W・サローヤン「パパ・ユーア クレイジー」
新潮文庫
マリブの海辺にある父の家で、僕と父との新しい生活が始まった。
父は僕に、僕自身について小説を書くようにいった。
僕は海を、月を、太陽を、船を知ってはいるけれど、
僕自身や世界をほんとうに理解するにはどうすればいいんだろう―
(裏表紙解説より)
へへっ。ちょっとズルしました。
10歳の少年と作家の父との会話がメインの、
短いセンテンスで綴られる爽やかで、
ちょっと物憂い感じの物語です。
この作品の訳は少し変ってて、
なんだか直訳に近いような雰囲気がするんですよね。
「僕の父と僕は、僕の母と僕の妹にさよならを言った。
僕らは歩いて丘を下りた。僕の父の家までヒッチハイクをするためだ。」
とか、
呼びかけの時には「父さん」っていうけど、
「あなたは…」って息子が父親に向って言ったり。
でも、それがまた不思議な味を醸し出してるんですよね。
幼いながらもれっきとした一人の人間として扱ってるって感じで。
上記の文章は、
以前から時々登場している、
感想文じゃなくて、お気に入りの一冊の紹介文です。
サローヤンは2001年から2005年の爆発的に本を読んでた時期よりも
以前から好きだった作家の一人で、
「ママ、アイラブユー」も大好き。
これは少女とそのママの物語。
あと、「わが名はアラム」とか「心は高原に」とかもいいですね。
「心は高原に」の中の
「お若いの、心を高原においてきたこの年寄りに、水をいっぱい、いただけんかな」
っていうのが好き。
たしか、この作品を選んだ理由は、
やっぱりサローヤン作品なら少女より少年だろう
みたいな感じからだったように思います。
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