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火星からハローハロー。
わたしは今、火星にいます。
というか、「火星の人」を読んでました。
今はブログの記事を書いているけど。

「ちょっと火星に行ってくるから、声掛けても聞こえないよ」
と、
「火星の人」(アンディ・ウィアー著)を見せて宣言して、
しばらく本に没頭してたんですが、
ふと我に返って、
家族に声を掛けたら
「いいから、火星に戻って」
と冷たく言われてしまいました。
これは…
読み終わるまで地球に帰れないのか。

という訳で、
火星で洗濯物を干して、
火星からストーブの灯油を注ぎ足して、

火星からこの記事を書いてるわけです。

ところで、この「火星の人」
宇宙開発新時代の傑作ハードSF
と、表紙裏に書いてありますが、
読み始めると、
すぐに分かることがあります。
それは
読みやすい!分かりやすい!
ということ。
まだ、読み終わってないので、
それ以上言えることはないんですが、
とにかく
するっと読みやすいというのは
なかなか好印象。

それでは、火星からでした。

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 2015_01_31




ウーヴェ・ティム「カレーソーセージをめぐるレーナの物語」
河出書房新社 浅井晶子訳

僕が子供の頃、ハンブルグのブリューダー通りに伯母が住んでいて、
よく訪ねたものだった。
そこへいくと、必ずブリュッカー夫人の屋台でカレーソーセージを食べてきた。
最後に食べたのはもう12年以上も前のことだ。
今でも、いわゆる「通」のあいだで
カレーソーセージの誕生について論争になる時は
必ずブリュッカー夫人のことを思い出した。
彼女がカレーソーセージを発明したのではないかとずっと思っていたのだ。

僕はブリュッカー夫人をハールブルグの市立の老人ホームに見つけ出した。
そして七回の訪問の間に、
このカレーソーセージにまつわる彼女の物語を聞いたのだった。

1945年4月29日、日曜日。
ヒトラーとエヴァ・ブラウンが結婚した日。
それがこの物語の始まった日だった。
海軍一等兵曹ブレーマーは、
休暇を終えて軍へ戻る途中のハンブルグにいた。
レーパーバーンにあるクノップス映画ホールへ足を伸ばしたブレーマーは、
そこでレーナ・ブリュッカーに出会ったのだった。
まだ予告編が終らないうちに空襲警報がなりはじめ、
二人は防空壕へと逃げ込み、
警報が解除されると二人でレーナの家へ行った。
そしてそのままブレーマーは脱走兵として
その家に匿われることになったのだった。

面白かったです。
カレーソーセージ、日本では聞いた事の無い名前ですが、
これは食品の名前じゃなくて料理の名前。
タイトルだけ見たときは、
てっきりカレー風味の利いたソーセージなのだと思ってましたけど、
全然違ってましたね。

熱くなったフライパンにカレー粉を少し振りかけ、
それからナイフで子牛のソーセージを輪切りにする。
ケチャップをフライパンにぶちこみ、かき混ぜ、黒コショウを少し加えて、
それからソーセージの輪切りを紙皿に移す。
そういう料理なのだそうです。

さて、
レーナ・ブリュッカーが海軍一等兵曹のブレーマーを愛人として、
そして脱走兵として自分の家に匿った時、
彼女の年齢はブレーマーの母親といってもおかしくない年齢だったようです。
夫と16歳の息子は軍に招集され、
娘も実家から遠く離れた場所にいて、
レーナは若い愛人を匿っている。
こりゃどう考えても不道徳すぎるだろって、
全部読み終わって改めて本をぺらぺら捲りながら思ったりしますが、
実はこの作品を夢中で読んでる間、
まったくそんなことは考えもつかなかったです。
何の批判の気持も起こらなかったです。
これはレーナという中年女性の、一人の女として自立しているところや、
それを語る老ブリュッカー夫人の語り口などがそうさせたのかもしれません。

さて、
密告者と皆から言われている近所の男に、
何か怪しいと不信の目で見られながら、
レーナとブレーマーの日々は続いていき、
その話を聞いている現代の「僕」の
老人ホームへの訪問の回数も重ねられていくのに、
なかなか彼の目的のカレーソーセージに行き着きません。

レーナとブレーマーの秘密の日々の行方は?
そしてカレーソーセージの誕生のその瞬間は?

初めてレーナが作ったカレーソーセージを食した人間の反応を見た時は、
何だかとても胸に迫るものがありました。

第二次世界大戦中のドイツを舞台にして、
何故か突き抜けた感と軽味の感じられる作品でした。
(2005年7月30日)




ちなみに、
カレーソーセージって
正式には
カリーヴルスト
って言うんですね。

たしか、この本を読んだ当時はネットでもあまり見なかった料理な気がするけど、
今確認したら、結構情報があがってました。

毎度毎度Wikiネタで申し訳ありませんが
Wikiのカリーヴルストの項に、
ベルリンには2009年に、カリーヴルストの発売60周年を記念してカリーヴルスト博物館(カレーソーセージ博物館)が開館している
って一文があったんですが、
この感想を旧ブログにアップした当時、
つまり2005年の7月末ぐらいに、
コメント欄に、わたし自身が
ベルリンにカレーソーセージ博物館が出来たそうですね。
って書いてて、exciteのニュース記事のURLを載せてるんですよ。
もうそのニュース記事は読めなくなってますが、
どういうことなんだろう…。
4年後に完成という予定のニュースだったのかなぁ。

 2015_01_31




今回の金曜企画は
アントニイ・バークリー。
って
前にフランシス・アイルズやったやん
レンデル→ヴァインと同じ流れかい
と突っ込まれそう。

そう、
ご存じない方もあるかも知れませんが、
アントニイ・バークリーは、いくつかの別名を持つイギリスの作家で、
その一つがフランシス・アイルズ。
またそのうちに感想をアップする機会もあるかと思いますが、
A・B・コックスという(これが本名でもあるらしい)名義もあります。
ちなみに、本書は
A・モンマス・プラッツ名義で発表されたものということです。
しかし、わたしの読んだ本ではバークリー名義でした。




アントニイ・バークリー「シシリーは消えた」
原書房 森英俊訳

スティーヴン・マンローは、
彼の腹心の従者兼家政夫兼私設秘書であるブリッジャーに、
青天の霹靂となりかねない知らせを伝えようとしていた。
自分の財産を使い果たして、
とうとう今までの不労収入にたよる気楽な生活から、
労働者階級に属する一人の人間として生きなければならなくなった、と。
そして従僕の仕事が決まった、と。

しかし、
いざブリッジャーにそれを打ち明けると、
思ったほどの衝撃を与えることは出来なかった。
優秀な従僕ブリッジャーによると、
それはとっくに知っていたというのだった。
のみならず、
ブリッジャーの新しい仕事は、
スティーヴンと同じお屋敷の庭師だというのだ。

ともあれその日の午後より、
スティーヴンはウィントリンガム・ホールで従僕として働き出すこととなった。
屋敷の所有者のレディ・スーザン・ケアリーが、
皮肉めいた、一筋縄ではいかないような老婦人であることも、
この屋敷を切り盛りする執事マーティンとはそりが合いそうもないこと、
パーティの参加者にかつての友人がいたことなどは、
さして問題ではない。
しかし、
ひそかに心を寄せていたポーリーンが、
いけすかない婚約者と共にパーティに参加しているのは
スティーヴンの心をかき乱した。

このパーティの最初の夜に事件は起こった。
夕食会の後の気晴らしに始まった降霊会のまねごとの最中に、
レディ・スーザンのお気に入りの若い女性
シシリー・ヴァーノンが掻き消えてしまったのだ。
その真意も方法もわからぬまま、
さらに不可解な事実が一つ二つと浮かび上がってくるが……。

アントニイ・バークリーの「幻の長編」と言われる作品。
何故幻だったのかについては、
あとがきに詳細が書かれてますので、
興味のある方はどうぞ。

「幻の長編」の触れ込みに違わず、面白かったです。
一つ新しい事実が出てくるたびに新しい仮説に心の揺らぐ、
迷える素人探偵のドタバタぶりの面白さはもちろんですが、
やっぱりチャーミングな登場人物たちの魅力と
飄々とした会話の楽しさに惹かれます。
特にレディ・スーザンの皮肉するどいツッコミにはもう参っちゃいました。

あとがきにありますが、
スティーヴンとブリッジャーという(元)従者は、
ウッドハウスのジーヴスのシリーズを彷彿とさせますが、
バークリーが売れ出した頃に
ウッドハウスが人気作家であったらしく、
意識的に取り入れているのではということです。
とはいえ、
ジーヴスといえば比類なき従者ですからね。
ブリッジャーの役割はバークリーらしく
主人公の名推理を邪魔するほどではありません。
心置きなく名推理で東奔西走してくれてます。
(2005年7月25日)

 2015_01_30




あ、ぽこたんインしたお!
という懐かしいフレーズを思い出してしまって
午後からずっと
FF11のウィンダスのBGMが回ってます。
そう、
わたしの故郷はウィンダス。

まあ、そんなことよりも、
今日、お米を買いに行ったはずなのに、
山ほど買い物した中に
お米がなかったという……
というか、
買うの忘れてた。
肉とか魚とか牛乳とか卵とか
ワインとか焼酎とか水とか
ちゃんと買ってたけど、
米だけ忘れてた。

米買い忘れたのに、
アンディ・ウィアーの「火星の人」は
ちゃんと買って来ているというね。
最近、5000円の図書カードを貰ったので、
本はがまんせずに買えるんです。
ちなみに、書店のポイントがたまったので、
500円分の図書カードもゲット。
でも、
米がないんだよなー。

 2015_01_30




実は最近、
めっちゃ短歌にはまってます。
うーん
実はという程のことでもないか。
さんざん書いてるし。

以前宣言した
題詠blog2015」に参加します
のあとで、
うたの日
という企画にも参加するようになって、
一週間ぐらい経ちます。
これは、二つのお題の出る歌会で、
それが毎日開催されているという。
お題が出てから、締め切りまで一日しかないという
スリリングな歌会で
そのお題で詠むのも楽しいけど、
人の出した歌を読むのも楽しいという。

一応、ちょっと前からリンクに入れて、
プロフィールにも書いてますが、
ひみつの海
というブログを立ち上げて、
「題詠blog2015」と「うたの日」の歌は
そっちに載せる予定。
というか、「うたの日」の歌は
すでに載せてます。

今までに
「ジャージ」「不眠」
「噴水」「お釣り300万円ねって言うおばちゃん」
「降る」「無難」「ジャンパー」
のお題で詠みましたが、
難しい~。
難しくて、面白い。

という訳で、
もう一つのブログ
ひみつの海
も、よろしくおねがいします。

ちなみに、
このタイトルも、アーサー・ランサムの作品から採ってます。


 2015_01_29




絵本 de 俳句

生きるとは生き抜くことで冬木の芽 Sima

「おっとあぶない」


マンロー・リーフ「おっとあぶない」
学研

おふろですべって怪我をする「ふろばまぬけ」、
ひとりで遠くまで泳いでおぼれてしまう「おぼれまぬけ」など、
棒人間に毛がはえた程度の
単純な線で描かれた「まぬけ」くんたちが
ユーモラスに、
且つ
淡々と描かれ続けてます。
フォローなし。

大怪我したり、大火傷したり
こ…これは…死んじゃったんじゃね?というレベルまで行ったり
あ、死んだな…
みたいなのだったり。
おっとあぶない
どころじゃネェよ。

あぶないことをしたら大変な事になるよ
という教訓絵本というには、
あまりにも
ブラック。
しかも、のほほんとしたユーモアが漂うところが
また倍率どんでブラック。

わたしが子供の頃から図書館にあって
子供の頃、
けっこう楽しく読みました。
どうも、現在は絶版らしくて残念です。

ちなみに原題は
Safety Can Be Fun

好奇心はこどもにとって大切だけど、
好奇心は猫だけじゃなくて
こどもを殺しちゃうから
取り扱いには気をつけないと、ですね。


 2015_01_29



しばらく前に読んだんだけど、
なかなか感想をアップする機会がなかったので、
唐突ですが。

ピエール・ルメートル「その女アレックス」
文春文庫

面白かったですー。

裏表紙のあらすじには

おまえが死ぬのを見たい──男は
そう言ってアレックスを監禁し
た。檻に幽閉され、衰弱した彼女
は、死を目前に脱出を図るが……
しかし、ここまでは序章にすぎな
い。孤独な女アレックスの壮絶な
る秘密が明かされるや、物語は大
逆転を繰り返し、最後に待ち受け
る慟哭と驚愕へと突入するのだ。


ふー、丸丸写してやりました。

物語は、ウィッグを被って、
色々な場所へ違う顔で出かけるのを
楽しんでいる30歳の美女アレックスが、
突然街で見知らぬ50代の男に、暴力的に誘拐される
というところから始まります。

と、同時に、
本書のもう一人の主人公
というか、真の主人公である、パリ警視庁の警部カミーユが登場。
誘拐されたアレックスについては、
その素性そのものがこの物語の肝なので、
まったく語られませんが、こっちのカミーユについては、
断片的ではありますが、
最初から、色々なことが分かります。
まあ、当然かも知れませんが。
まず、カミーユの身重の妻が誘拐されて、
惨殺されたという過去の出来事。
この出来事があったからこそ、
若い女が誘拐されたという事件にカミーユが関りたくないと思ったわけで、
また、
今回の誘拐事件に積極的に入り込む理由も、そこにあるわけです。
それともう一つ。
カミーユ警部は高名な画家の母親がいて、
妊娠中も喫煙してたことが理由で、
カミーユ警部は低身長なんだとか。145センチ。
うーん、たしかにこれは低い。
まあ、それの恨みか、
既に亡くなっている母に対して、複雑な愛憎を抱いているらしい。
ちなみに、ハゲてもいるらしいけど、
こっちは母親の喫煙とは関係ないだろうし、
本人も気にしてないみたい。
まあ、ハゲで低身長で、
過去の事件で一度は復帰を危ぶまれた事があるという傷をもつ男だけど、
基本的に冷静で、出来る刑事ではあるらしいです。

それにしても
カミーユって女みたいな名前という刷り込みが
ずっと昔からあったので、
女性の名前だと思い込んでたわ。
もーZガンダムに騙されてた。

で、話は、この誘拐された被害者で、且つ謎の女アレックスと
パリ警視庁のカミーユとの場面が交互に登場します。

謎の男に誘拐され、
性的暴行は無しの純粋な暴行を受け、
裸で、どこかの廃倉庫らしき場所で、
体を折り曲げてやっと入れるぐらいの木製の檻に入れられて
吊るされる。
時々与えられる水とドッグフードのような食べ物。

そして、冒頭で書いた、裏表紙のあらすじです。

とりあえず、初日は、この辺りで読むのを中断して寝たんですが、
これが大正解だと、次の日わかりました。
というのも、この後、
もっとひどい状況がアレックスを待ってたから。

複数のネズミが登場するんですよ。
ひー。
最初はアレックスの食料であるドッグフードらしきものを、
そして、次第に、アレックス本人を狙っているらしいネズミたちが。

ここの描写がねっちりしてて、
マジで怖きもちわるかったです。

ここまで読み進めてたら、
多分、悪夢見そうで寝れないですよ。

でね、裏表紙あらすじにあるとおり、
これがまた、本当に序章にすぎないの。

最初はただの被害者だと思ってたアレックスですが、
どうやら、単純にそれだけとも言えない雰囲気が漂ってきて
第二章、第三章とぐるんぐるんと状況が変わってきます。
スリリングで面白かったです。


好みで言えば、
第一章のねちっこい描写を、
第三章でも同じテンションでやってほしかった
ような気がしないでもないですが、
まあ、それはわたしの好みですから。

そうそう、カミーユが女名前じゃなかったこと以上に
わたしが違和感を持ったのは、
フランスの刑事たちが、
ガサツで荒っぽくない!!
という点でした。
でも、よく考えたら、
わたしのフランス警察イメージが
ジャン・ヴォートランであり
ブリジット・オベールなので、
単純に片寄ってるだけの可能性が高いですが。

ということで、
「その女アレックス」
読みはじめた時と、
読み終わった時のわたしの心中はずいぶん変りましたが、
面白かったです。

 2015_01_28



エイモス・チュツオーラ「やし酒飲み」





エイモス・チュツオーラ「やし酒飲み」
晶文社

アフリカ神話の幻想とパワーにあふれた
ナイジェリアの作家の作品です。

これが結構当り。
面白かったですよ~。
10歳の頃からやし酒を飲むことしか能が無い
町一番の大金持ちの総領息子。
父親は彼を咎めるどころか
彼の為に専属のやし酒造りの名人を雇って、
しかも9平方マイルのやし畑まで与えるのでした。
でも、
その父親、やし酒造りの名人が相次いで死んでしまい、
やし酒飲みの男は
その死んだやし酒造りの名人を探しに「死者の町」へと旅立つのでした。

このものがたりはそんなやし酒飲みの旅の物語なんですが、
とにかく荒唐無稽で奔放で
当たり前のように別の世界が展開するという不思議な味わいの物語。
(2001年10月1日)




チュツオーラはナイジェリアの作家。
ココア農園で働く両親の下に生まれ、
7歳から働き出して、
給料代わりに10歳から救世軍の小学校に通えることになった、
という人みたい。
父の死までの6年間しか学校教育は受けてないという人なんだけど、
なんと作品は英語で書いてたんだとか。
なので、ややつたない英語だったみたいですが、
それもまた本書のマジックリアリズムを盛り上げたのかも。
フランスではレーモン・クノーが訳したとかWikiによると
面白そうなことがいっぱい書いてありました。

本書しか読んだ事はないけど、
Wiki見たら、今更に興味が湧いて来ました。

 2015_01_28




七 碧梧桐との訣別(大正元年~四年)
 井泉水の結婚 その1

「層雲」を立ち上げた荻原井泉水ですが、
大正元年は、井泉水にとって、大正俳壇にとって、
もっと大きく出て、俳句史において、といってもいいかなぁ。
エポックメイキングといえる年だったと思います。
それは、
「無季俳句」の誕生。
それ以前からも、「有季か無季か」という議論はあったみたいですが、
ハッキリと「無季」を志向したのは、
多分、この年の井泉水が最初だったと思います。

それは、大正元年十月、
秋田県の俳句大会に招かれて、東北の旅に出た折のことです。
大会では
町を見下ろすに蜻蛉飛ぶ葬列も行く 井泉水
算盤鳴らして戻る子や柿に日も斜 井泉水
などの句を出したらしいです。
ちゃんと季語有りです。

大会の後、一緒に大会に呼ばれていた登米の安斎桜磈子らと
十和田に向かいます。
途中の大湯村で合流した数人の俳人たちの中に、
大湯村で鍛冶屋をしているという小魚っていう人がいて、
その小魚さんが、井泉水に揮毫を求めたんだとか。
で、こんな山奥の村で鍛冶で生計が立てられるものなのか…
それにしても村ではなかなか人に知られた人らしい…
とか、
もーコレだから都会っ子は
と私だったらちょっとおかしくなるような
そんな思いを抱いていた井泉水は
逢へば山人の君知れり松明負ふ人も 井泉水
という、昨日作っていた句を半折に書き付けます。
それを見ていた小魚氏が、
先生、この句はどこに季題があるんですか?
と尋ねて、
そこで初めて、井泉水はこの句に季題がないことに
気が付きます。
今まで、季題を一句に詠みこむ、という程の意識もせずに
自然に季題の入った句を普通を作っていた井泉水。
句帳を見ると、
他に
柴負ふ人に辞儀せらる君と山深し 井泉水
という句も書き付けていたけれど、こっちも季題はない。
小魚氏に季題のないことを指摘されて狼狽しつつ、
ピカリンと閃くものがありました。
本当の自然の印象から作った句であるならば、
季題があろうがなかろうが、どうでもいい。
印象こそが大切なんだから。

十月中旬に東北の旅から戻った井泉水は、
同じ十月の二十七日、今度は甲斐の峡中俳句大会に出席します。
大会が終って、懇親会。
記録によると、この懇親会で初めて、
季題揚棄説を発表したことになっている、
というようなことが村山古郷の『大正俳壇史』に書いてあります。
ちなみに、今回の記事のほとんどが、この『大正俳壇史』からの
情報です。

あれっ。
「井泉水の結婚」という題だったのに、
全然結婚話に辿り付けなかった。
大須賀乙字も登場しないし。

 2015_01_27




ジェフリー・ユージェニデス「ミドルセックス」
早川書房 佐々田雅子訳

わたしは二度生まれた。
物語はこの言葉から始まる。
一度目は1960年デトロイトで0歳の女児として、
二度目は1974年に10代の少年として、二度生まれたのだ。

カリオペ・ヘレン・ステファニデス、
デトロイトで食堂を営む両親の二人目の子供として、
そして初めての女の子として生まれた主人公は、
14歳の時に自分が両性具有者であるということを知り、
その後はファーストネームをカルと名乗り、
男としての人生を始めたのだった。

何故カリオペの身にこんな運命が用意されてしまったのだろう。
物語は過去へと下っていく。
カリオペが生れる3ヶ月前へ、いやもうすこし前、
カリオペが母の胎内におさまるより少し前へ。
そして、
もっと前へフィルムは巻き戻され、1922年のギリシャの小さな村へ。

デズデモーナと弟のレフティーはこの小さな村で生まれ育った。
幼い頃から一卵性双生児のように親密に育った姉と弟は、
両親の死後、家業の養蚕の仕事をしながら二人で暮らしてきた。
きょうだいの愛情を越えた愛情を持つようになってしまった二人。
しかし、互いにそれを確認した日、
ギリシャとトルコの戦争で村は焼け落ちてしまったのだった。

とても楽しかったです。
うん、とても面白かった。
両性具有者の手記という形をとった作品なんだけれども、
ことさらセンセーショナルに言い立てるわけでもなく、
自らの両性具有としての苦難の道が語られるわけでもないの。
ステファニデス家の歴史を遡って、
祖父母の代から三代にわたる物語が描かれていくんです。
それがカリオペの染色体異常と深く結びつくものだから。

トルコ軍に侵攻されて壊滅状態になったギリシャから、
いとこをたよってアメリカにわたった祖父母。
ギリシャ系移民としてのアメリカでの新生活。
父母の恋、結婚と続く物語は、
ステファニデス一家の物語でもあり、
アメリカに暮らす移民たちの物語でもあるのね。
そして主人公カリオペが第一の生、
つまりステファニデス家の長女として生れてからの物語も、
さまざまな波乱に満ちてるの。
第二次性徴によってカリオペの体に不協和音が生じてからがまた、
なんか
その気持の襞が細やかに描かれてて
読みながらドキドキしてしまいまいした。

栞を用意してじっくり読みたい、そんな作品でした。
(2005年4月)




作者ジェフリー・ユージェニデスは、アメリカの作家。
本書でピュリッツァー賞を受賞したとか。
映画「ヴァージン・スーサイド」の原作「ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹」
の作者でもあります。
本書はもう早川書房が出版してないみたいだけど、
「ヘビトンボ~」はまだ出てるんだよね。
ピュリッツァー賞よりも映画原作が上かー。

 2015_01_27




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Sima

Author:Sima
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