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トマス・M・ディッシュ「アジアの岸辺」



トマス・M・ディッシュ「アジアの岸辺」
国書刊行会

60年代から知性派SF作家として活躍する
トマス・M・ディッシュの日本オリジナル編集の短編集、
ということです。
その名前には覚えがなかったのですが、
児童文学「いさましいちびのトースター」の作者なのですね。
ひやりとするブラックさ、温度の低い不条理さ、
狂気か正気か読者に挑戦するかのような不遜な態度。
書かれた年代が新しくなるほどに、
これらの色が少しずつ変化していって、
特に最初の一編と最後の二編なんて別人の書いたものみたい。
人間味があるというか、体温が感じられるというか。

「降りる」浅倉久志訳
上着のポケットには4ドル75セント。
これから金が手に入る予定もない。
あるのは未だ止められていなクレジットカード。
男はアンダーウッド・デパートで煙草、食料品、本を買いあさり、
15階のスカイルームで休憩したあと、下りのエスカレーターに乗った。
「虚栄の市」を読みながら下っていくエスカレーター。
しかし何かが妙だ。

延々と続くくだりのエスカレーターとそれをつなぐ踊り場……。
こういうなんのきっかけもなく
不意に悪夢の中にはいってしまったような作品、
大好きです。う~、怖いよぅ。

「争いのホネ」渡辺佐智江訳
マルタ・フィリップス=スミス夫人は
代々住み続けている家の居間に
プルーおばあちゃんと途切れる事無く会話を続けている。
おばあちゃんはお葬式の日からほとんど変わっていない。
夫のセオドアは、
プルーおばあちゃんや、書斎にいるモーリスおじさんについて、
あまり良い感情を持っていないようだが、
マルタは特に祖母のプルーおばあちゃんといるときが
一番くつろいだ気持になれるのだ。

セオドアという名前からだろうと思うけど、
まず夫のニックネームがテディーベアってのが、
うひゃ~気持わる~って思っちゃいました。
いや、それが一番の気持悪い点ではないけど、
この辺りからすでにマルタの気持悪さがひしひしと感じられて……。
ラストにすとーんと読者の(私の)思いを切り捨てるこの非情さはもう、
しびれるほかないです。

「リスの檻」伊藤典夫訳
「ぼく」がいる場所は、立方体の部屋の中。
真っ白けの照明、ストゥールとタイプライターがひとつづつ。
影はない、時間もない。
毎日「タイムズ」が届けられるけれど、その日付だってあやしい。
「ぼく」はもう何年もここに閉じ込められている。

うーん、こういうの、
ニューウェーブSFって呼ばれてたものなんでしょうか?
超絶技巧ねぇ…。ごめんなさい。
どうもこの作品の面白みがよくわかりません。

「リンダとダニエルとスパイク」浅倉久志訳
セントラル・パークを歩きながら、
リンダは空想の恋人ダニエルと会話をしていた。
涼しい夏の夜だった。
リンダはダニエルに秘密を打ち明ける。
ダニエルの赤ん坊を妊娠したと。
リンダがダニエルの姿を見たのはその夜が最後だった。
あくる日イエローページで見つけた婦人科の医者を訪ねたリンダは、
妊娠しておらず、代りに癌が発見されたことを知らされた。
しかし、リンダは子宮に新しい命が育まれているのを知っていた……。

狂気の上にも狂気、
みたいな不安な混乱に包まれる不気味な短編でした。
こう、
みょうに体温の低いような文章が
また不気味さを引き立ててる感じなんですよね。

「カサブランカ」
カサブランカへ旅行中のリッチモンド夫妻。
新聞で戦争でアメリカが壊滅したことを知らされるが、
トラベラーズ・チェックはもはや使えず、
その上英語しかわからない夫妻はなす術がない…。

異国情緒程度の認識で外国へ旅行するこの老夫婦の感覚、
アメリカ的と言えばアメリカ的ですよね。
なんだかこの期に及んでも状況認識が出来ない二人に
ぞわぞわと恐怖感がつのります。

「アジアの岸辺」
作家ジョン・ベネディクト・ハリスは、
単身イスタンブールに来ている。
この国の言葉はほとんど話せないが、それがかえってよかった。
しかし、
そのうちにジョン・ベネディクト・ハリスは
イスタンブールの町を、観光地を散策する折に、
あの女とあの少年の姿を何度も目にするようになり、
しまいにはどんな女や少年を見てもびくりとするようになった。
夜毎彼のアパートにやってきては
「ヤウズ!ヤウズ!」とノックしながら呼びかける女、
水の入ったバケツを両手に持って、
泣きながら彼に何事か理解できない言葉で訴えかけた少年。

オレの狂いっぷりについてこれるか?
って感じの飛ばし方。
えーっと、ちょっと付いていくのがしんどかったです。はい。
それはそうと、
経済力のある欧米人が
非英語圏の国へ英語のみをたずさえて滞在しに行くって、
なんだかとても微妙な気持を抱かせますね。
「カサブランカ」でもそうなんだけど、
ちょっと異国情緒と居心地悪さを体験するために滞在するだけで、
ちゃんと帰るべき国はあるんだよ
っていう安心感があるから出来ることなんでしょうね。
きゃ~怖い~って感じじゃなくて、
ぞくりと悪寒のする作品でした。

「国旗掲揚」
革フェチのおかまだったレオナルド・ドウォーキンは、
マンチェスターで治療を受けて、
見事にその性癖から脱することが出来た。
ついでに喫煙からも。
その後会社でめきめきと出世したレオナルドだったが、
2年後に会社を首になった。

73年に書かれた作品。
この作家の9・11の後の作品ってどんなだろうって思っちゃうのは
意地悪な考えでしょうねぇ。

「死神と独身女」大久保寛訳
ジル・ホルツマンは、六月のある日、
人生はもうたくさんだと結論を下した。
大学時代にも同じような結論に達して自殺したことがあったが、
その時はうまく発見されるように仕向けていた。
が、今度こそ本気だ。
彼女は書き留めてあった死神の電話番号を探し出して
ダイヤルしたが話し中だった……。

ちょっと皮肉とユーモアの利いた作品。
男性の自殺希望者も同じ手順なんでしょうか?
 
「黒猫」林雅代訳
ローマで知り合ったウィラード夫人からアパートを借りた大学教授。
そこには、
自殺した前の住人であるローリエ夫人が飼っていたらしい黒猫が残されていた。
男は猫にミッドナイトと名付け、
大切に愛情を持って飼うことにしたが……。

というか、
いくら子どもの時の話だからってそんなことしたらダメでしょう。

「犯ルの惑星」渡辺佐智江訳
コリーは思った。強く思った。
強姦されるには若すぎると。
ユートピアに住むものの義務として、
コリーは快楽島へジャンプしなければならないのだ。
それは人類存続のために必要なことなのだ。でも……。

字面だけではよくわからなかったけど、
これって「猿の惑星」のもじりなんですね。
うーん、ストーリー的にはちょっと面白いけど、
言葉の斡旋が逆に面白さを殺ぐような気がしました。
作者なのか訳者なのかはわからないけど。

ここらで、
なんとなく後半に行くに連れて
だんだん面白いのか面白くないのかわからなくなってきています。

「話にならない男」若島正訳
バリーはコミニュケーション免許の試験を受けた。
自分では正直言って自信がなかったが、
向うの手違いでトラブルが起こり、
結果としてバリーは仮免許をもらえることとなったのだった。
本物の免許を手にするためには、
もういちど再試験に挑んで70点以上をとるか、
推薦シールを三つもらうか。
バリーはなんとか推薦シールを貰うために会話を交わし続ける。

なんだかちょっとほっとするような、
読後しばらくして、
妙に物悲しい気持になるような不思議な雰囲気の作品でした。
しかし、コミニュケーション免許のあるなしって何の制限なんだろう?
それはそうと、
あまり感想とは関係ないけど、
ううっ!と詰まってしまったくだりがありました。
「鳩の赤ん坊は見たことがない、子供の鳩はどこにいるんでしょう」
ってバリーがくちにするところ。
あ~っ!この疑問をかつてどこかで読んだ事がある!
と思うんだけど、
どうしてもそれが何だったか、どこでだったか思い出せないの。
ううっ、なんだかもぞもぞする~。

「本を読んだ男」浅倉久志訳
ジェローム・バグリーは高校を出てから12年間、
非就労者、あるいはさまざまな職業教育の受講者だった。
仕事をして賃金を貰ったことは一度もなかった。
ある時、ジェロームの仮釈放中の保護監察官モナ・スカイラーは、
本を読んでお金を稼げるという広告を彼に見せた。

ふふ。おもわずニヤニヤしてしまうような皮肉な作品でした。
うは~、
これって現代でもよくあるタイプの詐欺じゃないのって思ってたら……。
…おもしろかったです。

「第一回パフォーマンス芸術祭、於スローターロック戦場跡」若島正訳
K・Cはノースカロライナのスローターロック戦場跡を訪れた。
そこで行われる第一回パフォーマンス芸術祭に、
ソロアーティストとして参加するためだ。
タロットカードの「吊された男」からヒントを得たパフォーマンス。
高い塔から吊るされたK・Cが目にした下界の恐るべき光景とは……。

あらま。うは~って感じ。
バカっぽく装った意地悪な知性にくらくらしちゃいました。
(2005年5月25日)
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