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イスマイル・カダレ「砕かれた四月」



イスマイル・カダレ「砕かれた四月」
白水社

ジョルグ・ベリシャは、銃を構えながら待っていた。
六ヶ月前ジョルグは男を仕損じた。
今度こそ、傷を負わせるのではなく、
きちんと殺さなければならない。
六ヶ月前、
ジョルグの家族は男に傷を負わせたことに対する
罰金の支払いに苦労した。
だが、見事仕留めれば支払いの必要はないのだ。
男の姿が見えたと思ったジョルグは、
しきたりに従って相手に警告を与え、そして仕留めた。

20世紀初頭のアルバニア北部の高地。
そこは未だ人々が古い血の掟に従って暮らしていた。
26歳のジョルグもまた、
その掟によって殺人者にならざるを得なかった。
晴れて殺人者となったジョルグには、
もう一つ仕事が残っていた。
オロシェの塔へ血の税を納めに行かなければならないのだ。

作家ベシアンは、
若く美しい新妻ディアナを伴なって、
この高地を訪れていた。
この地の古い掟に強く惹かれ、
それをテーマにした小説を書いていたベシアンを、
高地を取り仕切るオロシェの塔の大公が招いていたのだ。

2005年、
第一回目の国際ブッカー賞の受賞者となった
アルバニア出身のイスマイル・カダレ。
ちなみに通常のブッカー賞と違い、
国際ブッカー賞は作品に対してではなくて、
作家にあたえらる賞みたい。
政治色を拭ったノーベル文学賞みたいなものでしょうか。

ベリシャ家とクリュエチュチュ家との
血塗られた争いの発端は70年前に遡ります。
ベリシャ家が迎え入れた旅人を
村の境界内でクリュエチュチュ家の若者が殺したことで、
ベリシャ家は旅人に代わって
クリュエチュチュ家に対して復讐する義務が生じたんです。
この血によって贖われる義務というのが
この山地を支配する掟の大きな特徴のようです。
すでに両家はそれぞれ22人づつの死者を出してるんだけど、
互いに煮えたぎるような憎しみというものはないんですよね。
はじめはなんて怖い、
不条理な掟なんだろうと思いましたが、
だんだんとその掟が妙につじつまの合った
不思議な合理性があるように思えちゃう。
意外ななまぐささ(血腥さではなくて)があるんですよね。

部外者であるベシアン、
そして殺人者となったことで
次の殺人者に殺されることが運命付けられているジョルグ。
この交わるはずののない二人を
間接的に結びつけるのがベシアンの新妻ディアナです。
この、
たった一度見た若き殺人者
ジョルグのイメージに捕らわれてしまうという
ディアナの心理描写がほとんどないの。
ないんだけども
ジョルグとディアナという運命の恋人たちの姿が
とても鮮やかに浮き彫りにされてるところなんてまいっちゃいますね。

スリリングにでも
ドラマチックにでも仕上げることが出来そうな設定を持ってきて、
実は音も色も出来るだけ削ったような映画のような
独特の雰囲気を作り上げてる感じ。
じわじわとアルバニア高地の閉塞感が
読んでる側にもまとわりつくんだけど、
どこかこう、
肉迫する、
というテンションの高さのないところがホント妙な作品。
もうすこしガダレの作品を読んでみたいと思わせる作品でした。
(2005年7月5日)
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 2015_03_25


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