誘うことに成功した。
やりきれないけど何もいえない、
そんなクリスの前に現われたのは、
新しい下宿人ガーダ・スタインだった。

「雷と薔薇」は、人類の終末を描いたSF短編。
西から東から、一気に多くの原子爆弾を投下されたこの国は、
今急速に死に向っていた。
すでにほとんどの国民が死に、生き残った者の命もそう長くはない。
そして、この国以外の国も、
その後ゆっくりと死に絶えていくしかないのだ。
まだ辛うじて生きている都市に、スター・アンシアが訪れた。
かつての歌姫は、今のこの国の最後の光のような存在だ。
一介の軍人ピートは、TVの中のスターの歌に驚きを隠せなかった。
スターのメッセージ、それは……。
もう誰も救うことの出来ない終末の世界を描いて、
緊迫感と美しい詩情が共存してる作品でした。

「孤独の円盤」は、
もう一つの「不思議のひと触れ」という感じでしょうか。
円盤に攫われて戻ってきた女性、
なんてある意味陳腐な材料を持ってきて
ここまで美しい物語になるとは驚きです。

洗練されたブラッドベリ、という印象がちらつくな、
と思ったら、ブラッドベリがスタージョンを師と仰いでいたんですね。
なんだか非常に納得。
どっちがどうだという訳ではないけれど、表情は違うけど、
匂いが似てるって気がしました。
「夢見る宝石」「人間以上」などの長編の
ごたつき加減(いや、好きなんだけれども)からは
想像もつかないほどスマートな文体に驚きました。
手元に置いて、ときどき好きな作品を読み返したいような本です。
(2005年4月13日)
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