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ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「デイルマーク王国史4時の彼方の王冠」
創元推理文庫

ミットが北部に来て約一年。
その間彼を庇護し、教育を受けさせていた
アベラスの女伯爵から呼び出されたミットはとんでもない指令を受ける。
「唯一の者」の娘だとして
デイルマークの王になろうとしている少女ノレスを暗殺せよというのだ。
同席していたハナートのケリル伯爵に、
ミットと共に北部へ来た
ネイヴィス、ヒルディ、イネンの身の安全についてほのめかされたミットは
その命令をその場ではねつけることは出来なかった。
が、だからといって北部の伯爵の手駒となって殺人を犯すなど絶対にしたくはない。
とにかく、ミットはとりあえずアデンマウスへと向かい、
そこで親衛隊員となっていたネイヴィスと再会した。
ミットとネイヴィスはノレスの旅に同行することになる。
詩人(うたびと)へステファンとモリルと共に。

一方、彼らの時代からずっと後、
現代のデイルマークに生きる13歳の少女メイウィンは、
父親が館長を務めるタンレノス宮殿を見学中に、
父の助手ウェンドによって過去へ送り込まれてしまう。
ウェンドの話では、二百年前、
デイルマークの王となるはずだったノルスという少女に
メイウィンはそっくりだという。
しかしノルスはアデンマウスから王冠を探す旅に出たが、
途中で忽然と姿をけしてしまったのだ。
だから現在大王と呼ばれるアミルが王位につくことになったのだ、と。
そして、ウェンドは、
消えたノルスの代りにメイウィンを過去に送ってしまったのだった。
かくして、
ノルス暗殺の密命を受けたミット、ネイヴィス、
これから何をなすべきかも分らないままのノレス=メイウィン、
南部人であるミットへの嫌悪感を隠そうともしない詩人の少年モリスらは旅立ったのだった。

あ~、面白かったです。
今まで読んできた物語がすべてぴたっとこの本に集まってきたんですね。
単にオールスター登場、というのではなくて、
「デイルマーク王国史」を形作るために必要なピースがすべて集まった、
という感じ。
登場人物誰もが何か思うところがあるようで、
全然先が読めないまま、わくわくと作品の中に引きずり込んでくれました。
彼らの軽妙な会話と、
現代の日本に生きる平凡な私でもすんなりと共感できるような
彼らの心の機微も楽しいんですよね。
みんないきいきと血の通ったキャラクターなの。
結構分量のある本なんですが、途中で本を置くのが惜しいぐらい面白かった。

こうやって最終巻が出てしまうと、
その構成の上手さには感心してしまいますね。
あ~、なるほど、これがこうはまるわけか、とか。
(だからといって「呪文の織り手」をまた読み直したいとは思わなかったけど)
ははぁ、「王国史」ってのはたしかにそうだなぁとか、
いろいろと納得しきりで、
イギリスではこれが第3作の後14年も待たされたと知ると、
日本に紹介されたのがとても遅くてラッキーだったと心から思います。
14年!絶対待てないよ。
(2005年5月6日)

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 2016_05_26




ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「デイルマーク王国史3呪文の織り手」
創元推理文庫

その昔、デイルマークがまだ「川の国」と呼ばれていた頃。
川の側の緑豊かなシェリングの村は、
川を神として崇めるちいさな村だった。
が、ヒロイン、タナクィは
この寂れた村の陰気な村人たちのその信仰はまちがっていることを知っていた。
神は、「不死なる者」だけなのだ。

タナウィはクラム(二枚貝)のクロスティの四番目の子供だった。
一番上は姉のロビン(こまどり)、次が兄のガル(かもめ)、
次兄のハーン(アオサギ)、そして末の弟マラード(マガモ)、
マラードの事はみんながダックと呼んでいるが。
幼い頃に母を亡くし、タナクィは父ときょうだいたちと暮らしていた。
タナクィは機織りの娘だった。
母が幼いロビンに機織りを教え、
ロビンがタナクィにそれを教えてくれた。

ある日、馬に乗った王の使者たちが村にやってきた。
この国を攻め入ってきているヒーザン(異教徒)と闘うために、
村の男たちを集めに来たのだ。
タナクィはその時まで、自分たちに王がいることすら知らなかった。
父と長兄ガルは彼らと共に出征していく。
すぐにでも勝利を得て帰ってくるかと思われた男たちは、
長い間戻ってこなかった。
そして「川」は澱み始め、家畜や子供たちが疫病で死に始めた。
タナクィたちきょうだいの家畜は疫病にかからなかったし、
彼ら自身も疫病で命を落さなかったが、
次第にタナクィたちは追い詰められていく。
村の人々の、彼らを見る視線が厳しくなってきたのだ。
やがて、父たちと一緒に出征していたおじが、
変わり果て老人のようになって村に帰ってきた。
父は戦死し、ガルは狂人のようになりはてていた。

デイルマーク王国史の第三作は、古代を舞台にしたものです。
モリルやミットが生れるよりもずっと前、
デイルマークの初代の王が誕生するより前の物語なのです。
主人公に反感を持っても、意外に面白く読める作品もあれば、
主人公に好意が持てないというだけの理由で
作品自体が楽しめない場合がありますが、
私の場合今回は後者の方でした。
本作はヒロインのタナクィが二枚のローブに織り込んだ物語、という形式で、
ほとんどが彼女の一人称によって綴られます。
作中に何度も、「私たちは知っていた。」とか
「あとから私たちは○○した」とか「あのとき~」とかって出てくるので、
どうやらこの物語は物語の織り手であるタナウィにとって
現在進行形の物語ではないのかなって思わせる感じ。
すでにタナウィが嫌いになりかけてる私にとって、
これらの言い方は思わせぶりに感じてしまいましたが。

実はこの作品は半分ぐらいまでは読むのがしんどくてしょうがなかったんです。
どんどん物語は進行していくようなんだけど、
そのほとんどをタナウィのイライラで埋め尽くされてるから。
彼女の身に降りかかった状況は、
たしかに彼女を広い心にしておくことは出来ないだろうけど、
だからってここまで徹底的に自分以外の人間に批判的のは何故?
と思うと続きを読むのがほんとにしんどかったんです。
他のきょうだいたちもやっぱりイライラしてるんだけど、
とにかくタナウィの一人称なので、
しつこいぐらいに彼女のありとあらゆる苛立ちが織り込まれてるの。
後半ちかくなって、
だんだんと状況がタナウィにも、
そして同時に読者にも明らかになっていくと、
すこしづつ読みやすくなってきました。
最後まで読んで、あ~、なるほど、こう繋がるわけかと納得。
それにしても、
なんでこの作品から訳者さんが替ったんでしょう?

 2016_05_20




ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「デイルマーク王国史2聖なる島々へ」
創元推理文庫

海祭りの日に生まれたミットがまず耳にしたのは
両親があげた笑い声だったはずだ。
豊かではないにしろ、肥沃な小作地を与えられ、
平和な日々をすごした幼い日々は、
両親とミットの笑い声に包まれていた。
しかし、領主ハッドの課した重税のため、
まず父が出稼ぎへ出ることになった。
貧しさから、母のえくぼはいつしか深い皺へと変貌し、
そして小作地を追われた。
父の出稼ぎ先へ身を寄せた母子だが、
「ホーランドの自由の民」の一員だった父は
スパイによる密告で母子の前から姿を消すことになってしまうのだった。
かくして、幼いミットはひたすら母の笑顔を取り戻すべく働きに出て、
そしていつしか「ホーランドの自由の民」の一員として
革命に身を投じることになった。
ミットがホーランド海祭りに爆弾をしのばせて参加することになったのは、
そういったいきさつからなのだ。

デイルマーク王国史の第二作目は、
一作目とは視点を変えて
北部の海沿いの町で育つ下層階級の少年の物語です。
前作とは直接の物語のつながりはないみたいですね。

本作でちょっとびっくりしたのは、
ミッドの運命の海祭りまでの経緯がとても克明に、
シビアに描いてあること。
で、後半の海上や島での冒険に対しての比重が
なんだかアンバランスに感じてしまいました。
この後半の冒険は、
ミッドの他にヒルディとイネンっていう領主の孫が一緒なんですが、
こちらの二人のエピソードの方は
作者らしいユーモアのあるきびきびした感じなの。
ミッドやヒルディの親の描き方も
彼女らしい多面性がありましたね。

さて、第一作と本作が
今後どのように絡まっていくのか分りませんが、
続きの気になるシリーズです。
それにしても、この人の書く物語って、
辛らつで怒りっぽくて気位の高い女の子と、
芯は強いけどナイーブな弟(または弟分)
+彼らよりちょっと年長の少年という
パターンが多いなぁって気がします。
作品によって、
主人公が女の子だったり、弟分の方だったり、
年長の少年だったりするんだけど。

 2016_05_19




ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「デイルマーク王国史1詩人たちの旅」
創元推理文庫

町から町へ派手な馬車で旅をしながら
楽器を奏で詩を吟じ歌を歌う吟遊詩人。
モリルは吟遊詩人クレネンの次男で、
両親と兄姉と共に、物心ついたときからずっと旅の生活をしていた。
 クレネンが見知らぬ少年キアランを馬車に乗せた時から、
一家の過酷な運命が動き始める。
身なりのいい男たちに突然襲われて父クレネンが死に、
母はかつての婚約者の元に子供たちを連れて身を寄せることになった。
しかし、そこに父を襲った男の一人の姿を見つけたモリルたちは
母を残して北へ向って出奔する。
父の遺した頼み、
それはキアランを北へ連れて行くということだったのだ。

先王亡き後、王が不在の王国となったデイルマーク。
最後の王が北部ハナートで治世を敷く以前から
国の北部と南部とは強く敵対していたが、
王亡き後はそれがますます熾烈になっていた。
現ハナート伯爵は王座につくつもりはないと公言していたが、
南部の伯爵たちは北部が陰謀をめぐらせていると考え、
また北部のものたちは南部は不当に圧政をしいていると見ていた。
今では国中を自由に行き来することは出来ず、
通行証を持ったもの、一部の行商人や詩人(うたびと)たちのみだけが
それを許されていた。
クレネンの馬車に乗り込んだキアラン少年も、
そういった理由でこの詩人に紛れて南部から北部へ移動する予定だったのだった。

面白かったです~。
「王国史」なんてあるから、もうちょっと大局的というか政治的というか、
そういう視点で語られるのか、
とかいっぱい登場人物が出てきて混乱するんじゃないかと思ってましたが、
本書はモリルという吟遊詩人の息子が主役で、
この物語のすべてが彼の半径の中での出来事なので、
とても身近で分かり易いの。
展開もスピーディで気持よくさくさくと読めます。

モリルが傍目からはちょっととろい感じのいつも眠そうな少年、
というのはまあお約束みたいなものだけど、
むかついたりぐずぐずしたり、なんかとても自然な感じ。
死後に分る父クレネンの素顔とか、母の素顔の一端も、
ダイアナ・ウィン・ジョーンズらしい見せ方だなぁって思います。
シリーズの第一作ですが、
本作だけでも楽しめるような完結した物語っぽいですね。
既に第四作まで出てるみたいですが、第二作目を読むのが楽しみです。

 2016_05_18




ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「グリフィンの年」
創元推理文庫

「ダークホルムの闇の君」の続編にあたる
ドタバタコメディタッチのファンタジーです。

前作の大団円からはや8年。
ダークホルムの日々の生活もほぼ平穏に…と、
いいたい所ですが騒動の種は思わぬところから芽を出し始めます。
大学総長のケリーダをはじめとした年かさの魔術師たちが現役を退き、
コーコランをはじめとした若い魔術師たちに任された魔術師大学ですが、
その内情は火の車。
早い話が経営難なんです。
全学生の親に寄附を募ろうと考えた大学でしたが、
これが事件の引き金を引いてしまうのでした。

魔術師大学の運営委員長でもあるコーコランが受け持った
6人(人でいいのか?)の新入生はみんな
それぞれ事情を抱えた問題児ばかりなのです。
前作で大活躍した著名な魔術師ダークの娘エルダは、
なんと特大の農耕馬ぐらいの大きさのグリフィン。
北の王国ルテリアの皇太子ルーキンは超貧乏な上に、
国王に内緒で入学、「穴」に関する魔法の大きな欠点持ち。
高価な装束を身にまとった、
しかし絶対に自分の素性を明かそうとしない少女オルガ、
東方の首長国からやってきた、ばれると刺客が送られてくるというフェリム、
南の皇帝の異母妹クラウディアは魔法に「くせ」があるという。
そして、エルダ同様に大学始まって以来の入学生となるラスキンは、
中央連邦砦出身の「ドワーフ」で、
鍛治元の圧制に苦しめられる奴隷の革命家なのです。

ふふっ。すごく面白かったです。
大学を舞台にしたドタバタ喜劇なんですが、
登場するキャラクターがみんな生き生きと
物語の中を駆け回ってて魅力的なんですよね。
ありとあらゆるトラブルをごったまぜにして大学にぶちまけておきながら、
その捌き方のうまいこと。いや、面白かったです。
単純にただただ楽しく読める本って、
ちょっと希少価値かもって思ってしまいました。

舞台と時間軸は同じだけど、
前作とは全く違った物語となっている本書ですが、
エルダ以外のダークの娘や息子たちも登場しますので、
お楽しみに。(あ、全員大活躍、ではないですが)
(2003年9月5日)

 2016_05_17




ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「ダークホルムの闇の君」
創元推理文庫

この作品は、「ダークホルム二部作」の第一弾なのだそうです。
と、言ってもこれはこれできっちり完結しますのでご安心を。
舞台になるダークホルムは、
当たり前のように魔術師がいて、騎士がいて、
エルフやドワーフや龍などがいるという世界です。
中世ヨーロッパをベースにしたような雰囲気はファンタジーではおなじみですね。
あと魔術師や詩人(吟遊詩人ってやつね)などが徒弟制度じゃなくて、
大学で養成されるといった、
妙にシステム化された世界なのはDWJっぽいです。

さて、物語は
その魔術師を養成する大学の一室で行われている「緊急事態委員会」での
喧喧諤諤の会議のシーンから始まります。
その議題は、ダークホルムを蝕む「チェズニー氏の巡礼観光会」について、
今年はどうしよう……
というもの。

ダークホルムでは40年前から毎年、
ダークホルムとは別の世界の資本家チェズニー氏の観光会に悩まされてきました。
それは強い力を持った魔物に守られた契約で、
むこうの世界から「巡礼団」が大挙して
ダークホルムにやってくるのを迎えるというもの。
単に異世界を観光して回る人々を熱烈歓迎!すればいい
のではないのがまた困ったところで、
この巡礼団はダークホルムのすみずみを旅し、
魔術師に先導されながら、
予言者や吟遊詩人、悪い王様や盗賊、魔物などに出会い、
様々な危難に遭遇したのち、
遂には悪の化身・闇の君を倒して、
大満足でむこうの世界へ帰還する…という筋立てなんです。
ダークホルムの人々は、このシナリオ通りに進行させなくてはならないの。
巡礼団の時期になると、ほとんどすべての人が通常生活を送れなくなって、
非常に迷惑なだけでなく、
巡礼団の人間たちは往々にして町を破壊し動物や人まで殺すので、
プライドはボロボロ、町は財政困難に陥る……という訳です。
魔術師大学総長のケリーダの元には、
怒り心頭の人々からの苦情や嘆願書が山ほど舞い込んで来ています。

そして、この会議の席で、
ケリーダは「巡礼観光会を終わらせる」と宣言しますが、
その方法は思いつきません。
とりあえず今年の「闇の君」を神託によって選出することにする一同。
ところがこの神託によって選ばれたのは、
動物に関する魔法はピカイチだけど、
それ以外は…というちょっと…いや、かなりの変人で有名なダーク魔術師だったのです。

「闇の君」は、巡礼団にとっての悪の化身、
ラスボスとしての存在だけではなく、
この企画の総責任者でもある上に、
今回はなんとかしてこのばかげた観光会をやめさせるという悲願があるのに、
ダークが闇の君で大丈夫なんだろうか、
と暗澹たる気持に襲われる一同でした。
暗澹たる気持に襲われたのはダークも同様。
とはいえ神託には逆らえません。
かくして妻、一男一女五グリフィンの彼の家族と、
彼が所有する多くの動物たちを巻き込んで、
ドタバタと物語がスタートするのでした。

面白かったです♪ 
語り口が軽くて、ドタバタいっぱいの
コメディタッチで物語は進行するんですが、
そこはDWJのこと。
辛口でヘビーなテーマが横たわっております。
それにしても家族の中のグリフィンたちのキュートだったこと。
彼らは、「家族同様」ではなくて、
実際に「家族」なんです。
ダークが様々な動物と自分たち夫婦の遺伝子を使って作り出したものだから。
と、言っても、
心から愛し合ってる家族なんですよ。
このダークさんちの、
人間、グリフィン、
そしてダークが一味加えたさまざまな動物たちが
織り成す家族愛がまたいいんですよ。
大怪我から復活したダークに集まってくるダークさんちの豚たち、
もうあそこでキューンとしたっきり、
戻って来れませんでした。
思春期を迎えた子供たち(人間もグリフィンも)の成長の
様々な揺らぎや痛みも読ませてくれます。

巡礼団についてですが、
これって、私達が楽しんでるRPGを揶揄してるようにも思えたりしました。
冒険を楽しんでるパーティの陰には
こういうしんどい異世界の人々のご苦労が、
と思うと、
旅の途中で出会う町の人達やモンスターに無体なことは出来ませんね。
って、違うか?
(2002年10月31日)

 2016_05_15




ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「九年目の魔法」
創元推理文庫

19才のポーリィは、壁の写真や愛読していた本が、
どこか記憶にあるはずのものと食い違っているのに気づきます。
まるで夢と現実が二重写しになっているかのような違和感。
九年前、十歳のときに起こった出来事。
ポーリィは、その日、
大きな屋敷の葬式にまぎれこんだ時のことから思い返し始めます……。

そこで出会った謎の青年リンさんと彼女の少女時代。
記憶の中の過去と、
現実での周囲の人達が記憶する過去とが食い違う奇妙さに、
読者である自分もポーリィともども不安が募ります。
読み返して初めて気がついた「しかけ」などもあったりして、
これは一筋縄では行かないファンタジーです。
ラスト近くなるまで、魔法の気配はするのに、
はっきり姿をあらわさない。
この思わせぶりなとこが魅力の一つかも。


ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「わたしが幽霊だったとき」
創元推理文庫

物語のヒロインであるサリーがいきなり幽霊、
というちょっとびっくりするような物語。
突然幽霊になってしまったサリーには、
はじめのうちは記憶がありません。
何故「わたし」が死んでしまうことになったのか……。
風に流されるようにふらふらと漂うサリーは、
見覚えのある場所に出ます。
そこは寄宿制男子校。

そこから徐々に、
でも順々にではなく記憶が戻ってくるんですが、
これがまたくらくらするような思い出し方なんですよね。
今なら、
つまりダイアナ・ウィン・ジョーンズの作風を知った後ならば、
ちょっと納得して読めそうなんだけど、
初めて読んだときはとにかく面食らっておりましたよ。ホント。
カート、イモジェン、フェネラってサリーの姉妹がまた
キツイキャラクターなんですよね。
姉妹げんかの描写がまた……。
とにかく少女たちの描写が瑞々しいというか汗臭いというか、
女性の筆ならではの描写という感じがひしひしとしました。




今日からしばらくダイアナ・ウィン・ジョーンズの本の感想。
今日アップしたものは、2001年以前に読んだものを、
当時のサイトに載せるために改めて書いた感想文になります。

 2016_05_13




クライヴ・ウッドオール「キリック 翼の冒険者」
ソニー・マガジンズ

<鳥王国(バードダム)>は今危機に瀕していた。
ここ数ヶ月の間、残忍なカササギが小鳥たちを情け容赦なく襲撃し、
多くの鳥たちが絶滅してしまった。
スズメ、ツグミ、クロウタドリ。
そしてコマドリの生き残りはキリック一羽だけになっていた。
最愛の恋人セリーヌも殺されてしまった。
何故自分だけが生き残ったのだろう。
キリックはしつこく襲ってくるカササギたちから逃れることが出来たが、
この悪夢から逃げ出せるとは思えなかった。

タングルウッドの老フクロウ、トマーのもとを訪ねたキリックは、
ある重要な任務を与えられる。
残忍で凶悪なカササギたちによる
バードダムの消滅を防ぐために立てたトマーの計画を助ける大切な任務なのだ。
それは小さな一羽のコマドリには荷が重過ぎる旅を強いるものだが、
バードダムの未来を背負ってキリックは旅立った。

うん、読んでおいてこんな風に言うのはヘンですが、
思いがけなく面白かったです。
かつて「フクロウ委員会」によって平和が維持されていたバードダム。
そのフクロウ委員会の現在の長”偉大なるフクロウ”であるセリバルに近づき、
この賢者から国中のあらゆる鳥の知識、
彼らの住処や弱点などを聞き出したカササギがいたんです。
そのカササギの名前はスライキン。
スライキンは体こそ小さいものの、
残忍な心と極めて高い知能、卑劣さ、凶暴性を持ったカササギで、
彼はまたたく間にカササギのトップに立ち、
セリバルから得た知識を駆使して他の鳥たちを襲っていくの。
セリバルはまんまと騙された己を恥じ、
そのままフクロウ委員会は会議に集まることがなくなって、
冒頭のあらすじの時点へ続くわけです。
もうこの時点でバードダムはぼろぼろ。
殆んどの小鳥たちは絶滅し、渡り鳥たちは飛び去り、
残った鳥たちも憂慮しつつ息を潜めて暮らすような毎日。

で、
ずっとこのスライキン率いるカササギたちの暴走を止めたいと考え続けてきたトマーは、
小さなキリックが今までなんとか生き延びて、
フクロウである自分の前に畏れる事なく姿を現したのを見て、
彼こそが自分の計画を遂行してくれるヒーローだ!と考えるの。
旅立ったキリックですが、
こちらにはトラスカという一匹の残忍なカササギが
しつように追ってきます。
コマドリの最後の一羽であるキリックを殺すこと、
これが彼の任務であり、残忍な心の喜びなの。

「勇気と友情の動物ファンタジー」なんて言っても、
爽やかで可愛らしいものとはちと違います。
スライキンとトラスカ。
この二羽のカササギの異常な残忍さが、
これがまた非常に生々しく迫ってくるんですよね。

スピーディな展開の中で
何度も危機を乗り越えながら旅を続ける
というキリックの冒険物語に終らない、
ドラマチックな心理描写が良いですねぇ。

ディズニーがいちはやく映画権をゲットしたということですが、
2時間弱のアニメの中に納まりきるとは思えないなぁ、この面白さ。
児童文学の範疇にあるようですが、
大人も充分に楽しめる動物ファンタジーではないかと思います。
(2005年7月1日)

 2016_05_07




パウロ・コエーリョ「11分間」
角川書店

あるところに、マリーアという売春婦がいた。
ブラジルの片田舎に生まれ育ったマリーアは、
自分が美しいことを自覚した少女だった。
高校を卒業して、洋裁生地の小売店で働きだした彼女は、
その店の店主が彼女に恋心を抱いているのも知っていた。
しかし、同意にマリーアの母のアドバイスも忘れてはいなかった。
「いい?美しさは長続きしないのよ。」
この言葉のおかげで、
彼女は店主に「いつか彼女と」と夢を見させながら、
その期待だけで給料を上げさせ、
さらに時間外勤務の手当までもらえるようになった。
そして2年後、
休暇を利用し、
貯めたお金で憧れだった町、リオ・デ・ジャネイロに行くことにした。
夢見がちで世間知らずのマリーアは、
そこでスイスの芸能プロデューサーにだまされて、
スイスの家族向けの歓楽街のダンサーとして働くはめになってしまうのだった。
言葉も通じない、寒い異国で、
彼女の世話を任された同じブラジル人の若い女はマリーアに言う。
「ここにいる女の子たちはみんな、三つのどれかを探しているのよ」
冒険・お金・結婚相手。
マリーアもそれを探していたが、
ここでそのどれかを見つけるのは大変そうだった。

タイトルの「11分間」とは、
娼婦として働き出したマリーアが計算したセックスに要する時間。
意味のない会話やダンス、服を脱いだり着たりの時間を除いた
正味の時間はたった11分間で足りるのだと考えるんです。
まあ、これは娼婦としての時間なんだけれど。
あっけらかんとスイスに渡り、
ダンサーから娼婦へと転身していくマリーアのしたたかさやドライさ。
その影に隠れたナイーヴで純粋な魂がほんわりと心を打ちました。

深く突っ込んだ哲学的会話や
ストレートな性描写もあるのに、
読後感は不思議にやさしくて、
大人のためのおとぎばなしのような感じを受けました。
(2005年5月12日)

 2016_05_06




パウロ・コエーリョ「悪魔とプリン嬢」
角川書店

ふふっ。面白かったです。
山間の小さな町ヴィスコスに、
悪霊に取り付かれた一人の旅人がやってきます。
彼は、
人口300人足らず、若者はほとんど出ていってしまった
寂れるばかりの田舎町で、
ある恐るべき考えを試そうとしています。

持ってきた地金11枚を、
町のホテルで働く町唯一の若者である
シャンタール・プリン嬢に見せてこう告げます。
「一枚はここに埋めたままにしておく。
ここに金があることを知っているのは私と君だけ。
これがあれば君は自由に人生を謳歌できる。
盗もうと思えば盗める。
君は『汝、盗むべからず』の戒を犯すだろうか?
残り十枚の地金は、
これから私しか知らない別の場所に隠しておくが、
君はこれから町へ戻って、町の人たちにこう告げて欲しい。
一週間の期限の内で、町の誰かが死体になったら、
その十枚の金は町の人に差し上げる。
この金があれば町の住人全員が働かずに食べて行ける。
『汝、殺すべからず』の戒を破るだろうか?」

いや~、スリリングでした。
端的に言えば「善と悪の戦い」なんですが、
一方が善、一方が悪という図式には終らないんですよね。
ああ~結局どうなっちゃうんだろうって、
めちゃハラハラさせられました。
寓話的な物語ではあるけど、勧善懲悪の物語でもないので、
面白かったですね。
プリン嬢の苦悩がすっごく等身大でそこも良かったです。
(2002年11月23日)

 2016_05_05




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Sima

Author:Sima
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