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ロバート・A・ハインライン「スターファイター」

これは純然たるSFでありつつ、純然たる青春小説ですね。
宇宙ものでありながら、小難しい公式なんてなし。
とにかく楽しくハラハラドキドキの冒険なんですね。
というか、
わたしが一番好きなのは、主人公キップが、
最後に家へ帰るところだったりします。

宇宙へ行く事を夢見る高校生キップは、
石鹸会社のキャンペーン「月旅行無料ご招待」の懸賞に応募しますが、
残念ながら一等を逃してしまいます。
代りのびっくり賞の商品はなんと中古の本物の宇宙服。
手紙によれば、宇宙服がいらない人は、
送り返せば現金500ドルと交換してもらえるということなんですが、
もちろんキップは宇宙服を換金したりしません。
自分の工作室でコツコツと
その合衆国空軍の払い下げの宇宙服を
実際に機能する様に修理しちゃったりします。
ここまでの話だけでも充分面白いんですよね。
町の人達を巻き込んでの懸賞応募作戦とか、
宇宙服修理の行程だとか。
とは言っても
宇宙服と引き換えの500ドルがあれば、
彼の大学進学の望みも叶います。
「オスカー」と名付けた程に愛着の湧いた宇宙服を手放して
大学進学する決心をしますが……。
オスカーを着込んで最後の深夜の散歩をするキップは
突然現れた宇宙船に乗せられ、連れ去られてしまいます。
自称天才のおませでやんちゃな少女「ちびすけ」が
これがまた魅力的なキャラクターなんです。



ちなみに同名の映画がありますが、
多分ハインラインとは関係はないような気がします。
映画のほうではビデオゲームの腕を買われて宇宙の戦士に、
みたいな感じだった覚えがあります。
その映画と混同されることを嫌った、
という理由ではないとは思いますが、
本書は
「大宇宙の少年」→「スターファイター」→「大宇宙の少年」
と、題名の変遷があります。
ちなみに、わたしが最初に読んだのは「スターファイター」でしたが、
近年になって買いなおしたものは「大宇宙の少年」でした。

このブログに転載している感想は、
2000年から2005年ぐらいに書いたものなんですが、
その間にハインラインはたった一冊しか読んでないみたいですね。
上記の「スターファイター」は、
一人の作家につきお気に入りの作品を一つ
という企画で書いたものです。
で、たった一冊の感想が以下のものなんですが、
2001年、感想というか読了雑感程度の文章なので、
なんだかなぁという感じ。


ロバート・A・ハインライン「宇宙の孤児」

まず、読んでて思ったのは、
SFってしばらく読まないと
なかなかその設定の中に入り込めないなってこと。
本書の場合は、主人公ヒュウに全然魅力を感じなかったから、
余計になじめなかったのかもです。
でも
反乱が起こって航宙士のほとんどが死んでしまった恒星間宇宙船が、
長い年月を経て、
新しい神話を持つ中世的迷信の世界に変貌してる
って設定が好きですね。
<ミューティ>と呼ばれるミュータントの方々もいいな。
(2000年12月10日)

ね、この適当さ。
ちょっと分りにくいと思うので、
補足しておくと、
本書は、<船>と呼ばれる世界の物語。
実は<船>は本当に船なんです。
世代宇宙船バンガード号といいます。
目的地に到達するまで、何度か世代を交代しながら、
長い長い船旅をする宇宙船なわけですが、
これが感想の中でも書いた「反乱」が起ったせいで、
そもそもの目的を失った、
まったく新しい社会が育ってしまうんです。
しかも二つ。
一つは主人公側である<船員>たちの社会。
もう一つはミュータントたちの社会。

というわけで、
奇しくもハインラインのジュブナイル系の作品二つになってしまいました。

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 2016_10_12




ダン・シモンズ「夜更けのエントロピー」

河出書房新社の奇想コレクションの第一弾が
本書「夜更けのエントロピー」です。
実はこの本がダン・シモンズ初体験となりました。
「ハイペリオン」「夜の子供たち」「エンディミオン」など
タイトルだけは知ってるんですけど……。
まあ、それはともかく、私にとっての初シモンズは、
なんというか不思議な感触を残すことになりました。
いくつかの作品に関しては、
「さあ、このグロテスクさの極みの果てのオレの奇想におどろけ」
的なあざとさがあるんですが、
よく考えたら、
「奇想」コレクションですからねー。

「黄泉の川が逆流する」
大好きな母の葬儀が終って母の棺が埋葬されると、ぼくたちは家に帰った。
そして母の帰りをみんなで待っていた。
ウィルおじさんは父の決断を認めなかった。
その頃は、世間の「復活主義者」への風あたりが強かったのだ…。
シモンズの処女短編なのだそうです。
うん、これはとても面白かったです。
ホラーチックなゾンビ話とはまったく別ものの、死体復活の技術。
そしてじわじわと壊れていく家族の姿が淡々と描かれます。
ラストは背筋がぞくっとするような……。

「ベトナムランド優待券」
ベトナム戦争をレジャー化させた「ベトナム・ランド」。
水田の上を飛びながら銃をかまえたり、道端でくりひろげられる戦いに、
ガイドに従いながら参加できる。
ジャスティン・ジェフリーズはこのツアーに家族で参加していた。
妻と幼い二人の子供と、
かつてベトナム戦争に従事したことのある妻の父と共に…。
なんというか、とてもアメリカ的な作品ですね。
いつかアメリカに世界中がひれふすような設定と思うのは穿ちすぎかな?
過去の戦争をレジャーとして切売りするという設定じたいが既に怖いです。

「ドラキュラの子供たち」
チャウシェスク政権の終了直後のルーマニアを訪れた国際アセスメント派遣団。
ハロルド・ウィンストン・パーマーも
そのメンバーの一人としてルーマニアを訪れた。
そこで次々と見せられるチャウシェスクの暴政の傷跡。
うはっ。
ここに描かれた悲惨なまでの惨状は、事実なんでしょうか?
その恐るべきHIV患者の子供たちの姿の前には、
この作品の落ちもかすんでしまいます。

「夜更けのエントロピー」
別れた妻が引き取った娘と何ヶ月かぶりで会い、
スキー・リゾートへ一緒にやってきている主人公。
ベトナム帰りの保険調査員の男の記憶をなぞるように、
スキー・リゾートでの父子の姿と男の過去の出来事、
そしてオレンジ・ファイルと名付けられている
自動車事故の事例がコラージュされる。
短編集を読んでいて、割とよくあることなんだけど、
実は表題作が一番その良さがわからなかったりします。
そう、この「夜更けのエントロピー」も、
なんだかどう扱っていいのかわからないんです。
読んでる最中は、
ずっとアーヴィングの「ガープの世界」を思い出してました。

「ケリー・バートンを探して」
高校教師だった男は、車ごと縦坑へ突っ込んで自殺を企てる。
しかし彼は死なず、
かつての教え子ケリー・ダールによって、
不可思議なゲームへと誘い込まれるのだった。
「夜更けのエントロピー」とちょっと似た感触。
幻想的なタッチなんだけど、
ケリー・ダールという少女の姿が鮮やかでなかなか面白かったです。

「最後のクラス写真」
「大苦難」に見舞われ、変容した世界。
死んだ子供たちを外敵から守りながらギース先生の授業はつづく……。
日常、というのが、
こんなにも狂って見えるなんてと思わずに入られません。
え?え?どういうこと?何が起こってるの?と思いながら、
次第にわかり始めてくるギース先生を取り巻く世界の状況。
ひゃ~、そうなのね、とひっくり返りそうになってしまいました。
本書中でこの作品と「黄泉の川が逆流する」 が好きです。

「バンコクに死す」
20年ぶりにバンコクへ訪れた「わたし」は
マーラと呼ばれていた女とその娘を探していた。
それは20年前、
ベトナム戦争でこの地へ来ていた「わたし」とトレーの身の上に
起こった出来事が始まりだったのだ。
ジャングルで精神と命をすり減らす兵士たちの息抜きの時間、
R&Rと呼ばれるバンコクの街での安いドラッグと女遊びの短い日々。
そこにマーラはいたのだった。
インド神話の悪鬼を現代に蘇らせたホラー作品。
これでもかというエグさに、
ついうっかりそのラストの印象が薄れてしまいました。

 2016_10_10




トム・ロビンズ「カウガール・ブルース」

ああ~~。めっちゃめちゃ楽しかったです。
面白かった。
うーん、めちゃくちゃなヘンな話。
どのぐらいヘンな話かと言うと、
トマス・ピンチョンをして
「これは特別な小説だ―魔術を働かせるし、温かくて、おかしくて、そして健全な作品だ。一緒に夕陽に向かって走って行きたくなるような本の一つだ。」
と言わしめてるぐらい。

生まれつきの巨大な親指を持つ
全米最強のヒッチハイカーのヒロインと、
鳥と、彼女達を取り巻く人々の物語。
うーん、あまりあらすじを書くともったいないので
このぐらいしか書けないな。
私の言いたいこと、
ほとんどピンチョンの言葉の引用で足りちゃったし。

遅れてきたビートニク作家、
ヴォネガットやピンチョンらと並ぶカルト作家。
そんな肩書きにも納得の一冊でした。
(2002年10月17日)

 2016_10_09




ジョナサン・キャロル「パニックの手」

これはジョナサン・キャロルの短編集。
11篇の短編が収められています。

なかなか良かったですね。
もしかしたら、私はキャロルの長篇よりも短編のほうが好きかも。
とにかく読みやすかったです。

特に好きな作品は、
10頁たらずの短いものなんですが「秋物コレクション」、
それと表題作の「パニックの手」かな。
「秋物コレクション」は末期癌におかされて、
余命がもうあまりないと知った男の物語。
「パニックの手」は、
妖艶で饒舌な女と吃音癖のある娘という母子と
2等客車で乗り合わせた男の物語です。

「おやおや町」「友の最良の人間」なども悪くなかったけど、
どうせならば、これらは長篇仕立てで読みたかったような
そんな気もします。
(2003年3月2日)

 2016_10_08




ジョナサン・キャロル「犬博物館の外で」

ハリー・ラドクリフは天才建築家で、
いわゆる天才肌の人間というか、まあ一口に言うとやな男。
それを自分で自覚しているだけに手におえないというタイプの男です。
無作法、無神経、
二人の女ファニーとクレアとそれぞれと付き合って
それを隠そうともしない。
ついでに言うと、つい最近まで精神を病んで、
ようやく社会復帰しはじめたところ。
そんなハリーの元に、
中東のサルー共和国のスルタンから建築の依頼がやってきます。
それは「犬博物館」を作って欲しいというものでした。

物語はハリーの一人称で語られ、
過去へ現在へと自在に行きつ戻りつして進行していきます。
そして「犬博物館」に関する現在のストーリーの芯になるのが、
精神を病んでいたとき彼の師となって助けてくれた老シャーマン、ヴェナスクと、
ヴェナスクのペットのブルテリア、ビッグ・トップなのです。
と言っても、「犬博物館」の話が出たころは、
すでにヴェナスクは亡くなっていて、
ビッグ・トップはハリーのペットになっていたんですけど。

うん、かなり警戒して(何を?)
ゆっくり読んで行ったのが良かったんでしょうか。
面白かったです。
狂人、魔法、死者、生者の入り乱れたファンタジーという感じでした。
主人公ハリーの
幼児性あふれる天才キャラクターゆえの楽天的な苦悩と疑惑も
すんなり楽しむことが出来ました。
(2002年12月19日)

 2016_10_07




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Sima

Author:Sima
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