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V・C・アンドリュース「屋根裏部屋の花たち」
扶桑社ミステリー

アンドリュースの作品の多くは未読なんですが、
この「屋根裏部屋の花たち」以下の
ドーランギャンガー・シリーズだけはしっかり読みました。
とにかく最初の「屋根裏部屋の花たち」がショッキングなので、
熱に浮かされたように読みまくっていたのでした。
私の記憶が確かならば、
同じシリーズなのに訳者が違う作品があったように思います。

舞台は1950年代のアメリカ。
優しい両親と美しい子供たち。
何不自由のない中産階級の家庭で
のびのびと育ったキャシーたち兄弟の暮らしは、
突然の父の死によって、恐るべき変貌を遂げます。
子供を連れて実家へ戻った母は、
祖父母のいいなりのお人形と化してしまい、
兄クリスとキャシー、幼い双子の妹と弟は
屋根裏で息を殺して生活しなければならなくなってしまったのでした。

この第1作目は、
屋根裏で暮らす恐るべき日々が克明に描かれています。




この第一作だけで、
残りの、ある意味よりえぐくなる展開を無しにしても
十分楽しめる
というか、その方がきっといい……
そう思ったりします。
そういえば映画化もされてますね。
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 2015_11_27



シオドア・スタージョン「空は船でいっぱい」
ハヤカワ文庫 「空は船でいっぱい SFマガジン・ベスト2」収録

サイクスが死に、
それから二年してゴードン・ケンプが探し出され、
アリゾナの田舎町スイッチバスへ連れ戻された。
彼こそが老サイクスの死の真相を知っている男だからだ。
農協ホールの中の法廷に引き出されたケンプは、
サイクスの死について語り始めた。
ある日の午後、ケンプの仕事場にやってきたサイクスは、
ケンプの発明したトーチランプに非常に興味を持っている様子だった。
それは、
雑誌で300年先のトーチランプ、濃縮原子トーチランプと書かれたことのある、
ケンプ自身に言わせれば「ごくあたりまえの」水素原子トーチランプだった。
サイクスは、ケンプにそのトーチランプを持って、
一緒にアリゾナのあるほら穴へ来て欲しいと頼んだ。
報酬は5千ドル。
もちろんケンプはその話を飲んだ。
二人でアリゾナへ向う途中、
老サイクスはとうとうと自分の研究について語り続けた。
ほら穴の中で偶然サイクスが発見した、
人類よりも以前からあったという品物。
それはサイクスの研究によると記録と送信のための機械らしいというのだ。

最後の一行でやっとタイトルの意味が分るという仕掛けのSFです。
埃っぽい田舎町の雰囲気も存分に楽しめる作品でした。


シオドア・スタージョン「シェイユートの保安官」
早川書房 「ミステリマガジン2004年2月号」収録

鉄道が敷かれ、
たくさんの畜牛が貨車に乗せられて市場へ出ていくようになった。
しかし今でも、
この片田舎の町シェイユートから四十マイル以内には
鉄道が敷かれていなかった。
鉄道を望む町の住民たちの声はあったが、
そうなるとカウボーイたちによる牛の大移動はなくなってしまう。
牛の大移動は、両替屋や酒場、そのほかいくつかの場所では
とてもありがたいものなのだ。
エヴ・チャージャーはカウボーイ上がりの保安官だ。
今夜シェイユートの町の酒場に現われた荒くれ者ぞろいのシャッド一家は、
チャージャーのかつての仲間たちなのだ。

これはスタージョンによるウェスタン小説です。
うーん、この多才さには参ってしまいますよね。
そうか、ウェスタンか……。
さて、
チャージャー保安官が目を光らせているシェイユートに
現われたカウボーイたちは、
酒場でけんか騒ぎを起こしかけたり、
卑猥な歌で近所のおばあさんに不快な思いをさせたりしていましたが、
まあその辺りは保安官の想定の範囲内での出来事。
しかし、町一番の美少女をめぐって、
シャッドの息子と少女の父親の対立
という事件が起こってしまいます……。

埃っぽい西部の田舎町の雰囲気と、
ざらりと砂交じりの荒っぽい情がなかなかいい感じの短篇でした。

 2015_11_26




シオドア・スタージョン「輝く断片」
河出書房新社

「取り替え子」
「いまから八日以内に赤ん坊をつくらなきゃ」
ショーティとマイクルは焦っていた。
ショーティの伯母のアマンダの残した3万ドルの遺産を受け取るためには、
伯母の妹ジョンクィルに、
赤ん坊の面倒を見られることという
遺産を貰うに相応しい人間であることを証明しなければならない。
どこかで早急に赤ん坊を調達してきて、
ジョンクィル伯母さんの目の前で、
三十日間その赤ん坊の面倒をカップルの独力で見なければならないのだ。
養子をもらうには時間がかかりすぎる。
誘拐という案には法律と言う壁がある。
二人の子供が出来るまで待つ?とんでもない。
切羽詰ったカップルの前に、突然赤ん坊が現われた。
しかし、その赤ん坊は、ただの赤ん坊ではなかった……。

いきなり面白かったですね。
コメディタッチで語られる、この遺産相続作戦ですが、
カップルのために一肌脱ぐことになった謎の赤ん坊は、
実は中年の男のような口をきき、レアステーキをほおばる……
取り替え子だったのです。
妖精譚にユーモアとホラーをあわせた味わいは、
あ~スタージョンの力技だなと実感。

「ミドリザルとの情事」
「いったいどうしてこんな目にあったのかしら」
「ミドリザルだよ」
フリッツとアルマ夫婦は、ある日曜の夜の散歩で一人の男を拾う。
ちんぴらの一団に半殺しの目に会わされていたのを助けたのだ。
フリッツは元看護婦のアルマにその男の世話をするように言いつけ、
ワシントンに仕事に出掛けてしまった。
見知らぬ男と二人っきりで過すことに不安を覚えるアルマだが、
フリッツはそれを笑い飛ばした。
病院に入院させずに、アルマに世話をさせ、
体の具合がよくなったらフリッツ自ら男に話をして力になってやりたいという。

アメリカン・マッチョ・ドリームを体現したようなフリッツにモゾモゾ。
「ミドリザル」とは、
野生の猿に緑色を塗って群れに放すと、
他の猿によってたかってかみ殺される
というフリッツの話から出た言葉ですが、
訳知り顔のフリッツが一番理解できない存在ですねぇ。うへー。

ところで、実は私は、この作品の落ちがよく分らなくて、
つい二度も三度も読み返してしまいました。

「旅する巌」
ニックは作家のエージェント。
その彼の抱えるクライアントの作家シグ・ワイスは、
処女作「旅する巌」で
誰もが夢見る作家としての理想的なデビューを果たした。
が、ここにきてニックは頭を抱えていた。
次回作の原稿の注文が殺到し、
ニックはワイスにあらゆる手段で連絡を取ろうとしたのだが、
まったく音沙汰がないのだ。
業を煮やしたニックはワイスの自宅まで押しかけた。
しかし彼を出迎えたのは岩塩を詰めたショットガンと
荒っぽく無愛想な態度だった。
処女短編「旅する巌」に満ちていたやさしさ、純粋な人間性と、
目の前の男とのギャップに戸惑いを隠せないニック。
そして、その面会からしばらくしてワイスから送られてきた作品は、
はっきり言って駄作だった。
ニックと、同僚のネイオーミは、
シグ・ワイスという作家のこの二作のギャップを、
何故か「一発屋」として片付けられなくて……。
これは、とりあえず安心して「SFですね」と言える作品。
って、別にそんな宣言はしなくてもいいんだけれども。
登場人物がみんな人間的な魅力にあふれてました。
上等とは言い難いSF部分と、
魅力的な人間ドラマのミスマッチが味を出してますよね。

「君微笑めば」
男は二十年ぶりにかつての同級生に偶然出会う。
しょぼくれた冴えない男ヘンリー。
男は、ヘンリーならば、あの秘密を話してやってもいいという気になった。
何故ならヘンリーは田舎くさくてしょぼくれていて愚鈍で、
そう、一般的な人間の勘定にも入らないからだ。
しり込みするヘンリーを半ば強引に酒場に連れて行って、
男は機嫌よく、そして根気良くヘンリーに自分のことや
ヘンリー自身のことを語り続ける。
さらに自宅へ誘い、
そこで男はヘンリーに秘密のファイルを見せた……。

主人公の男の饒舌ぶりが、落ちに到って強烈な皮肉に変る。
だらだらと続いた男の語りが、鮮やかに転換されるところが爽快かも。

「ニュースの時間です」
マクライルはごくごく一般的な男であり、夫であり、父親だった。
しかし一つだけ、奇妙な日課があった。
それはニュース。
毎朝八時十四分に朝刊を読み、午後六時十分に夕刊を読み、
夕食後の四十分を費やして地元紙に目を通す。
そして、三つのラジオ局が毎時ちょうど、あるいは毎時半に、
または毎時五十五分に流す五分間のニュースを聞く。
テレビでも、2チャンネルの七時半、
4チャンネルの七時四十五分のニュースを見た。
その間は誰に話しかけられても返事もしないでニュースに没頭している。
それ以外の生活については、
ものの道理をわきまえた、朗らかな男だったが、
妻エスターは年月を経るごとに
マクライルのこの日課が気に障って仕方がなくなってきた。
そして、とうとうテレビもラジオも壊して、
夫からニュースを取り上げるという挙に出た。
しかし、それでエスターが得たのは夫の失踪という事実だけだった……。

失踪までの話に対して、
失踪後の話がやや唐突な展開かなぁと思っちゃうけど、
さりげなく書かれた最後の一文が、
あとからじわじわ怖さを呼びます。
あとがきを読むと、
どうもこの作品はハインラインがネタを提供したのだそうで。
映画のノベライズあり、有名ミステリ作家の代作(?)あり、
と作家なのに拘りがないらしいスタージョンらしいエピソードではないですか。

「マエストロを殺せ」
おいらはラッチ・クロウフォードをとうとう殺した。
前にも二度試したけど、一度目はかしこくやってしくじった。
二度目はこずるくやってしくじった。
でもとうとうやりとげた。ラッチは死んだ。
ラッチのすべて、その音楽のすべて、ラッチの……ラッチの……。

粘着的なフルークの独白によるミステリ。
異形、バンドの中で渦巻く愛憎と音楽に対する確かな耳。
なんというか、ラストの怖さと、
哀愁というには泥だらけすぎる痛ましさへの視線が
とてもスタージョンっぽい味わい。

「ルウェリンの犯罪」
病院の無料クリニックの事務手続きという
つまらない仕事についているルウェリン。
小柄で小太りで、頭も良くなく、男らしい覇気がない。
それはルウェリンのコンプレックスだった。
しかし、週明けの職場で同僚たちが交す武勇伝
(それはルウェリンには思いつくことも出来ないような軽薄な不貞)
を耳にする時、ひそかにほくそえんでいた。
この19年という間、アイヴィという女と同棲しているのだ。
誰にも言わないけれど、
これがルウェリンのだれよりも罪深いと自負する由縁だった。
しかし、ある日ルウェリンの世界が音を立てて崩壊する。
アイヴィから、
実は19年前に二人は結婚していたのだと告げられたのだ……。

うわ~。目眩がするほど悲惨な話です。
真面目に働くことしか出来ない、
独力での生活能力に欠けた男の「男として」のよりどころは、
誰にも言わない罪を背負っているということ。
だけど、どうあがいてもそれを叶えられる事はなくて。
これって悲劇?喜劇?どっちにしろイタイ話ではあります。
イタイといえば、なにげにアイヴィって女もイタイ人ですねぇ。

「輝く断片」
ある雨の夜、男は瀕死の女を拾ってくる。
ひどい傷、ひどい出血だったが、
男は自分のアパートで女の傷口を縫い、必死に看病する。
今まで男は女性と関わったこともなかったし、
どこへ行っても「用なし」と言われた。
しかし、今男は、用なしではない。
死に掛けた女のために力を尽しているのだ。
いや、それは女のために、ではないのかもしれない。
大切なのは、
女が死ぬとまた自分が「用なし」になるということなのだ。
女は次第に回復していく。
男はそれが楽しかった。しかし……。

いやっ!
痛い話を聞いたり読んだりするの苦手なんです。
許してください……
と思うぐらい細かな傷やその治療の描写にいきなり泣きそう。
でも何度も休憩しながら読み進んでしまうのは、
圧倒的な迫力からだったのでしょうか。
しかし、スプラッタホラーは全然平気だけど、
この描写は生理的にダメというのは、
やっぱり「さすが」というべきなのかしら。

後半の三篇はどれも異常心理を描いたもの。
それも、
フリークス的で社会的に認めらていないような男たちの
孤独な心に巣食う異常心理。
社会的に受け入れられたいと望む心が生む歪みが痛々しくて辛いですね。
それを、糾弾するでもなく、同情的にでもなく
描いてみせるスタージョンのまなざしにはもう脱帽です。
それ以外の作品も、もちろん魅力的なのだけど、
全編を読んでしまうとやっぱりこれらの三篇に対して
前菜的な色合いになってしまうのは仕方ないかな。
というぐらい強力な作品でした。
(2005年7月15日)

 2015_11_25




シオドア・スタージョン「ヴィーナス・プラスX」
国書刊行会

「ぼくは火星にいるんだ」
チャーリー・ジョンズは震える声で言った。
冗談めかして口にしたつもりが、惨めなぐらい怯えて聞こえる。

27歳の平凡な青年だったチャーリー・ジョンズは、
ある日突然見知らぬ世界で目を覚ました。
そこは「レダム」という不思議な世界。
高度な文明と清潔な世界。
人々は農業と手工業を守った堅実な生活をしており、
子供たちはその未来ゆえにレダム人から崇拝される。
そして何よりレダムがチャーリーの知っている世界と異なっていたのは、
彼らレダム人が完全な両性具有であることだった。
私たちの文化を評価してほしい、
全てを見終えて評価を下した後は元の世界へ送り返す、
という彼ら。
チャーリーは彼らに導かれるままレダムの世界を見聞きしていくが……。

ふむ……。
面白かった、
けど何やらスタージョンにいいようにからかわれただけのような
不思議な気持が残るのは何だろう?
チャーリー・ジョンズが連れてこられたレダムという不思議な世界。
そこは末来の地球で、ホモ・サピエンスはすでに絶滅しているという。
そして、レダム人は何と両性具有。
そんな世界の物語と、
現代(発表当時の、ね)アメリカの平凡な一家庭の描写が
交互に語られるんだけど、
これが、
全然関係ないようで、妙に呼応してるんですよね。
レダムに連れてこられたばかりで
何もわからなくて混乱しているチャーリーが、
次第にレダムについて知識を得て、
少しずつそこを理想郷のように感じる頃、
現代アメリカでは、
なんだか男の持つ女性観って何だろなぁ
という気持にさせられるような情景が繰り広げられる、などなど。
それぞれのストーリーを茶化してまぜっかえすような感じですかねぇ。

語りたい事を書いちゃうと
中盤以降のストーリーに抵触してしまうので、
語れないのが残念。
いっぱいいっぱいいろんなことを感じて、
むむっとなったり、うへっっと思ったり、した訳です。
しかし、後半あちこち引っ繰り返されて、
ゆっくり展開を驚くひまもないのねぇ。
かくして私の感想は
はじめの方に書いた「ふむ……。」へと戻っていくのでした。

ただ、忘れちゃいけないのが、
これが書かれたのが今を遡ること40年以上ということですよね。
ジェンダー論についてはあまりよく知らないけれど、
そのハシリの頃に発表された作品だと思うと、
それだけで何だかスゴイと思ってしまいます。
時代を激しく感じさせる、というような雰囲気はなくって、
もっと普遍性のある面白さがありますし。

これはスタージョンの傑作長編!というほどスゴイか、
というとちょっと違う気がするんですが、
まあそういう比較を無しにすると、
かなり面白く、楽しんで読める作品でした。
(2005年6月11日)

 2015_11_24




シオドア・スタージョン「不思議のひと触れ」
河出書房新社

本書は、大森望氏の編んだスタージョンの短編集です。
既訳、未訳の作ともに、新訳で納められています。

「高額保険」は、スタージョンの作家歴第一号の作品なのだとか。
この、わずか4ページの短い掌編の切れ味のよさは魅力的。
「もうひとりのシーリア」は、過去数度邦訳された作品です。
他人の机の引き出しや冷蔵庫を覗かずにはおれない性癖をもつ大男スリム。
秘密を暴くとかそういう含みは何もなく、
ただその行為が好きで日々技術に磨きをかけているのです。
そのスリムのアパートに新しい住人がやってきます。
シーリアというその住人の部屋をさっそく覗くスリムですが予想外の展開に…。
ラスト二行のドライさがしびれます。
「影よ、影よ、影の国」は、幼い少年と継母を描いた、
怖いようなほっとするようなむずがゆさがたまらない作品。
月の光と影の織りなす描写の美しさと、少年のこの邪鬼の無さ。
「裏庭の神様」はどうしても小さな嘘をついてしまう男の物語。
その嘘で妻の不興を買った男が自宅裏庭で掘り出したのは、
自らを神だと名乗る奇妙な偶像だった……という物語です。
ユーモアの効いた大人のファンタジーというところでしょうか。

「不思議のひと触れ」はとにかくイメージの美しい短編でした。
「ぶわん・ばっ!」は一人のドラムマンの語る物語。
「一流バンドでタイコを叩くにはどうすればいいかだって?」
語り口調にリズムがあって、ほれぼれするようなかっこよさ。
でもひらがなの擬音ってどうも間が抜けてるなぁ…。

「タンディの物語」、これは本書で私が一番好きな作品です。
四人きょうだい、といっても一番下は数に入らない。
タンディは5歳にして、自分の置かれている状況を自覚していた。
タンディより2歳上の兄ロビンは
兄として彼女を好きなように小突き回すことが出来る。
3歳下の妹ノエルは家族の「かわいいベビー」の座に居座っている。
だからタンディが出来ることは、
声を限りに助けを求めることなのだ。
まさに中間子症候群。
度を越したエキセントリックさと、知的な天賦を持つタンディは、
幼稚園でも、他人の注目を集めるために独特の手を使い、
両親をなやませていた。
ある頃からタンディは
ブラウニーという雨ざらしになっていたくまのぬいぐるみを偏愛するようになる。
そして……。
じわっと背中が冷たくなるような怖いSF短編です。
ブラッドベリの地下室にも似たようなのがいたよなぁと思いながら、
いや、こっちの方が後味が怖いなと。

「閉所愛好症」も印象的なSF短編でした。
下宿を営む母親と二人暮しのクリスは
内向的なコンピュータ技師の青年。
明るくて何事も積極的な大男の弟ビリーは宇宙士官候補生で、
休暇に帰省してきたばかり。
クリスはビリーに対して微妙な感情を抱きつつも
それを認めたくない感じ。
今また、帰って来るなりクリスの彼女(候補?)のテスを
あっさりデートに誘うことに成功した。
やりきれないけど何もいえない、
そんなクリスの前に現われたのは、
新しい下宿人ガーダ・スタインだった。

「雷と薔薇」は、人類の終末を描いたSF短編。
西から東から、一気に多くの原子爆弾を投下されたこの国は、
今急速に死に向っていた。
すでにほとんどの国民が死に、生き残った者の命もそう長くはない。
そして、この国以外の国も、
その後ゆっくりと死に絶えていくしかないのだ。
まだ辛うじて生きている都市に、スター・アンシアが訪れた。
かつての歌姫は、今のこの国の最後の光のような存在だ。
一介の軍人ピートは、TVの中のスターの歌に驚きを隠せなかった。
スターのメッセージ、それは……。
もう誰も救うことの出来ない終末の世界を描いて、
緊迫感と美しい詩情が共存してる作品でした。

「孤独の円盤」は、
もう一つの「不思議のひと触れ」という感じでしょうか。
円盤に攫われて戻ってきた女性、
なんてある意味陳腐な材料を持ってきて
ここまで美しい物語になるとは驚きです。

洗練されたブラッドベリ、という印象がちらつくな、
と思ったら、ブラッドベリがスタージョンを師と仰いでいたんですね。
なんだか非常に納得。
どっちがどうだという訳ではないけれど、表情は違うけど、
匂いが似てるって気がしました。
「夢見る宝石」「人間以上」などの長編の
ごたつき加減(いや、好きなんだけれども)からは
想像もつかないほどスマートな文体に驚きました。
手元に置いて、ときどき好きな作品を読み返したいような本です。
(2005年4月13日)

 2015_11_23




シオドア・スタージョン「海を失った男」
晶文社

シオドア・スタージョンの短編集です。
日本で編まれた短編集のようですね。
それにしても、うんうん、
すごく面白かったです。
スタージョンの短編は初体験なんですが、
これがまた良いですね~。
「夢見る宝石」「人間以上」は、
些か言葉が華美な感じがしたんですが(それも魅力でしたが)、
短編では、すっきりとシンプルな文体がハマってるんですよ。

南米系の頭ぐるぐるシュール短編も大好きですが、
こういう小気味のいい切味の短編も好きです。
と、言っても、
内容はやっぱり一筋縄ではいかないところが
スタージョンって感じですよね。

巻頭の「ミュージック」そして「ビアンカの手」
表題作の「海を失った男」は、
一般的に見て所謂「イッちゃった人」を描いてあります。
が、それが奇を衒った感じのない、
非常に直球な感じがする作品だったりするんですよね。
「ミュージック」「ビアンカの手」など特に、
不思議な安定感というか、
安らぎのような心地さえ与えてるような……。

私が本書の中で最も面白いと思った作品は
中篇の「成熟」と、短編「ビアンカの手」と「墓読み」かな。
「成熟」は、長い所為に
「面白い」って感じる余裕が読んでる側に生れたのかもしれないですね。
で、「ビアンカの手」「墓読み」は
読み終わってからぐぐっと感じる「モノ」がありました。

あと、どの作品にも、悪い意味ではなくて、
甘さが感じられるのもよかったな~。
この人って人がすきなんだろうなって思える感じ。
(2003年9月29日)

 2015_11_22




シオドア・スタージョン「きみの血を」
ハヤカワ文庫

うーん、面白かったです。
帯の裏側にある、風間賢二の解説の抜粋に
「キング以前のモダンホラーにおいて、ロバート・ブロックの「サイコ」やシャーリイ・ジャクスンの「山荘綺談」と肩を並べる傑作である。」
なんてあるし、
帯の表には「異形(スタイリッシュ)の吸血鬼小説だ。」
とありましたが、
なんというか、淡々としてて、
それでいて後をひくような怖さがありました。

ある米軍駐屯地で、一人の少佐が、
一通の手紙の差出し人である兵士を呼び出して尋問します。
その手紙の文面が異常だと思われたからです。
ところが、この兵士は、
ある質問を少佐にされたとたん態度を豹変させ、
コップを握り潰して少佐に飛びかかろうとしたのでした…。
というのが、まず物語の前段階にあります。

陸軍軍曹で精神科医のフィルは、
この兵士に興味を持ち、彼に接触し、
なんとか彼の精神状態を研究しようとします。

この小説は、この精神科医フィルと、
彼の友人であり上官でもある大佐アルとの間に交わされた
書簡で構成されてます。
その中には、
フィルが兵士に自分の半生を客観的に見るために
三人称で書かせた手記もあって、
それを元に、さまざまな質問やテストが行われてるんです。

スタージョンというと今までの作品では
かなりこってりした描写のものばかり読んでたので
意外だったんですけど、
そっけないほど淡々としてるんですよね。
でも、今回の作品には、
回りくどい表現も幻想的なシーンもほとんどなし。
うーん、どこが恐いんだ?
と思ってしまうぐらい淡々としてるんです。
ふふっ。
ところが、本を閉じたとたん、
ぞぞーっとくる不思議な恐さがあるんですよね。
薄い文庫だし、活字も大きいので、
より読みやすいので、興味のある方は是非一度。
(2003年3月30日)

 2015_11_21



シオドア・スタージョン「人間以上」
ハヤカワ文庫

言葉を知らぬ白痴の青年。
言葉に何の意味をつかむこともできず、
自分の感情というものに欠けていた彼。
赤ん坊の、言葉とも言えぬ言葉のみ
聴きとることのできる彼が出会ったのは、
不思議な女性でした。
父親の歪んだ教育方針により
「悪」という概念さえも持たない世界に
幽閉されるがごとく住んでいたこの女性と出会うことで、
彼はは急激に変化します。
そして、一軒の農家で仕事を得、
言葉を得るようになった彼が自分につけた名前は「ローン」。
だれから理解されることもなく過ごしてきた自分自身につけた名前。
「ひとりぼっち(オール・アローン)」。

ローンがその後に出会ったのは生意気な少女、
いたずら好きの黒人の双子、
病気による発育不全の赤ん坊。
世間から異端、厄介者とはじき出された彼らは、
しかし人類のあたらしい姿でもあったのでした。
テレパシー、テレキネシス、テレポーテーション。
ひとり一人で一つの「個」ではなく、
みんなが集る事で一つとなる「集団有機体」(ホモ・ゲシュタルト)なのです。
彼らは白痴を「頭」にいただいていたときには変化がなかったのだけど、
白痴(ローン)の死後、
憎悪と恐怖に凝り固まった少年ジェリーが代わりとなったとき、
彼らの一員である少女ジャニイは、
ジェリーは何かを学ぶ必要があると感じ始めます。
腕は切り落とすことができる。足も、他の部分なら……
けれど、頭を切り落とすことはできないのだから。

ながながとあらすじを書いてしまいましたが、
とにかく奇妙な雰囲気の作品なの。
面白かったです。

 2015_11_20




シオドア・スタージョン「夢みる宝石」
ハヤカワ文庫

これ、かなり面白かったです。
養父に酷い虐待を受けた九才のホーティは家を飛び出した。
赤ん坊のころから持っていた人形ジャンキーだけが彼の財産。
衣装扉に押しつぶされた三本の指は酷い状態になっていた。
やがて彼は街々を旅するカーニヴァルの一座に保護される。
やさしいカーニヴァル一座のフリークス達に守られて、
ホーティは、一座の中の小人の女ジーナと組んで小人女として暮し始める。
団長のモネートルは通称人食いと呼ばれる人間嫌いの元医者。
実はモネートルは不思議な能力を持つ水晶を探していた。
それらの水晶は生きていて、
痛みや憎しみなど様々な感情を発しているのだ。
水晶が夢見るとき、土の塊から生み出されるものは……。
実は、
ホーティの人形ジャンキーの瞳に使われている水晶こそ、
モネートルの探していたものだった。

幻想的で美しくて、ファンタジーといってもいいかもしれないSF。
やさしくてかなしい奇形たちとの心のふれあい、
恐ろしくもおぞましいモネートルの企み、
あー、めっちゃ素敵な作品でした。




多分この作品が、一番最初にスタージョンに触れたものだったと思います。
 2015_11_19




アイラ・レヴィン「ローズマリーの赤ちゃん」
ハヤカワ文庫

おぞましい悪夢にうなされた夜、ローズマリーは身ごもった。
待ち望んでいた妊娠だったが、
彼女の平和な日々はそれから加速をつけて
不安で奇怪な様相を呈してくる。
腹部の絶え間無い痛みと生肉を食べる事への執着、
医師や隣人たちの不審な言動と異様な介入。
夫ガイの変化も気掛りだった。
たった一人彼女の相談相手だったハッチも、
彼女に何かを伝えようとした朝、謎の病に倒れ、
そのまま帰らぬ人となってしまう。
ローズマリーの身に何が起こっているのか……。

知る人ぞ知る、有名なホラーです。こわいですよぉ~。
これねぇ、何が怖いって、
夫ガイがころっと変ってしまうところと、
ローズマリーが赤ん坊を産み落とした後が怖いんですよ。



アイラ・レヴィン「ローズマリーの息子」
早川書房

1999年11月。
ニュージャージーの療養院でローズマリーは
27年に及ぶ長い眠りから目覚めます。
彼女の「昨日の記憶」では5歳だった息子アンディ、
ニューヨークで再会したローズマリーの息子は、
地球規模の宗教的カリスマとして活躍していたのでした。

タイトルからも分ると思いますが、
「ローズマリーの赤ちゃん」の続編の作品です。
「ローズマリーの赤ちゃん」は、
とあるアパートに引越した若い夫婦が、
×××××によって生活をゆがめられ、
××の赤ちゃんを生ませられるというホラー小説でしたが、
今回はホラー色はあんまりなくて、
サスペンス色が強くなってました。

ええ、結構面白かったです。
1970年代から一足飛びに1999年に目覚めてしまったローズマリーが、
すんなり現実を受け入れてとけ込むあたり、
彼女の順応力の強さにびっくりもしますが、
まあ、それも可です。
彼女が知っている5歳当時の息子の環境と照らし合わせて、
今の息子を心配するところとか、結構読ませてくれました。
でも……
でもね~、
ラスト近くの展開の早さと、あのラストはイタダケません。
私の大嫌いな形です。
これはもう理屈抜きで嫌いなんです。
(2001年11月8日)

 2015_11_18




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Sima

Author:Sima
わたしが超個人的におすすめする児童文学100選
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