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カレル・チャペック「絶対子工場」








カレル・チャペック「絶対子工場」
木魂社 金森誠也訳

1943年の元旦、
「MEAG企業」の社長であるG・H・ボンディ氏は、
新聞に掲載されていた一つの広告に目を留めた。

『発明』きわめて収得が多くあらゆる工場に適しているが、
個人的理由により売却する。

取るにたらない特許か、
あるいはいかさま製品か、
と読み流そうとしたボンディ氏は、その広告主の名前に驚いた。
それは工業大学で同級だった赤毛のマレクだったのだ。
彼は二十年以上会っていない旧友について思いを馳せた。
彼は天才的な頭脳を持った男だったが、
未だ大学教授にすらなっていないのならば、
きっと完全な失敗者となったのだろう。
そして、ボンディ氏は、
この失敗者となったかつての友人に手を差し伸べるつもりで、
広告主、R・マレク技師のもとへ赴いたのだった。

しかし、
ボンディ氏を待ち受けていたのは、
社会的な失敗者ではなく、
完全な発明を成し遂げた一人の技師の姿だった。
売却したいものとは、
原子エネルギーを利用する炭素原子炉の発明だという。
ひとかけらの石炭を炉に投入するだけで、
蒸気船に世界一周をさせ、
プラハ全市の照明をまかない、
大工場を操業させることができる。

ではしかし、
何故マレク技師はこの発明を手放そうというのか。
それはこの炭素原子炉の
人間に対する副次的な作用が問題だからなのだ。
原子核の分裂によって「絶対子」が放出され、
その「絶対子」の影響を受けた人間は神がかり的な境地に至るという。

ああ!
すごく面白かったです~。
そして背中がぞわぞわしっぱなし。
これが1922年に書かれているというのがまた凄いですよ。

巻末の解説によると、
アインシュタインが
「物質に内在されたエネルギーを開放することが出来れば
途方も無い力を発揮するだろう」
と発表したのは1905年だけれども、
実際に原子の核分裂反応を制御することに
成功したのは1942年なのだそうです。
1943年という、
発表当時の近未来の姿が
ここまで現実に即してるってちょっと怖いぐらいだなぁ。

以前ネットで見かけた
「絶対子工場」についての文章は
「原子力の利用に問題を投げかけ、
その恐るべき災害を予測した問題作」
なんてありましたが、
なんかちょっと違う感じ。
というよりも小説は紹介文より奇なりって感じ。
当り前か。

事業家のボンディ氏の手に渡った炭素原子炉によって、
あっという間に
絶対子は経済世界を牛耳ることになります。
ただエネルギー問題に止まらない恐ろしい暴走。
例えば
靴のびょう工場ならば、
このエネルギーを導入するやいなや
工場ラインは独自で精力的に働き始め、働き続けます。
材料の鉄の備蓄が工場から無くなれば、
なんと大地から自動的に鉄が吸いだされ、
空中を移動して
しかるべき機械の中に入っていくんです。
その工程に人の手は一切必要ありません。
でも
経済は需要と供給のバランスですよね。
昼夜分かたず次々に生産されていく「靴のびょう」は
すでに供給の幅を大きく外れてしまってます。
そして
かつて工場で働いていた人間たちが
それらを撤去するという仕事につくわけです。
イエスの奇跡の一つである魚とパンのごとく、
つぎつぎに果てしなく生れてくるありとあらゆる商品。
ああ、風刺というには恐ろしすぎる……。

そして
絶対子の影響で
人々は神のごとき悟りと超能力を得ることになります。
空中浮遊、奇跡の癒し、テレパシー、
道徳的改心あるいは回心、純粋な恍惚。
神を認識した人々で溢れかえると、
それはさぞかしユートピアっぽい世界になるのではないか、
と思えるのだけど、
やっぱ違うんですよねぇ。
その辺りの業の深さにくらくらしてしまいます。
どんどんと世界規模の恐怖の時代へと突き進んでいく物語。

ああ……。
こんなノンストップパニックホラーのごとき怖さを
ユーモアたっぷりに描いてみせるチャペックって人って……。

ところで、
G・H・ボンディ氏って「山椒魚戦争」にも登場しますよね。
そう思って「山椒魚戦争」を読み返してみると、
たしかにボンディ氏。
会社の名前がMEAGではなくてMEASなんだけどね。
(2005年6月23日)




2010年に、平凡社から
「絶対製造工場」のタイトルで改めて出てますね。
Amazonによれば、
わたしが読んだ「絶対子工場」はドイツ語からの翻訳、
「絶対製造工場」はチェコ語からの初訳だそうです。

レビュー等を読んでみた感じ、大きく違うのは、
タイトルからも判る通り、
「絶対子」が「絶対」となってること。
この「絶対」というのは、「神」とも言い換えることが出来、
実際、初期のドイツ語訳では「神様製造工場」というタイトルで
出てたこともあったとか。
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 2014_10_17


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