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「後藤兼志全句集」



「後藤兼志全句集」

遺句集はいい。
いいというと語弊があるかも知れない。
作者が亡くなったという事だから。
それでも、
やっぱり遺句集はいいと思う。
出来上がった本のうしろに、
作者を悼む人々の姿が見えるから。
選句、
選んだ句の並べ方、
どれも、編者の思いが籠っていると思う。

わたしは、後藤兼志さんとも、
この句集に関わったどなたとも面識は無い。
わずかにお名前と、句をいくつか知っている程度である。
それでも、ついこの句集を求めてしまったのは、
わたしと彼らとが、
ほんの一瞬だけ、「河」誌上ですれ違ったことがあるから。

たまたま、思うところがあって、
かつて参加していた「河」の古いナンバーをひもといていたところだった。
そこに、平山雄一氏による「後藤兼志全句集」の告知を目にして、
なんとなく懐かしくなってしまった。
多分それだけの理由。


気取らない、優しい句集だった。
ソフトカバーの文庫本サイズ、どこへでも携帯できる。
汚れを気にしなくていい、つるつるの表紙もいい。

収められた句も、やっぱり、
気取らない、優しい句だった。
新奇を衒わない、ゆったりとした詠みぶりは、
長く俳句と共に過した余裕だっただろうか。

前半の「風」には、
飄々として、少し枯れて、
そして優しい眼差しが感じられる。
普段誰もあまり気にしない「その後」を詠んだ句が目につく。
こういう所に、さりげなく触れるという優しさが印象に残った。

送り火のあとかたもなく掃かれけり

揺れ足りしものより枯れのはじまれり

夜神楽をはなれて誰も火の匂ひ

七夕をきのふに竹の乾きけり

観月の戻りを月と歩みけり


食べ物が登場する句がいくつかある。
そのチョイスが大人の男性の句だなと思える。

洗鯉余談と言ふが本音なる

蒟蒻も豆腐も水にあけやすし

今日よりの春なり赤福餅二つ


遺句集だというわたしの先入観もあるだろうが

短夜にして病室の夜の余る

の句のリアル感に胸が詰る。


後半の「遊」は、
意欲的で若々しい句が並ぶ。

はたた神連れて甲賀の薬売り

万緑へ開かれてある聖書かな

すごろくの上がりの街を衿立てて

白魚の少し透けたる淫らかな



次の句は、平成三年から五年のものだという。
作者40代中頃というところだろうか。
今の私と大体同じぐらいの年齢と言っていいだろう。

うまく歳とれぬ柚子湯に浸りゐて

「うまく歳とれぬ」という上五から中七にはみ出した措辞に、
この年齢ならではの、焦燥感が立体的に感じられる。
きっと、この年代はみんなそうなんだろうと思う。
しかしこの後に続くのは、「柚子湯に浸りゐて」である。
俳人としての焦りならば、「柚子湯」が皮肉に響くが、
俳句を離れた一個人としての焦りならば、逆に救いになる。
少なくとも、
柚子湯を用意された奥様は、
きっと上手く歳をとられているのだろう。
そんな奥様になれない私は、今もただただ焦るばかりである。

その他、「遊」で好きな句を挙げておく。

雪に田をあけわたしたる明るさよ

ぱらぱらと雨来て鬼をやらひけり

子蛙やいのちといふはやはらかし

これよりは行きやうもなく蘖す

遠くまで遠くまで行く残り鴨



「後藤兼志全句集」
『風』ふう (平成八年~平成二十四年)
『遊』ゆう (昭和五十五年~平成八年)


『後藤兼志全句集』刊行のお知らせ
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 2014_11_24


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