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J・Lボルヘス編「アルゼンチン短篇集」


金曜企画です。

J・Lボルヘス編「アルゼンチン短篇集」
国書刊行会

ボルヘスによる序文から始まる
アルゼンチンの作家の作品をあつめた短篇集。
序文は、あまり長くはないけど、
収録した作家についての分りやすい説明があって嬉しいです。

ラテンアメリカのあちこちの国から集めたオムニバス短篇集と比べて、
アルゼンチン国内のみのオムニバスなので
ちょっと全体的に地味な感じがしないでもないですが、
なかなか面白かったですね。
装丁が雰囲気良くて嬉しいけど、
変形の本でちょっと読みにくいという難点もあったりして。

「イスール」レオプルド・ルゴーネス
倒産に追い込まれたサーカスの競売で買った猿。
「私」はその猿イスールで、ある実験を試みた。
それは、猿に人間の言葉をしゃべらせる、という実験だった。
ジャワの原住民たちが、
猿がことばをしゃべらないのはその能力がないからではなく、
しゃべるまいと自らに禁じているからだと、
何かで読んだことがきっかけで、
その考えに取り付かれてしまったのだ。
まずはじめに「私」が行ったのは、
猿を聾唖者とみなし、発声器官を鍛えることだった。

うん、とても面白かったです。
最初から最後までぐっと引き付けて読ませます。
イスールという一匹の猿が非常にいいんですよね。
哲学者のごときずっしりした存在感です。

「烏賊はおのれの墨を選ぶ」アドルフォ・ビオイ=カサレス
開村以来、この村で第一級の事件、
それは、ドン・フアン・カマルゴの資材置場で起こったものだった。
教師である「私」に
ドン・フアンが息子を使って本を借りに来たことと、
ドン・フアンの美しい庭園に設置されていた
スプリンクラーが消え失せたこと、
この一見まったく関連のなさそうな事実が、
この事件の前触れであった。

ビオイ=カサレスらしい、
どこかお澄まし顔の文化人っぽい端正さが見え隠れする短篇。
くどくどしいところがなくて、
すっきりと楽しめました。

「運命の神さまはどじなお方」
アルトゥーロ・カンセーラ/ピラール・デ・ルサレータ
《二度あることは三度ある》という言葉があるが、
フアン・ペドロ・レアルテの場合はこのたとえがぴったりだった。
15年間、ブエノス・アイレス市鉄道の御者をしていたこの男は、
前世紀の終りに。片足を骨折した。

何が二度あることなんだろう、と読んでいって、
ラストのレアルテの言葉によってすとんと落ちる、
という作品なんだけど、
ちょっと引っ張りすぎかなぁと思わないでもないですね。
「ですます」調の文章と、
1900年前後のアルゼンチンのノスタルジックな雰囲気は
読んでいてとても楽しかったのだけど。
この短篇集の中で一番長い物語です。

「占拠された家」フリオ・コルサタル
ぼくと妹のイレーネは広々とした古い家で暮らしていた。
毎朝7時に起きて、午前中は屋敷を清掃し、
午後は静かな時間を過す。
二人とも独身のまま、
毎月入るあちこちの農地からの地代だけでつつましく生活していた。
あのことは単純で、余計な事情が一切なかったために、
ぼくははっきり思い出すことができる……。

コルサタルらしい、
はっきりと形を現さない不安感がつのる短編。面白かったです。
再び戻るつもりのない家に施錠する、
というシーンが非常に印象に残ります。

「駅馬車」マヌエル・ムヒカ=ライネス
カタリーナは、
駅馬車の固い座席に座って激しく揺られていた。
カタリーナは服の裏側に縫い付けた大金の袋をそっと撫で、
その仕草が誰か他の乗客に見られては居ないかと周囲を見渡した。
誰もこの老嬢を気にしているものは居なかった。

この短篇集の中で、
私がビオイ=カサレスと共に楽しみにしていた
ムヒカ=ライネスの作品。
うーん、やっぱり面白かったです。
物語の雰囲気がまず、とてもいいんですよね。
時代がかった重みがあって。

「物」シルビーナ・オカンポ
カミラ・エルスキーは、
若い頃から物に対しての執着が、他の人間とくらべて薄かった。
彼女が本当に大切に思っていたのは、
人間やカナリア、犬などで、
物はどんなに貴重でも、代りがきくもの、と思っていたのだった。
だから、
二十歳の誕生日にもらった
ルビーのついたブレスレットをなくしてしまった時も、
家族の者たちほどは悲しまなかった。

シルビーナ・オカンポという作家とは、
多分初めての出会いだと思うのだけど、面白かったです。
「ですます調」の柔らかい文章と、
柔らかな感触の展開だけど、
読後感はふわふわでもないのがいいですね。

他、
「チェスの師匠」フェデリコ・ペルツァー
「わが身にほんとうに起こったこと」マヌエル・ペイロウ
「選ばれし人」マリア・エステル・バスケス
の三篇が収録されてます。
正直言って、
この最後の三篇は、どうもいまいち面白さがよく分らなかったですね。
短い短い作品ばかりなのに、
なんだかくどくどしいという感じを受けちゃいました。
(2005年7月23日)
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 2015_04_10


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