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ジーン・アウル「ケーブ・ベアの一族」



ジーン・アウル「ケーブ・ベアの一族」
ホーム社(集英社) 大久保寛訳

「エイラ 地上の旅人」シリーズの1~2巻目。

およそ三万年から三万五千年前の時代。
旧人ネアンデルタール人の間で育つ新人クロマニヨン人の少女の
成長の壮大な物語の第一部です。

突然の大地震によって、突然家族を失ってしまった5歳の少女エイラ。
あまりに幼いエイラですが、
ケーブ・ライオンに襲われた時も、
太ももに傷を作っただけでからくも生き延び、
やがてある一族に拾われます。
それはやはり地震によって彼らの住む洞穴を失い、
新たなすみかを求めているネアンデルタール人のケーブ・ベアの一族でした。

一族の薬師で、
地震でつれあいを失ったものの、赤ん坊を身籠っているイーザは、
傷を負い衰弱しきったエイラを助けます。
彼らとエイラの姿は違いすぎ、
ネアンデルタール人から見ると、
白い肌に金髪碧眼、顎も突起していないのっぺりしたエイラは
醜い「よそ者」でした。
けれど、ケーブ・ベアの一族になんとか受け入れられ、
一族の中でエイラは育てられることになります。
それは、エイラを助けたイーザが
一族でも女としては一目置かれる薬師であったこと、
イーザの兄であり、一族に君臨するまじない師のクレブと、
やはりイーザの兄で一族の長であるブルンが、
半ば半信半疑ながらもエイラを受け入れることにしたからでした。

彼ら独特のほんの少しの言葉と手振りや表情で思いを伝える術や、
一族のしきたりなどを次第に学んで行き、
少しずつ一族の人々にも受け入れられるエイラでしたが、
その一方でよそ者で目立つエイラを憎む人物も現われます。
生まれながらの一族の人間でもないし、
同じ人間とはいえ同種族とも言えないエイラは、
どんなに彼らに同化しようとしても、
内側からあふれ出すように違いが明らかになっていくのです。

本書は、以前「始原への旅だち」シリーズとして
評論社から出版されていたものを、
新たに完訳版として出版されたものです。
「ケーブ・ベアの一族」上下巻は、
旧訳版では「大地の子エイラ」上中下巻にあたります。

意外だと思ったのは、
その旧訳版が大人向けでも完訳でもなかったということ。
けっこう色んな意味でハードな描写が多いので、
てっきり前のものも一般向けに出版されたものだと思い込んでいたんです。
ちょっと読み比べてみましたので、
興味のある方は下の方もごらんください。

さて、この物語はとにかくスケールが壮大で、
一度読んだことがあるとは言え、
やっぱり読んでいて胸がどきどきしますね。
本書はまだエイラが幼いので、
あまりそれと感じさせるシーンも少ないのだけど、
滅び行く旧人たちとこれから繁栄していくはずの新人
という対比がなんとも胸に迫るんですよ。
エイラの容姿、考え方だけじゃなく、
肉体や脳のつくりが基本的に違うんだ!と感じさせるところや、
逆に滅び行く種族の哀愁もちらり。
そうそう、
エイラがケープ・ベアの一族の者たちの仕草や表情に、
「言葉」としての意味があることに気がつき
それを吸収していくくだりはやっぱり胸を打たれます。
新たなものを吸収して自分のものにしていく力、ですかねぇ。

でも、基本的にはネアンデルタール人もクロマニヨン人も
同じように考えるし感じる、同じ人間として描かれているので、
濃い人間ドラマとしてもきっちりと楽しめます。
特にエイラとイーザやクレブの愛情とか、
族長の息子ブラウドとの確執などはとにかく読ませます。
あと、単純に凄いと思えるのが、道具作りの詳細なところ。
ホント恐ろしく詳細なので、
ちょっと作ってみたいかも…
出来るんじゃないか…なんて思わせるほどです。

少しだけ、気になったのはクロマニヨン人が
現代の欧米人とほとんど違わないように描かれてるところ。
クロマニヨン人がどんな姿をしてたのかわからないけども、
つるつるすべすべの青白い肌に金髪碧眼、すらりとした大柄な体格と、
まるで現代からタイムスリップしてきた
という設定でもおかしくないというのは、
なんとなく違和感を覚えます。
この疑問、実は旧訳のときはほとんど感じなかったんですよね。
何故だろう、と思ったんですが、
どうも宇野亜喜良さんのイラストの影響かなぁって思えます。
旧訳版は画像としてのエイラがないですし。

□旧訳と新訳の差□

ストーリーの中盤のエピソードに触れる部分があるので、
未読の方は読まない方がいいかも。

○比べてみて、まず感じるのが旧訳の文章がかたいということ。

旧 「獣皮を張った差しかけ小屋を後に、裸の女の子は、岩のごろごろしている川原に走り出た」
新 「獣の皮でおおわれた小屋から出た裸の少女は、小さな川の曲がったところにある石や岩ばかりの川原を目指して走った」

旧 「胃のあたりが落ちつかず、不安に胸をしこらせながらも何とか立とうと努力したが、大地がぐらぐら揺れているので釣合いを失って倒れた」
新 「恐怖が心をかすめ、胃がむかつき、締めつけられた。立ったままでいようとしたが、吐き気を覚えるような揺れに体のバランスを失い、後ろに倒れてしまった」

旧 「エイラの方はもう有頂天だった。彼女はそれまでこの見知らぬ人々の間で孤立した、心もとない気持を味わっていた」
新 「エイラは、喜びで有頂天になっていた。それまで、この見知らぬ人たちの間で途方にくれ、孤独感を抱いていたのだ」

当然同じことが書いてあるのだけど、
微妙に旧訳の方が硬い気がしませんか?
だけど旧訳の方は児童向けとして訳されていて、
新訳は全世代向けの完訳という話で、なんだか不思議な感じ。

段落の付け方はほぼ一緒。
言葉の使い方そのもの以外にも、時折微妙な違いがあるみたい。
微妙な言葉の硬さやちょっとくどくどしい日本語の使い方が、
旧訳の方が雰囲気がキツイイメージをあたえるのではないかなぁ。
ちらっと読み返してみたけども、
やっぱり新訳の方が子供にも楽しく読めそうな雰囲気です。

じゃ、旧訳版はいいとこなしか、というと、
そうでもなかったりします。
原始の時代のなんとなく厳しい雰囲気を味わいたいという方には、
こっちの方がいい、と思われるかも。
エイラが薬として使う植物のイラストが添えられているのも
旧訳版の親切なところでしょうね。

○エイラがブラウドに暴力的に性行為を強要されるシーン

ブラウドがエイラに暴力を振るうシーンはちゃんとあるのだけど、
新訳にある、性行為そのもののくだりはきれいに抜かしてあります。
「硬い一突きで、ブラウドは深く貫いた」
からしばらくのモロ行為の描写ですね。
ぼかしてあるのではなくて、丹念に削除してある感じかな。
あと股間、性器という言葉のくだりが抜け落ちているようです。

今回比べてみたのはエイラが子供の頃からの話なので、
こういう性行為の出てくるシーンは少なかったけど、
これからどんどん出てくるんだよね。
というか旧訳でも、うげげと思うぐらい出てきたはず。
その辺りはどうなってたんでしょうか?
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 2015_09_26


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