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J・M・クッツェー「エリザベス・コステロ」



J・M・クッツェー「エリザベス・コステロ」
早川書房

うへぇって思わず言いそうになってしまうような、
そして時折にやにや笑いをもらしてしまうような、
そんな作品でした。
つまり、面白かったってことですが。

エリザベス・コステロは老境に入った女性作家です。
そう、
「動物のいのち」のヒロインである、あの女流作家。
ジョイスの「ユリシーズ」の中の登場人物マリオン・ブルームを主役にした小説
「エクルズ通りの家」で文学界に峻烈な旋風をもたらしたのが十数年前。
その後も著作を発表しているけれども、
「エクルズ通りの家」を越える作品は出ていないようです。

さて本書は、
そのエリザベス・コステロが各地で様々な発言をして物議をかもしたり、
腹を立てたり考え込んだりというものを、
7つの章に分けて描いてあります。
このエリザベス・コステロが
クッツェーの皮肉が効いた、自身の歪んだ鏡なのかピエロなのか、
やっぱり気になるところです。

第一章の「リアリズム」では、
合衆国では大きめの文学賞「ストウ文学賞」を受け取るために
ペンシルバニアのあるカレッジへ向います。
お供は息子のジョン。
どうやら彼は「動物のいのち」で登場したノーラとは離婚している模様。
ふむ、
それってエリザベスと何らかの関係があるんじゃないの?
とかんぐってしまいますね。
まあ、それはどうでもいいんですが。
受賞式のスピーチでカフカの小説を引き合いに出した、
(私にとっては)曖昧模糊とした文学論を語り、
聴衆からどん引きの一歩手前を引き当ててしまいます。

「アフリカの小説」では、
優雅な船旅を楽しむ隠居老人たちのディナーパーティで
講演をすることを引き受けます。
しかし、その船には彼女の旧知の人物、
ナイジェリアの作家エグドゥが載っていたのでした。
どうやらエリザベスはエグドゥに対してある種の苦々しい思いを抱いてるようで、
彼の講演を聞きながら心の中に浮かぶ様々な反発は、
そこから発してるのではないかと思える矛盾や混乱があるみたい。
「アフリカの人文学」では、
アフリカに渡って人道活動をしてきた
実姉ブランチの許を訪ねることになったエリザベス。
ところが、
このブランチって方がまたエリザベスに負けず劣らず……。

「悪の問題」では、
アムステルダムで開かれる「悪の問題」についての
文学会議のスピーチに招かれたエリザベス。
ところが、
他の招待作家の名前の一つを見て青くなってしまいます。
ヒトラーと暗殺者たちを描いた作品とそれを書いた作家を
(実名入りで)手ひどく批判するエリザベスのスピーチ原稿、
その当の作家ポール・ウェストがいたのでした。
あわてて原稿を手直しにかかるエリザベスですが、
「ポール・ウェストはObscene(いやらしい)な本を書き、
見せてはいけないものを見せた」
このくだりだけは削るわけにはいかないと思ってしまうのです。

この章のはじめに、「動物のいのち」の後日談が書かれています。ふふ。

しかし、
この作品が単なる皮肉なユーモアかと思えば、
「門前にて」で、また別の見方が出来ると思います。
己の信ずることについて書きあらわさねば門をくぐることが出来ない
という不条理な状態の中で
自己を模索するエリザベスの姿は、
もはや毒舌が痛々しく空回りするピエロ役の老作家ではないように思えました。

最後の章「追伸」は、
17世紀の、フランシスコ・ベーコンに書き送ったある婦人の書簡です。

さて、訳者あとがきによると、
コステロ・シリーズは他にも出版されているとか。
またエリザベスに会える日を楽しみにしてます。
(2005年読了日不明)
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 2015_08_16


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