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P・G・ウッドハウス「マリナー氏ご紹介」



金曜日企画の本。

はじめに、書いておきますが、
以下の感想は、
2005年8月1日に書いたもの。




P・G・ウッドハウス「マリナー氏ご紹介」
筑摩書房 井上一夫訳


文藝春秋の方で出版されるというマリナー氏ものです。
訳が、
なのか、
中身がなのか、
とにかく古めかしいところもありますが、
なかなか面白い連作短篇でした。


「ウィリアムの話」
女給仕ボッスルウェイト嬢が
向うの席の紳士はアメリカ人だと教えてくれた。
そこでマリナー氏がその紳士に挨拶にいくと、
このアメリカ人は、カリフォルニア出身だという。
とうとうとカルフォルニア賛歌をぶちあげる
このアメリカ人にマリナー氏が、
地震さえなければ、
と水をさすと、
男は、
カリフォルニアに地震なんて断じて聞いた事がない
というのだ。
そこでマリナー氏は
自分の叔父のウィリアムが
サンフランシスコの大地震のお陰で花嫁を手に入れた話を始めた。

ウィリアムは
香港からの船の相客だったマートルという女性を
恋い慕うようになった。
しかし、
マートルは別の男と婚約をするつもりだという。
傷心のウィリアムは、
亡き母の言いつけを守って今まで一度も飲んだことのなかった酒をあおって、
失恋の痛手を癒そうとしたが……。

法螺vs天然、
みたいな図式。
まずは軽い前菜って言う感じのユーモア小説でした。


「厳格主義者(やかましや)の肖像」
しばらく留守にしていたフレデリック・マリナー氏が
釣魚亭酒場のおなじみの椅子に座っているのを見て、
皆は安堵に似た思いを覚えた。
旅はどうだったかと聞かれたマリナー氏は、
デヴォンシャーの高原に昔の婆やを訪ねた首尾を語り始めた。

事の発端は、
マリナー氏の兄弟たちが、
長年世話になった婆やに金を出し合って年金をやったことに始まる。
その感謝の気持からか、
婆やにお茶に招かれたのだ。
しかしひどくやかましやで、
子供の頃からマリナー氏はこの婆やが好きではなかった。
しぶるマリナー氏に医者をしている兄は、
85歳になる婆やの言うことは、
どんな思いつきでも逆らってはいけないと忠告した。

いざ、
この婆やの元をたずねると、
感激の面持ちで招き入れてくれた。
しかし客間に入ろうとしたマリナー氏に、
青天の霹靂とも言える叱言がひびきわたった。
「クツヲフイテッ!」
マリナー氏の驚きはそれだけではなかった。
客間には、
彼のかつての婚約者が冷たい視線で彼を迎えていたのだった。

最後に思わず笑ってしまうような展開。
いつになっても婆やに頭の上がらない紳士淑女というのが
育ちの良さを感じさせます。


「名探偵マリナー」
釣魚亭酒場の話題が、
イギリス貴族や地主階級の道徳観念のなげかわしい低下ぶり
という話になってきたのは、
女給仕のボッスルウェイト嬢が今読んでいるという小説の話からだった。
どんなに貴族連中の中に腐ったのがいるのか、
マリナー氏は、
彼の甥で探偵をやっているエィドリアンの話を始めた。

迷い犬の捜索が元で
愛する女性ミリセントと出会ったエィドリアン。
相思相愛だったが、
二人の結婚にはミリセントの父という壁があった。
准男爵サットン・ハートリイ=ウェスピング卿は、
親族がかつて起した事件のために
大の探偵嫌いになってしまったという。
その上、
ウェスピング卿は
娘を金貸しのエィドルトン卿と結婚させたがっているのだ。

彼女との結婚が暗礁に乗り上げ、
元々弱かった胃腸の状態がさらに悪くなってしまったエィドリアンは
医者の元を訪れた。
そこで医者はエィドリアンに
胃腸に関して驚くべきアドバイスを与えてくれた。
笑顔を作れ、
というのだ。

はげしく皮肉が効いてて、
思わずニヤリとわらってしまいます。


「ある写真屋のロマンス」
酒場に誰かが置いていった絵入りの週刊誌には、
人気女優の全ページにわたる写真が掲載されていた。
思わず週刊誌を投げ出したところを見咎めたマリナー氏は、
叱言でもいうようにこういうのだ。
写真そのものではなく、
こういう写真を発表する写真家の勇気にこそ驚くべきなのだ、
と。
そしてマリナー氏は、
いとこで写真家のクラレンスの話を始めた。

クラレンスは駆け出しの頃、
市長ビッグスと、
とある裁判であらそったことがあり、
それに勝訴したことで一躍有名写真家となった。
誰もが彼に肖像写真をとってもらいたがった。
ある時、
とある公爵夫人から娘の写真を取ってほしい
という依頼を受けたクラレンスは、
そこへ赴く途中にちらりと見た、一人の若い女性に恋に落ちた。
どこの誰とも分らない女性だった。

時代ですよね。
女優のバストアップ写真に驚いてしまうなんて。
水着ともヌードとも書いてないので、
どういう写真なのかわからないんだけど、
びっくりして本を放り出しちゃうんですから。
あれよあれよというびっくり展開から、
やっぱりこうなるのねという落ち。
この落ちの真っ当さがいいですねぇ。


「スープの中のストリキニーネ」
酒場に入ってきた“強ビール”氏は、
いつもの陽気さと打って変わって別人のように沈んでいた。
半分読んだ探偵小説を汽車の中に忘れてきてしまったという。
准男爵のジェフリー卿に毒をもったのが誰なのかが気になって
今夜は眠れそうもないと“強ビール”氏は言うのだ。
そんな彼にマリナー氏は、
探偵小説に夢中な甥のシリルの話を始めた。

セントジェームス劇場で、
シリルはアメリア・バセットという女性と恋に落ちたが、
彼女の母親というのが有名な冒険家で、
家具屋でしかも虚弱な探偵小説愛好家のシリルなど、
娘の夫としては絶対に認められないという。
なんとかアメリアと結婚したいシリルは、
思い余って単身アメリアの母親に直談判を試みることにした。
彼女は今、
サセックスのウィンガム家へ行ったという。
ちょうど、
かねてからこのウィンガム家に招待をうけていたシリルは、
勇んでそこへたった。

作中にドロシイ・L・セイヤーズの名前が登場してきて、
そうか、同時代の作家だったのねと納得。
当時推理小説や探偵小説は
若い紳士淑女たちの気の利いた嗜みだったのかな。
ウィンガム家へ向う途中に
シリルが読みふけっていたのが
「スープの中のストリキニーネ」という探偵小説で、
実はアメリアの母も、
アメリアが購入した同じ本を持ってウィンガム家へ行っていたのですが…。


「忍冬が宿」
君は幽霊を信じるか、
とだしぬけにマリナー氏がたずねた。
返事の途中を遮って、
マリナー氏はまた
従弟のジェームズ・ロッドマンという男の話を始めた。
お化け屋敷で何週間か暮らし、
そのために五千ポンドをもらい損ねたのだという。

今回の話は、
マリナー氏の語りではあるけれども、
主人公の姓がマリナーではなくてロッドマン。
まあ親族だからいいのか。
タイトルの「忍冬が宿」は「にんどうがやど」と読みます。
忍冬ってのはスイカズラのこと。
「忍冬が宿」は
ジェームズの叔母の甘ったるい小説を書く女性の屋敷の名前で、
マリナー氏曰く
「いやらしいあまったるい名前」
だそうですが、
実際のとこ「忍冬が宿」という字面を見ても
全然甘ったるさを感じません。
うーん。
ちなみに英名はHoneysuckleだそうで、
こちらはたしかに甘いかも。

それはそうと、
幽霊話かと思いきや、
五千ポンドの遺産がふいになった理由というミステリチックな話なのか、
それとも
屋敷で出会った美少女とのロマンスなのか
と色々と悩ませてくれる面白い作品でした。


「ささやかな人生」
釣魚亭酒場では、
ビジュー・ドリーム館でいま大会をやっている
つづき物映画「ヴェラ一代記」の話題でにぎやかだった。
映画は初日に欠かさず見てしまう
というボッスルスウェイト嬢が語った映画の内容から、
仲間の一人がやがて、
そういう話は実生活にありそうもないから好きではないと首を振った。
そこにマリナー氏が割って入った。
何が実生活の真実で、
何が真実でないかを、
限られたそれぞれの体験をもって判断するということ。
それについて、
マリナー氏の兄ウィルフレッドの話をしたいというのだ。

ウィルフレッドは幼い頃から利口で、
まだ若いうちから発明品で確乎たる評判を築いた人物だった。
しかし仕事に忙しく、
31歳になるまで色恋沙汰にまきこまれたことがないという。
そんな人物ほどほかの人間よりも激しい恋をしたりするものだが、
ウィルフレッドの場合もそうだった。
カンヌへの休暇旅行でアンジェラという女性に出会った彼は
すっかり参ってしまった。
しかし二人の結婚には問題があった。
彼女の後見人が
自分の息子と結婚させたがっているのだというのだ。
なぜなら彼女は莫大な遺産を継ぐことになっていたから。

はたして、
旅行から帰って数日後、
彼女の後見人なる人物が、
ウィルフレッドとの婚約を解消する
というアンジェラの手紙を携えて彼の元に訪れた。
しかしおいそれと納得できるものではなかった。


なんていうか、
恐ろしく古くさい挿絵にげんなりしてしまいますが、
作品自体は面白かったです。
水戸黄門のごとくにパターンが決まっていて、
しかもロマンスあり。
最後はマリナー氏の親族の誰かがハッピーエンドを迎えるというやつなんですが、
全然退屈じゃないんです。

マリナー氏ご紹介/トッパー氏の冒険 世界ユーモア文学選 筑摩書房
P・G・ウッドハウス/ソーン・スミス
(2005年8月1日)




この頃、当時の出版界も、私の読書仲間(ネット上の)も、
P・G・ウッドハウスブームでした。
「ジーヴス」シリーズが文春や国書からどんどん出版されてて、
しかももうすぐ「マリナー氏」も新訳で出ることがわかってる、
そういう時に、
フライングして(?)古いバージョンに手を出してました。

古い古いと言ってますが、
これが昔の新聞連載小説ぽい雰囲気を醸し出してて、
それはそれで味わい深かったです。

ちなみに
2007年に文芸春秋から出た「マリナー氏の冒険譚」は
読んでませんが、
内容はこんな感じらしいです。

ジョージの真相/にゅるにょろ/お母様はお喜び
アンブローズの周り道/人生の一断面
マリナー印バック-U-アッポ/主教の一手
仮装パーティの夜/アーチボルト式求愛法
マリナー一族の掟/アーチボルドと無産階級
オレンジ一個分のジュース/スタア誕生
ジョージとアルフレッド/ストリキニーネ・イン・ザ・スープ

いっぱいあるんだなぁ。
それにしても、どれが同じ作品なのか、
ほとんどわからない……。
というか、殆ど重ならない??
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 2014_11_07


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