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アモス・オズ「ブラックボックス」
筑摩書房

タイトルはなんだかな~って感じではありますが、
これが面白かったんですよ。
全編通して、
書簡といくつかの電報や覚書だけから構成される物語なんですが、
違和感なくすっと物語の世界に入っていく事が出来ました。
電報だけはカタカナなので、
ぱっと見に文意を掴む事が出来ないので辛かったですが、
まあ分量はそれほどでもないので。

物語はイラーナ・ソモという女性の書簡から始まります。
宛先は彼女の前夫。
前夫との間に生れた息子ボアズの非行について、
助けを求めるという内容をちくちく皮肉たっぷりに彩った手紙です。
ここから、
イラーナと前夫アレグザンダー・ギデオン(アレック)、
イラーナの現夫ミシェル・ソモとアレック、
ソモ夫婦と非行息子ボアズ、
アレックと彼の弁護士ザクハイム、
ミシェルとザクハイムなどの
それぞれの腹の探り合いや現在の動向などが描かれて行くんです。

アレグザンダー・ギデオンは
現在アメリカに暮す世界的にも著名な学者、冷徹な独善家です。
イラーナとアレックの離婚理由はイラーナの不貞。

その後イラーナと結婚して、
一女をもうけたミシェル・ソモは狂信的ともいえるユダヤ教一派のメンバー。
ボアズは幼いときに両親が離婚してから、
叔母がいるキブツに預けられ、その後農業学校へ入るのですが、
粗暴な問題児でどこでも上手くやって行く事が出来ません。

ミシェルが宗教がらみの人物なので、
イスラエルの政治や宗教についてももちろん描かれてはいますが、
物語の中での色合いとしては薄めですね。
それよりも各人の心のゆらぎが描かれてて、
面白いドラマに仕上がっていたと言う感じがしました。
主義主張に拘りすぎる男たちと、
その場の雰囲気と自分の感情のままに
あっちへこっちへと流されているように見えて、
実はすべての要だったイラーナというのも面白かったですね。

フランスで「フェミナ賞」を受賞しているそうです。
(2003年2月27日)


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 2015_01_18



アモス・オズ「スムヒの大冒険」
未知谷

イスラエルの本です。
これはスムヒという少年の物語で、
全編で115ページととても薄い作品。
でも、すごく良かったです。

夢見がちな少年スムヒは、
ちょっと小心でちょっとずるくて喧嘩もそんなに強くないし、
多分頭も切れる方じゃない。
イギリス統治下のイスラエルの少年ですが、
どこに住んでてもやっぱり男の子は男の子なんですねぇ。
あ、
イギリス統治下のパレスチナ(現イスラエル)と
書くべきですね。

第一章の冒頭の文なんて、
もうこれだけでも点数がぐーんと上がってしまうぐらいかわいいんですよ。

ザハリア通りのぼくんちの近くに、エスティーって名前の女の子がいた。
ぼくはその子が好きだった。
あさ、朝食のテーブルでパンを食べてるとき、
よく「エスティー」って、そっとささやいた。
するとたちまち父さんが、
「口を開けたまま食べるもんじゃない」って言った。



好きだけど好きって言えずに意地悪ばかりしてしまって、
でも好きだってこと、
彼女も知ってるかななんて考えたり……
かわいいですよね。
ちょっとダメ人間がかったおじさんが
いつも度肝をぬくようなプレゼントをくれること。
それはトルコ語のモノポリーみたいなゲームだったり、
実はどっちも雄だったことが後に判明したつがいの魚の入った水槽だったり、
ナチのお札だったり。
で、
今回のプレゼントは自転車。
スムヒはその自転車にのって、
アフリカのど真ん中のザンベジ川の源へむかって出発することを決心します。
その前に友達に自転車を見せようと思って、
そこで汽車と機関車と3メートル分の線路とあっさり交換してしまいます。

回想ものの小品なんですが、
とても淡々と語られててその分読後に余情が残るんです。
よかったです。
(2002年4月23日)

 2015_01_17



バチヤ・グール「精神分析ゲーム」
イースト・プレス

イスラエルのミステリー。
作者はイスラエル生まれで、
ヘブライ大学で20年近く教鞭をとりながら
ミステリーを執筆しているというパワフルな女性。

ユダヤ教の安息日である土曜日の朝、
エルサレム精神分析医研修センターで、
美貌の腕利き精神分析医の女性が射殺死体で発見されます。
彼女はこの日、
講演を行うことになっていたのですが、
その講演原稿がどこにも見つからない事から、
事件を担当するオヘイヨン主任捜査官は、
講演の内容がこの殺人に関係しているのではないかと疑いを持ちます。

イスラエルの精神医療の世界でも、
ある意味異端児のように見られてる「精神分析」という分野。
この狭い世界の持つ独特のシステムとか
倫理観、閉塞感が、
オヘイヨンの捜査から見えてきます。

結構面白かったですね。
精神医療の現場での事件ですが、
メインが患者ではなく
精神分析医たちというのも面白かったです。

オヘイヨンというキャラクターもなかなか魅力的で、
バツイチ、思春期の息子、
人妻との切ない恋、
大学での研究者としての道を
ある理由から断念しなければならなかった過去など、
事件捜査の影にちらちら見えるところも良かったです。
(2002年6月2日)

 2014_11_06




わたし調べマイナー度ランキング、
21位がバチヤ・グール。
ちなみに女性らしい。
外国人は名前だけでは性別がわかりにくいです。




バチヤ・グール「教授たちの殺人ゲーム」
イースト・ブレス

この作品はイスラエルのミステリー。
面白かったですよ。

エルサレムにあるヘブライ大学で、
著名な詩人でもある文学部の教授が殺されます。
で、
オヘイヨン捜査官が捜査に乗り出し、
被害者を取り巻く人間関係や大学の人々の心理を探って行きます。

象牙の塔で行われる乱れた男女関係、
扱いづらい教授陣。
やがてオヘイヨンは事件の鍵が
「詩」にあることに気がつきます。

実は事件の真相は割とわかりやすいんですが、
それを差し引いても結構面白かったですね。
登場する人々すべてが丁寧に描かれてるし、
捜査にあたる主人公のオヘイヨンのキャラもいいんです。
自分も道ならぬ恋に苦しみながらという生身の人間ぽさ、
冷静に任務を遂行しよう
と考えながら捜査する姿の誠実さがキュートでしたねぇ。

この作品は
グールのオヘイヨンものの第2作目なんだそうで、
1作目は「精神分析ゲーム」という邦題で出ているみたい。
オヘイヨンがなかなかよいキャラだったので、
そっちも探して読んで見たいですねぇ。
(2002年4月21日)




イスラエルの現代ものの作品。
以前紹介したイスラエルの児童文学と比べて、
すっかり先進国になってます。

ちなみに舞台になっているヘブライ大学は、
実在の大学のようで、
国際的にも結構高ランクなんだそうです。

と、本文の外にいくつか付け足しましたが、
そのほとんどを
明日紹介する「精神分析ゲーム」で
書いていた、という。

 2014_11_05




タマル・ベルグマン「<むこう>から来た少年」
未知谷
村田靖子 訳

イスラエルの児童文学です。

この物語は
1948年のイスラエル建国前後の
農業共同体(キブツ)の子供の家の子供たちを描いたもの。
訳者あとがきによると、
当時のキブツでは老若男女だれもが働かなくてはならなかったので、
母親も子供を預けて働かないといけなかったらしいんです。
で、
子供たちは「子供の家」で集まって暮し、
その年齢に合わせた保母、寮母、教師がその世話をする、と。
遊ぶのも食べるのも「子供の家」で、
その合間に両親の所で団欒を楽しみ、
また夜は「子供の家」へもどるという生活だったみたい。

ある時、
その子供の家に、
ヨーロッパから一人の少年がつれてこられます。
彼は第二次大戦中、
父親はナチスによって連行され、
母親と共にポーランドを転々とし、
最後にとある農家の地下室で匿われて生き延びたのですが、
母親が病気になり、
そのまま病院で死んでしまったんです。
でも彼は、
その死目に会ってないので、
母親は生きているのだと頑強に信じているんです。

辛い現実に傷つけられ心を閉ざしている少年ですが、
言葉の通じないイスラエルの子供の家で
少しずつ心の傷を癒していくことになるんです。
けど、
戦争の影はまだイスラエルにまとわりついたままで…。

切ないけど、
ラストに希望があるので救われました。
(2002年10月24日)




実はキブツって現在もあるんですね。
建国当初だけにあったものじゃないんだ。

こういう社会システムって、
旧ソ連のコルホーズとか、
そういうのも連想しますが、
SFなんかでも、結構登場するシステムでもありますよね。

 2014_10_23




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