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ブルーノ・シュルツ「肉桂色の店」
集英社 工藤幸雄訳


本作は、
『集英社ギャラリー[世界の文学]12 ドイツ3・中欧・東欧・イタリア』
に収められた作品で、
単独での本ではないことをまず書いておきます。

作者ブルーノ・シュルツは
1892年にポーランドで生れたユダヤ人。
22歳の時に第一次世界大戦が起こり、
家族とともに避難したウィーンで芸術アカデミーに通い絵画を習い、
30歳でガラス陰画による版画集を完成させたのだとか。
作家としてのスタートは33~34歳。
47歳の時に第二次世界大戦が起こり、
50歳のとき、
「黒い木曜日」のその日にゲシュタポに射殺されて亡くなってます。

と言っても、
本作「肉桂色の店」は第二次世界大戦より前の42歳の時に出版されていて、
ホロコーストを感じさせるものではありません。
彼の幼少時代が断片的に語られる連作短篇集、という感じでしょうか。

収録作品は、
八月/魔性の訪れ/鳥/マネキン人形/
マネキン人形論 あるいは創世記第二の書/
マネキン人形論(続)/マネキン人形論(完)/
ネムロド/牧羊神/カロル叔父さん/肉桂色の店/
大鰐通り/あぶら虫/疾風/大いなる季節の一夜

ストーリーはほとんど無いに等しいですね。
体の不調から精神にも不調を兆しているらしい父親のエピソードを軸にして、
少年時代に見聞きしたことを書き留めてある、という印象。

ですが、これがはっきり言ってスゴイんです。
まず普通の小説を読むようなつもりで読み始めたら、
言葉の奔流に瞬く間に飲み込まれて、
何を読んでいるのか、
何を読んだのか見失ってしまうこと請け合いなの。
巻き込まれて作品の中に溺れてしまうのではなくて、
訳の分らないままに岸に投げ出されているという感じ。
一つ一つの言葉、
センテンスをじっくりゆっくり味わいながら、
あたかも音読を覚えて間もない子供のごとくに
一行ごとに目で追っていって
一語一語を噛み締めるように読んでいくのがいいのではないでしょうか。

圧倒的な言葉の流れの中に垣間見える
ひんやりとした狂気の色は
それだけの労力を全く惜しいと思わない魅力です。

巻頭の「八月」に描かれる、
息苦しい程に生命力に溢れる植物や昆虫の描写は、
いきなり圧巻でしたね。
美醜を越えた美、というんでしょうか。
恐ろしいぐらいに美しい一篇です。

「牧羊神」での果樹園の描写も濃密でした。

「ネムロド」に描かれる仔犬の描写も素晴しかったですね。
これでもかってぐらいに仔犬を描写しながら、
幼い少年の息遣いまで感じられるようでした。

「大鰐通り」の最初のところの古い地図の描写も魅せられました。

しかし、なんと言っても
表題作「肉桂色の店」が素晴しかったですね。
冬の夜の冷えて澄んだ夜気の美しい描写。
珍奇な品々の陳列された店。
思いがけなく手に入れた夜のそぞろ歩きの興奮と
そこから展開される夢とも現ともつかない幻想的な冒険。
素晴しかったです。

父の狂気の源、
家族と父の微妙な距離感や、
父に対する家政婦アデラの圧倒的な支配力など、
一連の作品を通じるストーリー性を感じさせるものもあるけど、
まずは何よりもその怒涛の迫力を楽しみました。
次に読む時はもうちょっと余裕が出来て、その辺りも読み込んでいけるかな。




この本を読んで感想をアップしたのは2005年の7月。
当時のブログでは、
もっと安価な値段で本にしてほしい
岩波文庫あたりで~
とかってコメント欄で話をしていましたが、
後(多分)に
平凡社からちゃんと出てたんですね。
文庫ではないので、ちょっと安価とはいえないかもしれないけど。
シュルツ全小説 (平凡社ライブラリー)




あと、アデラの存在感についてもちょっと盛り上りました。

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 2014_09_14



チャイナ・ミーヴィル「キング・ラット」角川書店


うへ~。と、いいつつ面白かったです。

舞台はロンドン。
突然父親が何者かに窓から突き落とされて殺され、
しかもその容疑者として逮捕されてしまう主人公のサウル。
何が自分の身に起きたのか把握できないまま
独房で呆然とする彼の前に
一人の男が突然現れます。

薄汚れた服を着て、
悪臭を放つその男の名前は
「キング・ラット」。

みかけは人間だけど、
その中身はネズミ(精神的に、じゃなくて、心も肉体も)
というとんでもない生き物だったのでした。

キング・ラットに導かれるまま
独房を脱獄してロンドンの下水道に身を落ちつけたサウルに、
キング・ラットは恐るべき言葉を告げます。
「おまえの母親は俺の妹なんだ。おまえの母親はネズミだったんだよ。」
「ネ、ズ、ミ」

悪臭漂う下水道の王国、
おびただしい数のネズミたち、
鳥の王、
くも男、
そして全ての生き物を狩るという、現代に復活するハーメルンの笛吹き…。

いや~、
汚物と悪臭と腐敗した食べ物に満ちた、
スピード感あふれるダークファンタジーでした。

中身も気持ち悪いけど、表紙の男も気持悪過ぎ!
(2002年1月21日)

 2014_09_14



チャイナ・ミエヴィル
「都市と都市」ハヤカワ文庫



読み終わりました。

あー、面白かった!
さすが
ヒューゴー賞
世界幻想文学大賞
ローカス賞
クラーク賞
英国SF協会賞 受賞作
という感じ。

物語は、ペジェルのローラースケート場に捨てられた若い女性の死体から始まります。
主人公は過激犯罪課のボルル警部補。
被害者は、ストッキングとハイヒールしか身に着けていない、
かなりの厚化粧の若い女。
当初は、売春婦か何かと思われたが、どうもそうではないみたい。
死体を運んだと思われるヴァンは発見され、
持主も見付かったが、持主によればそのヴァンは盗まれたのだという…。
町中にこの被害者についての情報を得るためにポスターは張ったが、
その効果も芳しくないわけで。

そんな行き止まり状態の中、
ボルルに一本の電話が入ります。
それは、
被害者の女性はマリアという名で、外国人で、
自分は彼女とウル・コーマで会った、
というタレコミ電話だったのです。
ウル・コーマはペジェルの隣の国の名前です。
が、
何故ウル・コーマからボルル警部補へ電話が掛けられたのか。
どうやって電話番号を知り得たのか?
「なぜわかったのかだと?私はあのポスターを見たんだよ」


最初は、ほほうミステリ仕立てか
ってひきこまれはしたものの、
なんとなくなかなか物語がイメージに結べなくて
ちょっとこりゃ…どうしたもんかな…
状態。

それは、
ペジェルとウル・コーマという隣り合った都市国家の異常なシステムが、
読者に説明もされないまま、
登場人物の言動の大前提にあって、
ご存知の通りといわんばかりに、
さも当り前のように語られるから。
特に
<ブリーチ>!
被害女性の母親が
「ええ、<ブリーチ>、<ブリーチ>、<ブリーチ>でしょ…」
というシーンがあるんですが、
読んでいるこっちも
また<ブリーチ>、<ブリーチ>、<ブリーチ>でしょ…
となってしまうぐらい
謎ばっかり。

でもそれが、だんだん面白くなってきて、
ボルルの捜査の舞台がウル・コーマに移った頃にはもう夢中。

主人公の警部補も、彼を補佐する女性警官も
魅力的なんですよね。
後に登場するウル・コーマの上級刑事も。

ラストは、
まさか、こんなしみじみ切ない気持になるなんて。
やられた…。
このラストの余韻に打ちのめされて、
なんかしばらくぼわーっと放心してしまいました。

うーん
色々書きたいけど、
どこまで踏み込んで書いていいのかわかんないので、
このぐらいにしておきます。


本書の最初のところにあった謝辞の最後に
ブルーノ・シュルツ「肉桂色の店」(工藤幸雄訳)
とあったので、
今日は、この本の感想と一緒に
「肉桂色の店」を読んだ時の感想と、
チャイナ・ミエヴィルの第一作「キング・ラット」を読んだ時の感想を
アップしておきます。

いやー、それにしてもおもしろかった。
この本を教えてくれた賢者の図書館様には大感謝です
 2014_09_14




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