スポンサーサイト

Category: スポンサー広告  

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

 --_--_--


キャンディいそいでお帰り

Category: 児童文学のこと  

国際アンデルセン大賞名作全集7
「キャンディいそいでお帰り」
マインダート=ディヤング 作
高杉一郎 訳
モーリス=センダック 絵
講談社


マインダート・ディヤングという作家をご存知でしょうか。
オランダ生れのアメリカの児童文学作家で、
日本でも多くの作品が出版されました。
現行で出ている作品は残念ながらその半分以下というところ。
ここで紹介する
「キャンディいそいでお帰り」もその中の一つなのです。
が、
同時に、少なくとも日本で出版されたディヤングの作品の中の
最高傑作でもある
と、私は思っています。
日本で出版された作品を全ては読んでないけれど、
しかし
やっぱり本書が最高傑作であると
言い張りたい作品なのです。

candy.jpg


物語の主人公は、一匹の犬。

 そのいぬには、名まえがなかった。
 いぬに名まえがあるのは、だれかがそのいぬを飼っていて、かわいがってくれているからだが、そのいぬには、飼い主がなかった。そのいぬは、ほんのわずかな家がそこここにたっている、もの音ひとつしない、だだっぴろいいなかに住んでいた。いぬは、そのわずかな家のごみすて場から、食べのこしや肉のついていないほねをひろってきては、食いつないでいた。いぬはひとりぼっちだった。いぬには飼い主も仲間もなかったし、たえずおどおどしていた。


というのが物語の始まりの文章。
一年前から居ついた田舎で、犬はひとりぼっちで、おどおどと、いつも何かしらに脅えています。
しかし、この犬は、最初から飼い主も名前もない犬ではなかったのです。

 その小さないぬの思い出は、恐怖からはじまった。思い出の中では、いぬは生まれたときからののらいぬでもなければ、その後ずっとのらいぬだったわけでもなかった。それなのに、ほとんど生まれるとすぐに、いぬの恐怖と、びくびくしてくらす不安とは始まった。親いぬの、おっぱいのある、大きなあたたかいからだに、兄弟の子いぬたちといっしょにぬくぬくとよりそっていたとき、そのあたたかい巣からだれかの手でつまみあげられたあの寒々としたしゅんかんに、もうその恐怖と、びくびくしてくらす不安とは始まったのだった。
 これまでは、だれかの手につまみあげられても、またきまってもとの巣へもどされたのだが、こんどはそうではなかった。つまみあげられたしゅんかんに、親いぬや兄弟の子いぬたちの巣からはるかにひきはなされたことが、子いぬのぼんやりした視力でもわかった。子いぬは、宙につまみあげられ、だれかの両手にだかれて、運ばれていった。自分のすぐ上のあたりで、がやがやという興奮した声がきこえた。親いぬのかすかな、あたたかいにおいが消えたかと思うと、つづいて子いぬが生まれた家のにおいが消えた。子いぬはもう家の外に出されていて、寒々とつきさすような大気の中にいた。


幼い姉弟が、子犬を一匹選んで、家につれて帰ったのでした。
子犬はキャンディと名付けられ、そこの家で幸せに暮らすはずだった。
子犬のキャンディを可愛がってくれる幼い子供達。
家を子犬に汚されることが嫌いで、子犬の気持はあまり判ってくれないお母さん。
多分犬好きで、まず犬は訓練からというお父さん。
このまま、この家族のもとで育てば、
きっと子犬キャンディも
幸せな家族の一員となったことでしょう。

しかし、そうはならなかった。
ある春の日、一家は田舎へ遊びに出掛け、
そこでキャンディは家族とはぐれてしまったのでした。

恐ろしいことだらけの世界に、たった一匹で放り出されたキャンディ。
一年後、家族とはぐれたキャンディは、
びくびくとおびえながらこそこそと生きる犬になっています。

ここで冒頭に戻るわけです。

その後、田舎から都会へ、犬の抑留所から、病院へ、都会の街角へ。
犬は流されていきます。
どこへ行くにしても、犬の本意ではありませんでしたが、
そういう風になってしまったのです。

いつでも犬は、孤独でびくびくしています。

「キャンディいそいでお帰り」
タイトルのこの優しい声掛け。
これが犬に向かって発せられ、それを犬が受け止める。
たったそれだけのことが、
なかなか達せられない。

犬をとりまく人間たちの多くは、犬好きの優しい人間で、
作者の犬を描く視点も非常に優しいものなのに、
どうしてこんな風に回り道してしまうんだろうか。

子供の頃、図書館で借りて読んで以来、
毎回毎回
キャンディのために、キャンディだった犬のために、
祈るように読み続けました。

気がつくと、その図書館に本書が置かれなくなり
そのうち、
ずっと絶版のままであることも分かりました。
こんないい本が、
誰にも読まれないまま
権利だけが死蔵されてるって
非常に残念なことだと思います。

お近くの図書館にもしこの本があったら、
一度読んでみて欲しい。
そんな一冊です。

スポンサーサイト

 2014_09_13


Comments


 管理者にだけ表示を許可する


05  « 2017_06 »  07

SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

プロフィール

Sima

Author:Sima
わたしが超個人的におすすめする児童文学100選
是非コメントください。
よろしくお願いします。

カテゴリ

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

ランキング




PAGE
TOP.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。