今回の金曜企画「老人」は
「ムーミン」シリーズでおなじみの
トーベ・ヤンソン。
彼女の作品は、やっぱり「ムーミン」イメージが強いと思うんですが、
筑摩書房から、「トーベ・ヤンソン・コレクション」として
全八巻出てて、
これがどれもいいんですよ。
ぴりっとした大人向けの作品ばかり。
で、今回紹介するのは、
その中でも特に大人……
というか老人の作品。
ちなみに、
通常のわたし調べマイナー度ランキング順でいうと、
さすがにトーベ・ヤンソンはランクが低くて、
紹介できるのは
ずっとずっと後のことになりそうです。
トーベ・ヤンソン「太陽の街」
筑摩書房
フロリダのセント・ピーターズバーグは老人達だけの小さな村。
そこでしずかに繰り広げられる晩年の屈託と諦観。
小さな願いと喜びと挫折を持ちながら、
憎み合い、寄り添い合って生きていく老人達の日常が、
哀愁と優しさに彩られて綴られてます。
実際にアメリカに
年金受給者が暮らす老人の町
「サン・シティ」ってのがあるってことは知ってたけど、
他にもあるらしいですね。
語弊を招く言い方だけど、
老人が自治する町があるなんて、
なんてアメリカ的な
前向きな能動的姥捨て山なんだろうって思ったけど…。
横を向いても後を見ても
老いと死が当たり前のように存在する場所で、
せめてもの矜持を高く暮らすって、
並々なら無いパワーが必要なんですねぇ。
うーん。
途中から登場するかつてのスター、
ティム・テラトンのエピソードがいちいち良かったですね。
彼がやってきてからの物語は
それまでの冗漫さが消えて、
のどかな中にも緊張があって
俄然面白くなってきたようなきがします。
物語早々に亡くなってしまう「ビハルガ姉妹」、
彼女たちの何にもしない自己完結した存在が、
死後にあたかも伝説のようになって、
物語の背景にいつもあるという感じが好きでした。
表紙のイラストの老女が、
こりゃ絶対北欧の婆さんだよって感じですが雰囲気が良かったですね。
なんとなく、絶対北欧の人だなって。
(2001年11月30日)
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