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イサベル・アジェンデ「エバ・ルーナ」
国書刊行会

ううっ、すごく面白かったです。

生命を意味する名前「エバ」。
エバに天が与えた才能はお話を語ることだった。

独裁政権下の南米のとある国を舞台に、
密林の捨て子だった母の生い立ちからはじまるエバの物語。
この濃密で神秘に満ち溢れてることといったらもう……。

人間の剥製方法を研究する博士の家で
幸せな幼年時代をすごしたエバ。
母が死に、博士が死に、
7才にして流浪の人生をスタートさせたエバ。
独身ものの姉弟の家、
ユーゴスラヴィア人の未亡人、
娼家の女将、
辺境の村で商店を営む兎口のアラブ人、
両性具有の女優など、
さまざまな人達のもとを転々としながら、
やがて愛を知り、
革命にかかわり、
物語を語る自分の人生を見出して行きます。

しつこいようですが
もう、めちゃくちゃ面白い一冊でした。
(2001年6月17日)




これだけではなんなので。
この物語は、
まずエバの母であるコンスエロの物語から始まるんですが、
これがまた惹きつけられるんですよね。

伝道所はなまめかしいほどもつれあい、絡み合っている密林の真ん中にひらけたオアシスだった。樹々は川岸から、神の過ちではないかと思えるほど天空高く聳えている塔のようなばかでかい岩山の麓まで広がっていた。そこでの時間はよじれ、空間は人の目を欺き、旅人が迷いこみでもすれば、堂々めぐりをする羽目になる。湿気を含んだ空気はじっとりと重く、ときには花や草、人間の汗や動物の息の匂いがした。

というのは、コンスエロが育った伝道所の描写。
そう、
情景描写が多くて、
このうねるようなリズムが心地良いんです。




イサベル・アジェンデ「エバ・ルーナのお話」
国書刊行会

以前読んだ「エバ・ルーナ」の中で
お話の名人のエバが話した「お話」を収録した
というつくりの短編集です。
短編でも
「エバ・ルーナ」の世界のエッセンスに溢れてて素敵でした。

「エバ・ルーナ」を読んでから読むに越した事は無いんだけど、
この「エバ・ルーナのお話」単独で読んでも
結構楽しめます。
南米を舞台にしたさまざまな愛の形が綴ってあります。
ちなみに「お話」と言っても昔話ではありません。
自分を五十年間地下室に閉じ込めた男を
愛しつづけた女の話「心に触れる音楽」や
荒涼とした土地のあらくれ男をなぐさめ続けた女の話
「ひきがえるの口」など。
(2001年7月13日)

 2015_02_23




本当は、
この間の木曜にアップする筈だった
児童文学の紹介。
完全に曜日感覚を失ってて
振り替えとして日曜ですが
本日アップします。

今回紹介するのは、
簡単に言うと原始時代のお話。
わたし、古い時代を描いた物語がけっこう好きで、
同じ作者だと古代エジプトを舞台にした「青い鷹」とか
古代ローマや青銅器時代などを描いたローズマリ・サトクリフとか
日本だと
たつみや章の「月神の統べる森で」のシリーズとか
浜たかやの「太陽の牙」以下のシリーズとか
古代のお話で好きなものはいっぱい。
エイラシリーズとか、スー・ハリソンの作品とかも
もちろん好きだけど、これらはちょっと子供向けではない
かも。






ピーター・デッキンソン「血族の物語」
ポプラ社

舞台は今からおよそ20万年前のアフリカ。
最初の現生人ホモ・サピエンス・サピエンス、
つまり現代の人間の祖先たちが進化しようとしていた頃の物語です。

素朴で厳正な原始信仰のもと、
集団で移動を繰り返しながら狩猟と採集の生活をしていた彼ら。
その中の「月のタカ」という血族たちは、
最近見知らぬ男たちの襲撃を受け、
生き残りの者たちは安全な「よきところ」を求めて移動していました。
その中の一人の少女ノリが、
ある夜夢で<月のタカ>からのお告げを受けます。
リーダーでも大人でもない少女の言葉が
受け入れられることのない事を身に沁みて分かっていた彼女は、
従弟の少年スーズとともに、
移動の足手まといとされて置き去りにされていた幼い子供達と共に、
こっそりとお告げに従って、
子供達だけで旅立つのでした。

この物語は大きく三つに分かれています。
最初は、ノリとスーズを軸にして、
幼い子供たちを率いて生きる道を模索していくというもの。
次が、
彼らが率いていた子供たちの中の一人、
勇ましい自分の姿を夢想してばかりいる少年コーを軸に、
最後に、
少女マナを軸にして物語が語られ、
三つの物語それぞれに子供達の精神的な成長が描かれます。
もちろん、
この血族たちの流浪の物語が本流にあるんですけどね。

そして作中には、
創世記の神話が19章織り込まれていて、
これが作品の味わいに深みを出しています。
この昔話だけを拾い読みしても十分面白いぐらいですね。

児童向けの作品ですので、
上下巻とはいえ比較的あっさりしてます。
が、逆にこのあっさり加減が、
作中に挿入された素朴な神話をより引き立ててるような気もしました。
あっさりとした描写がいろいろ想像をたくましくする余裕を生んでくれて、
読んでて楽しくて、
あたかも彼らと旅を共にしているようなドキドキ感がありました。

とにかく、
味わいがあって、かつ楽しかったですね。
幾多の困難を乗り越え、小さな一歩一歩を刻んで行く。
大袈裟でもなく、「ひねり」のけれん味もなく、
ホント、
彼らと共に喜怒哀楽を楽しんでひたすら楽しめました。

 2015_02_22




七 碧梧桐との訣別(大正元年~四年)
 海紅堂不祥事件 その1

芥川龍之介が、土屋文明に「俳人はすごいことをやるよ」
と、言ったとかいう、
当時の文壇を騒がせたらしい事件。
それが海紅堂不祥事件。
公式にこういう名称があるわけではないみたいですが。
ともかく、それは大正四年のことでした。

最初に、その事件の前の話から。

「海紅」が創刊した三月、
かねてより郷里で療養していた大須賀乙字の妻千代が亡くなります。
この月には、この後書くことになると思いますが、
臼田亜浪の俳句誌「石楠」が乙字の協力のもと創刊されてます。
三月二十九日に千代が亡くなり、
翌月六日には東京へ戻った乙字ですが、
愛息子である精一はそのまま妻の里に残してます。
千代の父である宮内亀次郎が
毎日のように精一の様子を乙字に書き送ってくれていたらしいんですよ。
その手紙への乙字の返信によれば、
亜浪夫妻、小沢碧童、風見明成などが
色々と心配して世話してくれたということです。
四月の終り頃になって、やっと香典返しの作業が一段落し、
「人生と表現」に千代の遺稿として手紙を掲載することになった
という手紙も。
さて、
そのころ「海紅」では精力的に句評会が行われてました。
新しく船出した俳誌「海紅」のこと。
乙字にも会の案内が来てはいたんですが、
いつも何か用事があって行けなかったということです。
まあ、妻が亡くなって、その生活を立て直すには、
まだ短すぎる期間ですし。
しかし、五月十二日の句評会については、
是非出席してほしいと速達で案内が来たので、
さすがに乙字も出掛けることにします。
この会の当日のことですが、
『わが心の俳人伝』(河内静魚)には
その日、乙字は別の宴会場から直行したため酒が入っていた
とあります。
『大正俳壇史』(村山古郷)には
妻の亡くなったさびしさもあって、一杯傾けて来たのであろう
とあります。
どういう理由だったかは不明ですが、
とにかくその会に乙字が酒を飲んで参加したことは確か。
実際にその会に出席していた松下紫人が
乙字の死後発表した、乙字追悼文「其の夜」で
酒くさい氣配がするので、ふりかへると乙字君だった
と、その日の乙字との出会いの場面を振り返って書いてますし、
大正四年「海紅」六号で中塚一碧楼が
乙字は常より更に泥酔してきて」と、
喜谷六花は昭和四年の「俳諧雑誌」四月号の談話に
一番終りに乙字君はやつて來たと思ひますが、來た時はすでにかなり酔つぱらつてゐました
と語ってるのが載ってます。
まあ、とにかくその会で事件が起るわけですが、
とにかく乙字が酒を飲んできていたことだけは確かなんじゃないでしょうか。
ただ
その場にいて、後にそういう証言をしている紫人、一碧楼、六花は、
みんな碧梧桐&一碧楼派の人なので、
ものすごく乙字が酔っていたのかは判断がしにくいような。
碧童は、この日この会に出席してなかった模様。

へんなところで切りますが、
長くなったので、
事件そのものについては、次回。
ちなみに、
「海紅」の句評会で、酔っ払った乙字が無双
というような事件ではありません。
念のため。

 2015_02_22




俳句ポスト
というものがあるらしい。
と、知ったのは、とあるブログがきっかけでした。
で、いろいろ見てみると
多くのブロガーさんたちが楽しげに参加している模様。
TVでもおなじみの俳人、夏井いつき氏が選をしてくれるとこらしい。
しかも、いっぱい評も丁寧に書いてくれてるという。

しかし、この俳句ポストの兼題が、めっちゃ難しそうなのよ。
「採氷」「牡丹鍋」「福引」「万年青の実」「不知火」
ねー。
イメージだけ、頭の中だけでつくりあげないといけない季語がいっぱい。
まあ
そういうことで及び腰ということもあって
今まで一度も投句したことがないんですが、
この間、
投句はしなかったけど、
いくつかの兼題で自分も詠んでみました。

「蛤」
人麻呂のうみ蛤のゆめのなか

「水菜」
気に障るかるくち水菜さりと噛む
水菜解くあかるいみづを零しつつ

さて、次の兼題は「水草生う」「三月」ですって。

 2015_02_21




お前は何を言ってるんだ

言われそうですが
言います。

昨日は木曜やったんかーーー!

さすがにね、
金、土、日、月は、わかります。
そういう曜日があること、
じゃなくて、
あ、今日は○曜日か、という曜日感覚のことね。
たぶん、火曜もまだわかってると思われます。
しかし、週が進むと、あやふやになってくるんだなぁ。

と、
つまり何が言いたいかといいますと、
昨日は木曜だったので、
マイナー度ランキング順の読書感想をアップする日じゃなくて
好きな児童文学について何かかこうと
そう決めていた曜日だったのに、
すっかり忘れていた
ということです。
まあ、
アジェンデのジュブナイルっぽいやつなので
ギリギリセーフ?
でも、とりあえず
日曜に、振り替え児童文学をやります。
というわけで、
なんか
ごめんなさい。

おかしいと思ったんだよねー。
「エバ・ルーナ」と「エバ・ルーナのお話」の二冊、
いくら再読とはいえ、
4~5日で読み終わる計算で借りてくるはずが無いと。
(私の仕事は18~20日が忙しくて、19日がピークなので余計に)

 2015_02_20




金曜企画「痛・病」
三冊目は、看取。

レベッカ・ブラウンは、
わたし調べマイナー度ランキングでは
かなり下位。
人気があるのか、
日本での出版数が多いのか、
ブログなどで感想を書きたくなるからなのか、
あるいは、
「レベッカ」と「ブラウン」を別々に検索されてしまったのか。
真相はわかりませんが。
なので、他の作品を紹介するのはずっと後になりそう。
ちなみに
ウィリアム・モリスとマーガレット・ミラーの間の順位でした。

レベッカ・ブラウン「家庭の医学」
朝日新聞社

これ、良かったです。
すごく良かったです。
うーん、どっぷりと余韻に浸ってしまうような良さでした。

末期がんの母親。
母を看病する娘を主人公にした物語ですね。
始まりはのんびりと、
単に体調が悪いだけだと思っていたのだけど……。
病院での検査の結果も、まだ受けとめる側には信じられない思いと、
治癒への望みがあるのだけど、
すでに無数に転移していることがわかった瞬間から、
終りが始まるんですね。

各章に付けられた
「貧血」「転移」「化学療法」「耐性」「モルヒネ」
などという硬質なタイトルと、
章の初めに掲げられた、
辞書からそのまま引いてきたようなその言葉の意味。

そして、なんだろ、
非情の情というのかなぁ。
「泣かせ」の一切入らない文章が、すっごくリアルでした。
末期がんの母親の死を看取るという、
こりゃどう考えてもヘビーな内容を、
すごくシンプルに描写してあるんですよね。
娘としての感情も、
ものすごく抑制した表現で表されてて、
きっと死に面した人と対峙する時って、
自分の感情がメインではないんだろうなって思わずにはいられませんでした。

この作品を読んでて、
「似てる」ということではないんだけど、
壇一雄の「リツ子、その死」を思い出しちゃいました。
主人公がリツ子の汚物を海に捨てに行く
というシーンが浮かんできたんですが、
これはもしかしたら
佐藤浩市主演のドラマ「リツ子、その愛その死」
の中のシーンだったかも知れません。
捨てる途中で汚物が手についてしまって、
慌てて海で手を洗うというシーンだったんですが、
これにも同じ非情の情があると思うんですよね。

いや~、
「家庭の医学」
薄い本で、簡潔な文章でしたが、
ものすごく手強い本でした。
(2002年12月17日)

 2015_02_20




bee01.jpg

ふふふ。
磯野磯兵衛物語のガチャガチャ引いてきました。
(エロ?)本を読む磯兵衛と
くつろぐ磯兵衛。
はー
いやされるー。
本当は、
座布団はお尻の上に乗せるんだけど、
ひじが痛そうなので、
ひじの下に敷いてみました。
bee11.jpg

IMG_0483.jpg


後ろに見えるのは、
わたしの心のお守り、スニッカーズ。
何かあったとき用の非常食。
まあ、幸いにも今まで非常が無かったので、
適度な時間を置いてから、
常の場でむさぼってます。
一ヶ月に一回ぐらい。
早いか。

 2015_02_19




イサベル・アジェンデ「神と野獣の都」
扶桑社ミステリー

15歳のアレキサンダー(アレックス)・コールドは、
母が病気で化学治療のために入院することになり、
父方の祖母に一人預けられることになった。
妹たちは母方の優しい祖母の元へ、
自分は意地悪でタフで、
正直言うとちょっと怖い作家の祖母の元へ。
そしてこの祖母と共になんと
アマゾンの探検旅行へ行かされるという。

この探検旅行の目的は、
密林の奥に住むという謎の人間型生物、
通称「野獣」についての調査で、
祖母はナショナル・ジオグラフィック誌に文章を載せるために
参加しているのだった。
母の重い病状に打ちのめされているアレックスだったが、
アメリカでの平凡で安全な生活から遠くはなれ、
危険いっぱいのジャングルクルージングとなると、
そうそう自分の殻に籠って悩んでばかりはいられない。
現地で父親と暮らす白人の少女ナディアと知り合い、
心を通わせるアレックスだったが、思いもかけぬトラブルが……。

あらま。
ラテンアメリカのストーリーテラー、イサベル・アジェンデの、
ちょっとびっくりしてしまうような
純然たる「少年冒険活劇」です。

赤い背表紙の扶桑社ミステリーの文庫と
アジェンデって組み合わせに
まず微妙な違和感を抱きますが、
中身がこれまたびっくり。
なんというか……こう、
ホントに冒険活劇なんですよ。
ハリウッド映画みたいな「血湧き肉踊る」
そして「少年の成長」の物語。
そうか、
アジェンデもジュニア向けの小説を意識して書くと
こんな風になるのか、って感じです。

もちろんつまらないわけではありません。
しつこいけどホントに「冒険活劇」で、
すっごくスリリングで読んでいて楽しいのです。
楽しいのですが、
どうもこう…
アジェンデの…
とか思っちゃうと非常に意外な感じがしてしまいます。

アマゾンの密林の雰囲気や、
インディオたちとの神秘的な体験など、
とても印象的でなかなかぐっと来るものがあります。
その辺りはサスガという感じかな。
思いがけない作品の雰囲気で、
「アジェンデ」の新しい作品だぁ
って意気込んでしまうと
ありゃりゃってなってしまうかも知れないけど、
それさえなければ十二分に楽しめる作品でしょうね。
(2005年8月23日)

 2015_02_19




俳句を始めてどのぐらいたったのか
ということを
実はあんまり意識したことがなくて、
だいたい20年ぐらいかなぁとか
思ってましたが、
どうやら今年で十九年目になることが
この間ちゃんと調べてみてわかりました。

十九年、
あらためて考えてみると長いなぁ。
その間に、
ささやかながら色んなことがありました。
最初に地元の結社に入って、
その後、結社の主宰からも勧められて
「河」っていう全国規模の結社にも入って。
まあ、「河」は数年しか入ってなかったけども。

「河」って、角川春樹氏が現在主宰してるとこですが、
わたしがいたのは、その前の角川照子氏が主宰のころ。

その後、体調が少し悪くて俳句にも後ろ向きになって
もう地元で自分のペースでささやかに俳句を詠むだけでいいやって
そう思ってたんだけど
今の年齢になってみて
もうちょっと、
若い時にがんばってたらなと
思わないでもない。
まあ、当時は本当にそれでいいと思ったから
仕方ないんだけどね。
少なくとも、
最初に入った結社の方では
今まで一度も欠詠がない。
そのぐらいしか
自分を褒められるものがないのも
ちょっと淋しいなあと
思ったり。

まあ、
ちょっと黄昏てみた訳ですが、
今のスタンスで
詠みたいときだけ
俳句を詠むというのも、
実は悪くないとも思ってます。

この記事のタイトルの句は、
わたしが、現在使ってる俳号にした月に出した句。
初めの四ヶ月ぐらい、本名でやってました。

 2015_02_18



イサベル・アジェンデ、
ペルー生まれのチリの女性作家です。
わたしの好きな作家の一人ですが、
いきなり「天使の運命」からかと
思われるかも。
実は、この作品が、
わたしがアジェンデの作品を読んだ最後のもの。

だいたい今までは、
わたしの手元に残っていた本の感想が
複数ある場合、
読了日順で紹介してたんですが、
今回は逆から。

その理由は…
「エバ・ルーナ」の感想があまりにも短くしか残されてなかったので
もう一度、読み直して補足を書いておこうと思ったからでした。
ちなみに
「神と野獣の都」
「エバ・ルーナ」「エバ・ルーナのお話」
の順でアップ予定。
「精霊たちの家」が一番最初に読んだ作品だったけど、
これは感想を書き始めるより前だったので、
何も残ってないんですよね。




イサベル・アジェンデ「天使の運命」
PHP研究所 木村裕美訳

物語は19世紀半ばのチリから始まる。
貿易商を営むイギリス人家族の
拾い子としてそだてられた少女エリサ・ソマーズ。
彼女の出自については、
家族がチリにやってきて一年ほど後に
石けん箱に入れられてやってきた、
ということしか分からない。
彼女の養母であるミス・ローズや、
彼女を赤ん坊のときから世話してきた
インディオの料理人兼家政婦ママ・フレシアの言うことが違うし、
基本的にはその話はタブーのようなものだったからだ。

ともあれ、
エリサはソマーズ家の養女として何不自由なく育てられた。
プロテスタントの教えと、
英国流の教育、美しい衣裳を与えられ、
また一方では台所でママ・フレシアの昔話や料理のレシピを与えられて。

しかし、
エリサの運命が大きく変わる時がやってきたのだ。
エリサは恋をした。
16歳の、
初めての、
そして激しい恋。
それはエリサだけではなく、
彼女を取り巻く人々の運命をも変える恋だった。

うん、すごく面白かったです。
やっぱりアジェンデはストーリーテラーですねぇ。
出だしからぐっと惹きつけられ、
最後の一行まで魅了されまくりでした。

気難しい兄と暮らす、奔放な美女ミス・ローズや、
つけつけと物を言う、エリサを心から愛してくれていたママ・フレシア、
この二人とエリサの幼い日々は、
様々な果物の匂いと、料理の匂いと、バニラの香りに溢れてて、
いい感じな濃厚さの予感が漂いますが、
狭いチリのイギリス人社会の中の拾い子として育った立場からか、
エリサが身につけたという存在感のなさのためか、
実はあっさりめ。
それよりもソマーズ家の交友図のようなエピソードに魅力が溢れてます。
ミス・ローズに熱烈に恋してしまう
似非伝道師ジャコブ・トッドの存在もいい味が出てました。

物語はチリから中国、香港、
そしてゴールドラッシュの熱に湧くアメリカへと移ります。

読んでる途中で、
「エリサ、おまえは逆オリヴァ・トゥイストか!」
とか思ったんだけど、
もちろん物語の味わいは全然違います。

ちょっと甘め、
波乱万丈、
いきいきと描かれる様々な生。
そんな感じでしょうか。
とにかく、
どどっと物語に没頭して、
最後に「物語を読んだ」満足感に浸れる作品でした。
(2005年4月12日)

 2015_02_18




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Sima

Author:Sima
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