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J・M・クッツェー「動物のいのち」


J・M・クッツェー「動物のいのち」
大月書店

この本は、
プリンストン大学ヒューマン・ヴァリュー・センター主催の
タナー記念講演を元に発行されているシリーズの一つで、
この記念講演の講演者による「講演」と、
それに対する数人の論者の「リフレクションズ」、
そして、巻頭に、主催者の論文が入っている、
という形式なんだそうです。

ただ、
この本の面白さは、
この講演の主役であるクッツェーの講演自体が
自分の言葉で自分の口から論ずるものではなく、
フィクションの形式をとっていたってところですね。
クッツェーがこれを短編小説として世に出す代りに、
自身の講演として出してきた意味はどこにあるのか?
それは主催者や論者たちに、
クッツェーの意図、彼の本意はどこにあるのかと
大いに悩ませたようです。
その辺りも面白かったw

さて、まずはクッツェーの講演内容から。

老境を迎えた作家エリザベス・コステロが、
ある大学から好きなテーマで講演してほしいと招かれた。
彼女はそのためにしばらく息子夫婦の家に滞在することになるが、
息子の妻はエリザベスの滞在にいい顔をしていない。
それはエリザベスが孫たちに
自身の菜食主義を押し付けるかのような言動をするからなのだ。
講演、講義、ディベートと三回に分けて、
エリザベスは聴衆に語りかける機会が設けられている。
そこで彼女が披露したのは、
文学或いは哲学を絡ませた動物の権利についてのものだった。

意外と、というと失礼かも知れないけど、
面白かったです。
エリザベス・コステロの講演自体は、
なんだか小難しい用語がいっぱいだし、とりとめがなくて、
うわっページをつるつる視線が上滑りしちゃうって感じだったんだけど、
時折挟み込まれる、
エリザベスの嫁ノーマのコメントのタイミングがいいんですよ。
私が読みながら感じたことをそのまま言ってくれてる感じで。
二人の主張そのものに対してはどちらも全面的に同意も出来ないけど、
共感するところがある、という感じ。

エリザベスって人物そのものにも興味がわきますね。
最初の講演の後のディナーの席で、
話の流れからノーマが振ったエリザベスの菜食主義について、
「魂の救済のため」だと応えるエリザベスに、
誰かが「一つの生き方として尊敬する」というと、
すかさず「私は革靴を履いてます」といい
「わたしがあなたなら尊敬しない」と切り返すあたりとか、
やな婆さんだなぁとw 
でも、なんだか悲壮で気になる人なんですよ。

クッツェーの
このフィクションという形式をとった講演に対して
4人の論者によるリフレクションズが続きます。
マージェリー・ガーバーの論文は、
そこにクッツェーのアナロジーを見出してます。
この文章は沢山の作家の作品と比較検討した硬いものでした。

ピーター・シンガーの論文は、
フィクションにはフィクションで、という感じで
娘ネイオーミという登場人物との会話形式のもの。
読みやすいし面白かったですね。

宗教史学者のウェンディ・ドニガーは、
エリザベスが食肉について、
「神を作り出し、その責任を神に負わせている」
と言ったことを受けて非西洋の文化圏での言説を披露してます。

私が一番おもしろく読んだのがバーバラ・スマッツのものですね。
自身が体験した野生のヒヒの群やマウンテンゴリラの群の中での、
彼らに仲間と認められて生活した話のくだり。
すごく面白かった。

総じて、なかなか面白い本でした。
クッツェーのフィクションに下世話な好奇心をくすぐられ、
そのあとのリフレクションズで知的好奇心も満足させられる、
まあなんてお得なんでしょうか。
人に薦めるのは躊躇われるけど、
私自身はけっこう満足できたな~。
(2005年4月7日)
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