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V・S・ナイポール「ミゲル・ストリート」





V・S・ナイポール「ミゲル・ストリート」
岩波書店

カリブ海の小島トリニダードの首都、
ポート・オブ・スペインの貧しい街区ミゲル・ストリート。
それが「ぼく」の育った場所だった。
土地勘のない人にとっては、
ミゲル・ストリートも
よくあるただのスラムとしか見えないかもしれない。
けれど「ぼく」
子供だった「ぼく」にとってはここが世界であり、
ここに住むひとりひとりが誰とも違う個性を放っていたのだった。

トリニダード・トバゴ出身のナイポールの、
実質的な処女作なのだそうです。
16章にわたるこのストリートの偉人たちの姿を、
そして最後の17章で、
成長してストリートを離れる主人公の姿が描かれてます。

ボガードと呼ばれた、
全てに退屈しきったような様子がストリートのみんなを魅了した男。
自称大工だけれど、
「本当に作るに価するものは名前のないモノだけなんだ」
という信念で
いつも「名前のないモノ」ばかりつくって
「ぼく」の好きだったポポさん。
ピンクの家に住み、
妻や子供たちを殴り続けた男ジョージ。
ジョージの息子で頭の良かった「ぼく」の友だちエリアス。
ミゲル・ストリートのみんなに
狂っていると思われていたマン・マン。
世界でいちばんすばらしい詩を書いている
という孤独な詩人ブラック・ワーズワース。
ミゲル・ストリートの中で一番物騒に見えた大足(ビッグ・フット)。
笑えないおどけ者だった花火技術者のモーガン。
ついていけない学者先生タイタス・ホイット。
父親の違う8人の子供を持つ女ローラ。
子供たちの憧れ、青いゴミ収集カートに乗る伊達男エドス。
空家に越してきた美女とダメ男のカップル。
機械いじりの天才のバクーおじさん。
「新聞に書いてあることはどんなことも信じちゃいけねえ」
という真理を発見した散髪屋のボーロ。
ストリートの中心的人物だったハットの弟で絵描きのエドワード。
そして、そのハット。
いつでも「ぼく」の疑問にやすやすと答えをくれた、
ちょっとホラふきで、
面倒見がよくてみんなから愛されていたハットは
幼い頃の「ぼく」がひそかに敬う存在だった。

ユーモアに満ちた軽い筆致で描き出される彼らの物語は、
ほのぼのとペーソスが漂うんですよね。
どんな悲劇もからりとカリプソに乗せて笑い飛ばす風通しのよさは、
やっぱり南の島なんだなぁ。
「地に足をつける」ってことが、
真面目に働くということとは違う意味を持つあたりも、
独特の土地柄、人柄があるからこそなのかも。

ミゲル・ストリートの偉人たち、
かつて「ぼく」を怖がらせたり魅了した人達が、
少しずつ色あせてくる。
切ないけども、たしかにやっぱり当時は彼らは偉人だった
って読後にじーんと沁みました。
みんなが愛しいよぅ!って心の中で叫びたい。
そんな感じかな~。

実際のデビュー作となった
「神秘の指圧師」のはじけっぷりには及ばないけれど、
逆にあそこまで弾けてないのがまた魅力です。
都会っぽいしね。

そうそう、
「神秘の指圧師」の主人公ガネーシュが
ちらりと登場して私を喜ばせてくれたんですが、
よく考えると、
この「ちらりと出たガネーシュ」の方が
「主人公ガネーシュ」より先に書かれたものなんですよね。
ということは、
すでに次の作品の構想がねってあったのかな?
ん?
なんだかわからなくなっちゃいました。
(2005年4月23日)

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 2015_03_04




V・S・ナイポール「ある放浪者の半生」





V・S・ナイポール「ある放浪者の半生」
岩波書店

ふふっ、面白かったです。
前に読んだ「神秘な指圧師」のような
明るい弾け方ではありませんが、
読み始めたら止らない魅力がありましたね。
徹底的に客観的に描かれるダメ男。
インドで、ロンドンで、アフリカで、
どこへ行っても異邦人的な存在でしかない主人公の悲哀が
ユーモアと共にうっすらと漂ってて……。

主人公ウィリーの父親はインドの僧侶の家系の出身。
「一、サマセット・モームの訪問」
という第一章では、
ウィリーの父親の半生が描かれます。
父親の父、
つまりウィリーの祖父は
代書屋から藩主の宮殿の役人に出世した人で、
若き日のウィリーの父は、
祖父への反発などから、なんだか教科書を火に投じたり
(しかし、あまり派手にでもなく)、
別に好きでもなんでもなかった
後進民(カースト外?)の女性と付き合って見たりした挙句、
その女性と結婚せざるを得なくなり、
仕事の不正も露見したことから、
何故か寺院の庭で沈黙の行を行うという行動に出ます。
いじめられない為らしいのですが……。
そこで、外国から来た作家の目にとまり、
なんだかんだで妙な尊敬を集める有名人になってしまうんですね。
その外国から来た作家というのがサマセット・モームその人で、
主人公ウィリー・サマセット・チャンドランの
ミドルネームが付けられたのでした。

第二章
「二、第一章」
では、
そんな父親に対する反発と共に育った
ウィリーの物語が始まります。
父親やインド社会、
通っていたミッション・スクールなど
身の回りのすべてから逃避したいというだけの理由で
20歳のウィリーはロンドンに留学することになります。
が、
インドのミッション・スクールで想像していた夢のロンドンと
現実のロンドンの落差に早くも失望したウィリー。
すこしずつロンドン生活に慣れていく一方で
どんどん無気力でモラトリアムな人間になっていきます。

第三章
「三、再訳」で、
ウィリーは知り合った女の子アナにくっついて
彼女の故郷であるアフリカへ渡りますが……。

原題は「HALF A LIFE」。
これは主人公の半生という意味ではなくて、
どっちつかずの中途半端な生のことを指しているのではないか
と本書の訳者は書いてます。
確かにウィリーもウィリーの父親も
とめどなく流されながら、
責任だけは取らなくていいように立ちまわるという
非常に中途半端な半生を送ってます。
アフリカで18年も暮していながら、
な~んにも成ってないウィリー。
18年後にそこを出て行くまで、
自他共に
「ロンドンからアナに付いてきたインド人の愛人」
程度なんですね。

ラスト、
君の人生を生きることに疲れたんだ
というウィリーに対してのアナの
たぶん、私の人生でもなかったんでしょうけどね
というびしっとした台詞が印象的でした。
(2003年2月6日)

 2015_03_03




V・S・ナイポール「神秘な指圧師」





V・S・ナイポール「神秘な指圧師」
草思社

作者はイギリス領のトリニダード・トバゴに
インド人移民三世として生れて、
「自由の国で」でブッカー賞を受賞、
2001年にはノーベル文学賞を受賞したという作家。
で、
トリニダード・トバゴってどこ?
って思ったんですが、
ベネズエラとドミニカの間にある「トリニダード島」と
「トバゴ島」からなる国なんだそうです。
本作はナイポール25歳の時に書かれたデビュー作で、
出身地トリニダード島を舞台に描かれた作品です。

語り手が小学生の時、
サッカーの試合で膝に怪我をし、
母親につれられて一人の指圧師の元へ行くところから
物語は始まります。
山のような本で溢れ返ったその指圧師の家に少年は驚きます。
当時「本」が家にあることすら
非常に珍しい時代だったようです。
明かに怪我をしている膝を見ても、
悪いところはないと言い切る指圧師。
貰った薬を服用したのだけど結局膝の怪我は治らず、
医者にかかることになりますが、
母親も少年もその指圧師を恨むことはないのでした。
その指圧師こそ、
この作品の主人公ガネーシュなのです。

第一章は
そんな具合に出会った語り手とガネーシュのエピソードが描かれ、
実際のガネーシュの物語は第二章から始まります。
父親の後押しで
クィーンズ・ロイヤル・カレッジに入ったガネーシュは、
その高校で、
田舎者のインド人であることに気後れしながら過します。
卒業後小学校教師となるものの、
学校側と反りが合わずに失敗。
父親の死をきっかけに田舎へ帰った彼は、
近所の商人から
「うちのリーラを嫁にもろうてくれんさらんか」
と言われ、あっさり
「もらおうかの」
と即答します。
が、
結婚式での持参金の儀式できっちりねばってつりあげ、
結婚式の後、舅の商人に
「あいつはわしを丸裸にしたんじゃ。
女房に死なれ、子どもまでとられて哀れなやもめ男のこのわしを。」
と激怒させます。
そんなガネーシュが、
指圧師となり、神秘家となり、立法院議員に、
そして最後には大英帝国勲爵士に叙せられるまでの人生が語られるんです。

皮肉が効いてて、笑えて、
ラストに語り手がイギリスでガネーシュに再会するシーンも印象的で、
かなり面白かったです。

最初、
このトリニダード・トバゴのインド人たちの言葉が
あやしげな広島弁であることに
いささか違和感を憶えたんですが、
読んで行くうちにピタってハマルんですよね。
(2002年9月4日)
 2015_03_02




パトリック・シャモワゾー「幼い頃のむかし」






パトリック・シャモワゾー「幼い頃のむかし」
紀伊国屋書店

クレオールの作家として初めて、
「テキサコ」でゴンクール賞を受賞したシャモワゾーの、
自伝的な作品です。
面白かったです。

シャモワゾーは、
カリブ海のマルチニック島の
首都フォール・ド・フランスに生まれた作家で、
この「幼い頃のむかし」も、
そのフォール・ド・フランスに育つ幼い少年の日常を、
幻想的に描いてあります。
生命感にあふれた日常が少年というフィルターを通すと、
幻想的で非日常的に紡がれる物語となるわけですね。

第一部は、
幼い少年が、
頭というより五感で感じた日常が描かれます。
幼い上に内向的な性格で、
多分一日のほとんどを家の中ですごしていたんだろうな……
ということが、
言外に感じられます。
蜘蛛など小さな昆虫にはまり込んだ「殺し屋の時代」、
炎に魂を浄化された「火の時代」、
父親の剃刀をつかった「ジレットの時代」
などと分類した幼い少年時代は、
ちょっとエキセントリックだけれども、
誰もが多分通じるものがあるのではないでしょうか?

「二ノットおばさん」
と呼ばれる少年の母親のバイタリティも魅力的でした。
市場で値切る達人で、子育ての達人という感じ。
線の細い少年と対照的に力強い感じがしましたね。

なんて書いてますが、
実は結構読むのがしんどかった本でした。
特に前半。
「テキサコ」の時はそこまで感じなかったんでですが、
なんだかやたらと言葉が硬い感じがしたんですよ。
もって回りすぎというか。
で、
なかなかこの幻想性に入り込むことが出来なくて。
でも、
気が付いたら気にならなくなっていたんですよね。
それって、私が文体に慣れたのか、
訳者又は作者の文章が途中で微妙にやわらかくなったのか?

そうそう、
サイクロンに持っていかれてしまったおじさんの話とか、
子供の病気が熱や寒さのせいでなければ「悪い黒ん坊」の呪いのせいだ
という話なども面白かったですね。

きっと原書で読んだら、
より詩的で幻想的な雰囲気が味わえただろうな
という気がする作品でした。
っても、チャレンジできないけどね。
(2003年4月15日)

 2014_12_10




エドウィージ・ダンティカ「クリック?クラック!」






エドウィージ・ダンティカ「クリック?クラック!」
五月書房

うーん、よかったです~。
先日読んだ「息吹、まなざし、記憶」の作者の短編集ですが、
前作以上によかったかも。

この本は、
9つの短編とエピローグで構成されているんですが、
その一篇一篇に、
軍事独裁政権下のハイチに生きる女と男の姿が描かれています。

合衆国へ密出国する船に乗っている活動家の男と、
ハイチに残った恋人が、
お互いに届かない手紙を書き綴る「海に眠る子どもたち」や、

ハイチと隣の国の国境にある「虐殺の川」と呼ばれる川と、
魔女だと告発されて刑務所で死んでいった母の物語「1937年」、

熱気球を盗んで乗って、
飛びりて死んだ男の「火柱」、

小さな息子と暮らす部屋に
日代わりで夜な夜な愛人たちを招きいれることで
生計を立てている女の「夜の女(ハイチにて)」。

また、
夫に裏切られ、今は女中として働いている女が、
捨て子を拾ってくるのだけどそれは死児だったという「ローズ」、

秘密警察に殺されたらしい女性ジャーナリストを探しに来た
アメリカ人の娘を案内するうちに、
ハイチの少女が自我に目覚めていく「失われた平穏」、

パリから来た女性画家の
ヌード・モデルをしている少女を描いた「永遠なる記憶」は、
ハイチに生きる人々を描いています。

残りの2編「昼の女(ニューヨークにて)」と
「カロリンの結婚式」は、
母と共に合衆国へ渡って来た
合衆国育ちのハイチ人の若い女性が描かれていて、
作者の姿が投影されているのかな~なんて思いました。

かなり辛い内容の作品ばかりなのですが、
政治に、歴史に、男たちに踏みつけられ、
虐げられてきた女たちの嘆きというよりは、
そんな辛い中にも、
両足で立って、
それが出来なければ這ってでも生きていく力強さが感じられました。
繊細でありながら歯切れの良い文章も、
そう感じさせる理由の一つかもしれません。

作中に出てきた
「少女は母親を失ったとき、女になるって昔から言うわ。」
という台詞が特に印象的でした。
(2003年3月31日)




タイトルの「クリック?クラック!」という言葉。
昔話とか民話とかを話すときに、語り手が言う決まり文句が「クリック?」
で、
聞き手がそれに「クラック!」と応える、
というものなんだそうです。
アメリカ人よ、こんなお話があるんだよ
みたいな感じなんでしょうか。

 2014_12_02




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