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ソーニャ・ハートネット「木曜日に生まれた子ども」
河出書房新社

オーストラリアを舞台にした物語。
父コートが兵役を終えた報酬として国から貰った開拓地。
フルート一家は、金鉱掘りの建てた粗末な家に暮らしていた。
土地は痩せていて手付かずのまま。
わずかにコートの狩るウサギの毛皮だけが彼らの収入だった。
ハーパーはフルート家の次女。
姉のオードリー、兄のデヴォン、幼い弟のティン。
そして新たな弟カフィがハーパーの兄弟。
ハーパーがもうじき7歳になる頃、カフィが生れた日から、
ティンは穴を掘ることに異常に執着しはじめた。
ベランダの下から出てこないでずっと穴を掘り続けているティン。
マーフィおばさんは、
ティンが赤ん坊のカフィにやきもちを焼いているのだと言ったけど、
ハーパーはそうではないことを知っていた。
ティンは穴を掘りたいからそこから出てこないだけなのだ。

一家は貧しい。
そして、オーストラリア全体が不況にあえぐ時代だった…。
表紙の裏に書いてある
「不思議な能力を持つ弟ティンと彼に守られた家族の絆の物語」
という言葉には、ちょっと首をかしげたくなるけれども、
なかなか読み応えのある作品でした。
どうしようもなく貧しくて、どうしようもなく悲惨な毎日。
なんだかずどーんと滅入っちゃうような話なんですよね。
ティンって不思議な能力を持った弟の存在が、
また全然福音じゃなくて…
うわ~どうなっちゃうんだろう?という
(ワクワク感抜きの)ハラハラの連続。
ただ、主人公の少女ハーパーの、
家族への愛情に溢れた強気なところが
この物語のしっかりした軸となってて、
たんなる悲惨な家族の不思議なお話に終らせなかった
という感じでした。

オーストラリアの厳しい自然を舞台にして、
語り口はあくまでも半端な同情を拒むような緊張感のあるリリカルさ。
…でも、なんだかどこかで読んだ事があるような
微妙な気持が拭えないんです。
もちろん、物語として似たようなものを読んだというわけではありません。
じゃ、何かと申しますと、
ここ数年出版されてるヤングアダルト向けの本そのものの雰囲気だ!
ってそんな感じなんです。
うーん、もしかしたら、
訳者の金原さんの文体がそう思わせるのかもしれません。
金原さんの訳はホントに読ませるのだけれど…
その上手い読ませ方に金原節、みたいなものがあるなって。
とても魅力的な文章を書かれるから、
きっとひとつひとつの印象も強いんでしょうか。
なんだか本書そのものの感想よりも、
そっちの方ばかりに頭が行ってしまいました。
ごめんなさい。
(2005年6月8日)

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 2016_03_13




ピーター・ケアリー「ケリー・ギャングの真実の歴史」
早川書房

19世紀イギリス植民地時代のオーストラリア。
オーストラリアの伝説の義賊、
ネッド・ケリー(1854~1880)の生涯を
彼の手記という手法で描いた作品である。

貧しいアイルランド移民の夫婦の長男として誕生したネッド・ケリーは、
幼い頃から貧しさと犯罪者の息子というレッテルの中で育った。
アイルランドで大罪を犯して流刑された過去を持つ父と、
札付きの無法者の家系の母。
ネッドは家族を愛し、父を尊敬していたが、
その父への尊敬がぐらつくようになったのは、
父が女物のドレスを身にまとう服装倒錯者
だと警官から言われたことだった。
ネッドが父の服装倒錯について
その真実を知ることになるのはもっと先の事である。
10歳のネッドの仔牛を盗んで殺した罪をかぶって投獄された父は、
とある出来事が発端で出獄することになるが、
その後すぐに死んでしまう。

父を亡くした一家は、自分たちの土地を求めていた。
やっと手に入れた土地は開拓する価値もないような土地であったが、
ネッドは一家の長男として、
愛する家族のために働き続けた。
しかし、
母の再婚を期に、山賊ハリー・パワーに引き渡されてしまうのだった。

ずっしりした作品で、
物語の中にぐいぐいと引きこまれてしまいました。

ケリー・ギャングって、知らなかったけれど、
オーストラリアではとても有名な人物らしいですね。
なんとなくアメリカのビリー・ザ・キッド
みたいな人物なのかと思って読み始めたのだけれど、
全然違いました。
なんでこういうことになっちゃうんだろう……ってぐらいに、
物事は悪い方へ悪いほうへと進んでいくんだけれど、
「転落」というものではないのね。
ネッドがどうあがいても、
彼の人生のレールは穏やかな方へは敷かれていなくて、
まっすぐ進もうとしてもそこには道がないの。
濡れ衣につぐ濡れ衣。
それは警察だけにかぎらず、
彼の身辺の人々も、ネッドを恐ろしい無法者にしたてていくんです。
ネッド本人は穏やかな生活を望み、
馬を愛する真面目な青年なんだけど。
なんだか、
本人にはなす術もなくどんどん戻れない道へと進むしかなかったというのは、
ロディ・ドイルの「星と呼ばれた少年」を思い出させました。

ネッドがこれほど純粋でなければ、
そして「正義」に幻想ともいえる期待を持っていなければ、
ここまで悲惨な物語にならなかっただろう、それが辛いですね。

オーランド・ブルームがジョー・バーン役をやっている
「ケリー・ザ・ギャング」
というオーストラリアの映画があるらしいですね。
見たい、ような見たくないような……。
(2005年5月2日)

 2015_05_18



ピーター・ケアリー「イリワッカー」
白水社

すっごく面白かったです。
この「イリワッカー」というのは
オーストラリアの言葉で「本職のペテン師」とか
「詐欺師」「いかさま師」などという意味なんだそうです。
と、言うわけで、
舞台はオーストラリア。
現在139歳だというハーバート・バジャリーが語る
バジャリー家ほぼ4代に渡る100年ほどの物語です。
自らを大嘘つきと言って憚らないハーバート・バジャリーは、
現在どうやら大勢の見物客にジロジロ見物され、
専門家からあれこれ測定されたりするという生活をしているらしいです。
そしてこの頃オッパイが膨らんできたのだとか……。

さて、
この「イリワッカー」第一部は、
1919年、ハーバートが33歳の時の出来事から始まります。
ジーロングという田舎町に彼の乗った飛行機が不時着。
石ころだらけの牧草地、
見えるのは水タンクに錆たタンクに、石を載せたトタン……。
ちょうどその瞬間そこでピクニックをしているという変な成金の家族と
ハーバートはそうやって出会ったのでした。

成金で無骨で正直者で純朴な一家の主ジャック・マグラー、
その妻でどうもややオツムが弱いと
夫以外の皆から思われているモリー、
そして「恐怖の小娘」「フラッパー娘」と呼ばれる17歳のフィービー。
飛行機に興味を示したジャックに金を出させて
国産飛行機工場を作ろうと持ちかけるハーバート・バジャリーですが、
いつしか彼の頭の中はフィービーのことだらけに……。
その後、なんだかんだとあって、
結局二人の幼な子をハーバートの元に残して
妻フィービーが彼の飛行機で、
彼女の古くからの愛人アネットと共に出奔するまでが描かれます。

第二部は、ハーバート・バジャリー45歳のとき。
チャールズとソニアという二人の子供を連れて
極貧生活に喘いでいる時、
リーアという蛇踊りの若い女と出会います。
彼女は政治活動をしている夫を金銭面で支えるために
旅から旅への芸人生活をしているのでした。
そして、このリーアとの恋に落ちたハーバートが、
幼い頃面倒を見てくれた中国人と再び相見え、
最終的に刑務所へ入れられることになるまでが描かれます。

第三部は、
語り手はハーバートのままではありますが、
物語の主人公は彼の息子チャールズへ、
そしてその後チャールズの息子ヒサオへと移っていきます。
大嘘つきの父を持ちながら
嘘のつけない人間というチャールズが世界一のペットショップを夢見、
成功させていくのですが、
この第三部がまた、
やたら素っ頓狂で。そして、人生の苦味がやたら効いてて。

いやもう、めちゃめちゃ面白かったです。
真面目に解説などいたしますと、
オーストラリアのイギリス化アメリカ化の歴史を
寓話的に捉えた物語ということになるんでしょうね。
主人公ハーバート・バジャリーは
国産の飛行機をつくろうとするような国粋派な男ですが、
出来るはずの無い国産飛行機より
イギリスから飛行機を輸入したほうが良い
という大方の意見の前に挫折します。
彼の息子といえば、
イギリス製のオートバイにアメリカ製のサイドカーをつけて乗りまわし、
オーストラリアの動物をアメリカ人のお土産として売る
という商売をしはじめます。
そしてその息子ヒサオ
(一応チャールズの末息子ですが、
アーモンド型の瞳に小柄な体で日本人のような名前なんですね。
母親が日本人ではありません。)は、
日本の「ミツビシ」と手を組んである事業をはじめるという。

この奇想天外波乱万丈な「イリワッカー」の大ぼら世界。
蛇踊りのリーア曰く
「元々アボリジニーの土地だったのに、
誰もが開拓できるという嘘をでっちあげて始まった国」オーストラリア。
国を挙げての大嘘の歴史で成り立つ国そのものが
「イリワッカー」ということらしいです。

って、まあそういうところは横においておいても
とにかくめっちゃ面白い本でした。
(2003年2月18日)

 2015_05_17



ジェイムズ・カウアン「修道士マウロの地図」
草思社

16世紀ヴェネツィアの修道士マウロが目指したのは、
世界中の人々の営みや思想、哲学の全てを盛り込んだ
世界地図を作り上げること。
が、
彼は旅をしない。
彼は臆病な捕らわれ人であったとも言えるだろう。
その彼に情報をもたらすのは、
地図の余白である辺境を見聞した商人であり、
船乗りであり学者たちであった。
彼等の奇奇怪怪な物語に耳を傾け、
マウロが見出した世界とは……。

結構面白く読みました。
ちょっと退屈なところもあるけど、
馴れて来ると面白くなってきました。
派手な展開なんて全くないんですが。

読後に感じたことといえば、
現在はありとあらゆる情報が垂れ流しの状態にあるから
「情報」ってものにすごく鈍感になってるかなって事かなぁ。
外国でなくとも
自分が行った事のない場所についての情報は
これから自分自身が赴くか、
そこへ行った事のある人間から話を聞くしかないよね。
それを話してくれた人達の
生命の一部を分け与えられたと感じ、
それらを死の欠片の様に思うマウロ。
そっか…そっか…という思いでした。

ちなみにネットで他の人の感想を読み漁ったんだけど、
この作品の評価は割れてます。
特につまんなかったと感じる人は
エーコと比べる人が多かったみたい。
私はエーコは未読なんで比べる事が出来ないけど、
比べちゃって面白さがそがれるんなら、
こちらの作品が先でラッキーだったのかしら。
(2001年7月5日)




ここでエーコの名前が出てたから
でもないかも知れないし、そうだからかも知れませんが、
2001年の9月10月にエーコ作品を読んでるようです。


 2015_02_25




作者、マーレル・デイは、
オーストラリアの女性の作家。
それまでは探偵小説とか書いていた人の異色作らしいです。
Wikiにはマレール・デイってありますね。




マーレル・デイ「神の子羊」
DHC

「神の子羊」、
これは、
うーん、
生理的な気持悪さが爆発するおとぎばなし
という感じでしたね。
と言っても
別に作中で語られる「おとぎばなし」の所為ではありません。
全体的、
特にラストの展開がおとぎばなしって感じでした。

舞台は人里離れた島にある、
人々の記憶からも忘れ去られたような荒れ果てた修道院。
そこに三人の修道女が暮らしています。

イフィジアイナ、
マルガリータ、
カーラの三人の老修道女の暮らしは、
羊と共に生きる野蛮で不潔で、
ある意味魔女っぽい……。
だけど信仰の元で規則正しく営まれています。

彼女たちは皆、
長い年月をこの修道院の敷地から一歩も出ないで暮らしているという、
世界は修道院だけにあるような感覚なのです。
特に一番若いカーラは
赤ん坊の時に修道院に捨て置かれていたという身の上なので、
全く外の世界を知りません。

ある日、
この修道院に一人の青年がやってきます。
青年は司祭で、
この場所をリゾートに開発しようと下見にやって来たのでした。
彼は、老女たちの奇妙でおぞましい生活に驚きます。
そして、
つい彼女たちに自分の目的を喋ってしまいます。
立ち退きという危機の前に、
老女たちは司祭を監禁し、
正しい道へ戻すための教育を施そうとするのでした……。

ああ~っ、
こわい物語でした。
巻末の訳者あとがきにある

『眠れる森の美女』と
テレビドラマ『ロビンソン一家漂流記』を合わせて、
さらにゴールディングの『蝿の王』と
スティーヴン・キングの『ミザリー』、
また『三匹の子ブタ』の味付けをしたもの

に半分納得。
テレビドラマ『ロビンソン一家漂流記』と
『蝿の王』を合わせたストーリーと、
『ミザリー』と『三匹のクマ』を合わせたストーリーが
絡まりあってるって感じがしました。

囚われた司祭、
私が彼ならすでに狂ってしまうんじゃないかと思うぐらいなんだけど、
狂わないの。
人間の適応能力ってこんなにすごいのか
と思わずには居られません。
フィクションだけど。

あと、
三人の中では一番若いシスターのカーラのこわさ。
カーラの体は老女、
頭の中は永遠の童女というアンバランスさが、
めちゃめちゃ怖かったですね。
私私私……って。
ううっ。
この人の存在が私にはダメでした。

実際のところ、三人のシスターがとにかく
強烈すぎて、
のこのこやってきた司祭は、
まあ、よく頭が変にならないなと
思う程度の印象でした。

(2002年12月19日)

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